死にたがり(愛されたがり)の悪役令息

たまも。

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学園入学編

70‐始まり

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今日はまだ学園生活の始まりという事で、昨日はパーティだったということもあって、昼からの初授業だった。


クラスはアーノルドとアレンがI組。
ラルクがII組。僕とノールがIII組。

特にI組~III組に能力などの違いはなく、クラスの分け方は平等になるようにやっている感がある。


このままアーノルドと話すのは気まずいので、ちょうど良かった。アレン…ルークも喜んでいるだろうな。

アニメも実際アーノルドとアレンは同じクラスだった。


問題は僕がどうやってこの世界で死ぬかだ。
自分で死ぬ事が出来ない以上、やっぱり断罪されるのが1番だと思うのだが、ルークを虐める…という想像がつかない。

何せ本物の悪役だ。僕なんか似非だし。


だが、そんな心配も杞憂に終わる出来事が起こる。




「~~~!~~~~!!」


授業も終わりクラスメイトとノールとも挨拶を終えて、外の庭を横切る廊下を歩いている時だ。何か人が大声で話しているのが聞こえる。


なんだろう…揉め事かな。


「お前、調子に乗るなよ!」


庭が見えてくると、芝生の上にある1本の木に貴族出であろう生徒3人が1人の見覚えのある生徒の胸ぐらを掴んで詰めていた。


アレンだ。


「シュバルツ様にベタベタとくっつきやがって。気持ちわりぃんだよ」


「シュバルツ様には婚約者がいるんだよ」


「平民のお前なんかが触っていいお方じゃないんだ!」


うわぁ…なんかアニメでもあった気がする。こんなシーン。

真ん中に立っているのはルークだったけど、こうやって主人公に罵詈雑言浴びせるシーンはあった。

実際見ると気分がいいものでは無い。…例え中身がルークだったとしても。


でも、僕なんか出ていってもな…アレンは何考えてるか分からないし…僕の顔見たくもないだろうし…どうしよう。


トンッ


「…えっ?」


ウダウダ廊下で悩んでいると、背中を何かに押され庭の芝生へと転ぶように入ってしまう。

ドサッ


「っ…!」


えっ…今誰に押された…?


後ろを確認しても人は誰もいない。


「フォンルージュ様!?」


…最悪だ。どうやら転んだ音を聞いて3人に気づかれてしまった。

足元の汚れを払い、ゆっくり立ち上がる。


「大丈夫ですか?!フォンルージュ様」


「服が汚れてしまって…たいへんだわ…」


胸ぐらを掴んでいない2人が僕の方へと駆け寄ってくる。


「…3人ともどうしたの?こんな所で」


2人の心配を無視してどういう状況なのか聞いてみる。もはやこの状況から逃げられなくなった今、突っ込んで行くしかない。


「僕たちはI組何ですけど、この平民がフォンルージュ様という婚約者がいるシュバルツ様にあまりにもベタベタとしているもんだから…身の程をわきまえるよう教えてやっているのです」


わあ、ベッタベタ。アレンの行動もベッタベタ。いや、パーティの時から察していたけど、やっぱりアーノルドが恋しいんだね。仕方ないよ、それは。

僕の方が邪魔者だし。


「いいよ、俺が直々に手を下すから。君たちは戻って」


「え、いやでも!僕たちも…!」


「いや、大丈夫。教えてくれてありがとう。だから、彼を離してあげて」


「………」


渋々アレンから手を離す。苦しかったのだろうか、ケホケホと咳き込みながら、涙を流している。


貴族たちは不服そうな顔をしてその場を去って行った。僕に対しても不満そうな顔をしていた。まあ、そうだろうね。という名目でのだから。


「…大丈夫?アレ……」


3人が去ったのを確認してアレンに話しかけようとすると、アレンとは思えない歪んだ笑顔を浮かべていた。

トイレで僕が詰められた時と同じ、悪役の顔だ。


「ルーク?」


背後からアーノルドの声がする。

僕は何もしていないのに、何故か冷や汗が出てくる。

木の下で倒れ込んで涙を流しているアレン。目の前には僕。ここにいる人物は2人しかいない。


これって…まるで僕がやったみたいじゃないか。


そう気づいた時にはアレンは立ち上がり、アーノルドの元へと走って、アーノルドの胸元にすがりついた。


「ひっく、ぅえ…ん。ふっ…」


「…何があったの?」


アーノルドがアレンを見てから僕を見る。


アレンは何も喋らない。ただひたすら泣いている。否、嘘泣きをしている。

その証拠に口角が上がっている。


僕はやってないなんて、この状況で言ったところで信じる人なんていない。

アレンは絶対に僕がやったと言うんだろう。


何故かアーノルドに嫌われると思ってしまって、焦ってくる。

どうしようどうしようどうしよう。


「ルーク…?」


ハッとしてアーノルドを見る。


…いや、いいんだこれで。2人ともお似合いじゃないか。どうせ嫌われる予定だったんだから。いいんだこれで。

これが正しい形なんだ。



僕はその場から逃げるように走り出す。
後ろでアーノルドが何か言っていたが、関係ない。そのまま自身の寮まで走り、鍵をかけ引き篭った。


どうやら僕が心配しなくてもアレンは僕を貶めるつもりらしい。

良かったよ。僕はちゃんと異物だったんだね。僕から嫌われるようにしなくても、アレンが何かやってくれそうだ。



アーノルド…僕の事嫌いになったかな。


…早く、断罪されたいな。
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