1 / 39
序章
灰の山の麓 鍛冶屋キュロプス
しおりを挟む
ツルギとマホウの世界。
そういうのが最も想像しやすいと思う。
ここは帝国と王国の国境に近い場所。
この辺りは様々な魔物の跋扈する『魔の森』と、その魔物を生み出す要因の一つでもある『魔素』を大量に吐き出す『灰の山』のそびえ立つ辺鄙な場所である。
帝国側には上ることも下ることも、人力では難しい『崖』という天然の城壁に囲まれ、その間にある『渓谷』が唯一帝国領へと進める道といえるだろう。
その道も、帝国と王国側の国境として、それぞれ城壁のような壁と鉄の扉で固められ、通行証を持つ者だけが、通ることができるようになっていた。
両国とも、それほどいがみ合っているわけではない。
王国はつい数年前まで、突如魔物が大量発生して沸いた王国領にて、魔物を引き連れて攻めてきた『魔王』を倒したばかりだ。
その時は帝国側も、ほかの国も協力して、王国と共に戦った。
ただ、それはそれ、これはこれ、互いに線引きはしっかりしいきましょうということである。
そんな帝国と王国の国境に近い『灰の山』の麓寄り、そして『魔の森」の囲まれた一角に開けた所があり、更には人工物がる。
家屋のようだ。
家屋は一帯を、道といえる所以外は丸太を積み重ねた、塀のような囲いで守られていた。
畑もその囲いの中にあり、少し異質な雰囲気のある柵は、害獣や不意の来客に対してのけん制というところか。
家屋は囲いの一帯の端に長屋のような作りで二階建てで建てられており、1階の中央の扉の横には表札ではなく、平板の看板のようなものが立て掛けられていた。
「鍛冶屋 キュロプス」
と。
その中には人の気配があり、中央のドアから入ったあたりに一人、そしてその一人を囲むカウンターのような机を挟んで一人の計二人の気配。
客と店主であろうか・・?
扉のほうの人は背の高い、すらりとした人影である。
銀色の長い髪、そして赤黒い、見慣れない肌がより一層、
不可思議な印象を与えなくもない。
その印象をより強調するのが、額のあたりから生えている角。
まっすぐと前方に伸びるように伸び、そして少し上にそりあがっている。
長さにして数センチ程か。
羊などの動物の角と同じような表面で、皮膚が硬化しているのだろうか?
きれいに磨き、手入れもされておるようで、好奇心の強い人は触りたくなるような感じだ。
扉側から角の生えた人を、机を挟んで話している方は、見た目明らかに人である。
背こそ扉側の、角のある人影と同じくらいだが、肩幅も筋肉の盛り上がりで良く鍛えらえており、がっしりしており、一つ一つの動きに無駄がない。
少し茶色掛かった短髪、無精ひげも所々みられ、顔や、衣服から覗く腕やあちこちに、薄っすらと切り傷のようなものが見られた。
壮年のいかついおやじそのものである。
「大変、助かった。よもや、このような近場で、装備の手入れが、でき、るとは思って、いなかった。」
角のある人は、微妙な区切りと口調でそう言った。
「たしかに、こんな辺鄙な所に、お客さんの所有する武具を、整備できる所があるとは思わないでしょうね♪」
角の人の喋りには一切気にする様子もなく、体躯の良い男は、よく通る、低い声で、笑顔を浮かべて、そう言った。
「ミカゲ殿、と言ったか、何故こ、のような
所で?鍛冶屋、など?そな、たの腕なら中央の、工房や、貴族の、お抱えでも、十二分に、生きていけそう、なの、だが?」
角の人に「ミカゲ」といわれた男は肩をすくめて、
「他人に縛られるのはもうこりごりなんですよ。それにこの森の動物や山から頂けるものは生活にも、仕事にも使えるものばかりで。それを知るとどうも人の多いところには・・・♪」
角の人は成程と納得した雰囲気でかるく頷く。見た目とは裏腹に、角の人も気性の粗さもなく、穏やかな人柄のようだ。
たわいもない会話にミカゲという男が
答えていく。
ある程度角の人も笑みをうかべた、柔らかい表情で受け答えをしていた。
「また自分、でも、手入れ、が難しくなれば、持ってきます。」
角の人は腰に収めた剣の柄頭を触りながらそういった。
「また、よろしくお願いします。今後とも、ご贔屓にw」
角の人から何枚かの帝国通貨と、宝石のようなものを受け取り、ミカゲは答えた。
「店を出てその中央の石の台に、実践的に確認できる的やら木の杭など置いてるので、確認するならそちらで。」
店の扉を出る角の人にミカゲはそういうと、角の人は軽く会釈して、腰の剣の柄を握りながら、石でできた台の上に立った。
弓を撃つやや長方形の道場のような縦長いところで、端には弓矢の的。その間に、邪魔にならないように、木の杭などが数本、人の形に似せて打ち込まれていた。
角の人は剣を腰から抜くと、中段の構えから、前に歩むように、流れるように木の杭に突きを放つ。まったく無駄のない、流れるような、素早い刺突。
細身の剣の様に、刺突に特化した剣ではなく、薙ぎ払いもできる直刀の両刃の剣。
背中に背負うほど長くなく、かといって小回りが利く程短くもない。自分に合わせた使いやすい長さの、両刃の剣だ。
杭に吸い込まれた切っ先が、抵抗もなく、
「スッ」とぬける。
角の人は刺した剣先の刃先をみる。木の杭もしっかりと乾燥して身がしまっている。普通の剣先だとこうも刺さり、また抜けるものでもない。
先刻受け取る際軽く試してみたが、仕上がりも申し分なく、握り、振り、共にしっくりくる感覚だ。
「スバラシイ」
ミカゲと話した言葉とは違う言葉で、角の人は呟く。
店の扉のその横の部屋の勝手口開き、そこからミカゲが出てきて、長屋の横の倉庫のようなところに入っていく。
小さい台車にきれいに並べられた木炭や、それが落ちないように積み重ねられた、平たい板状の、溶岩が固まった様なものを載せて来た。
それを勝手口の部屋に入っていき、何往復かする。
その後、ミカゲは長屋の家の中から、木のコップに何か入れて角の人に持っていく。
「良かったら。」
角の人は剣を鞘に納め、軽く礼をしてうけとる。コップの中には水が入っている。指先には冷えた感触がある。
匂いは柑橘系の香り。
少し口をつけると、冷たい水と、その後から爽やかな感覚が、口と喉を通り過ぎていった。
角の人は少しびっくりしてコップの中身を見た。
見た目水だ。
でも飲むと水の喉越しと、柑橘類の清涼感が襲ってくる。
「この山でとれる柑物の果汁、と清流の水を冷やしたものを合わせたものですよ。」
ミカゲがそう言うと、角の人は一気に飲み干し、もう一杯ミカゲに頼み、
「この味が、ここ、から離れ、られな、い理由の、ひとつな、のだな」
角の人はそうつぶやき、次はゆっくり味わいながら飲んでいると、
「お客さん、軸足か、利き腕の健か骨を、痛めていないですか?」
ミカゲのぽつりと言った言葉に、角の人は少し驚いた様子でミカゲを見た。
「なぜ、ソウオモウ?」
帝国訛りと、そうでない言葉を話してしまい、角の人は自分がかなり焦っていることを、ミカゲにさらす形となってしまった。
「お客さん言葉はおきになさらず。ここは王国の辺境地。帝国から北方や、先住民の種族、様々な人が訪れます。もちろん、魔族の国の言葉でも、」
ミカゲはそこで区切り、
「ジブンハ、ハナセマスカラ」
と角の人の言葉でそう言った。
空気が、ぴんと張りつめた。
二人の間にはその張り詰めた空気の塊が、やがて二人を包み、それは緊張の糸となり、ミカゲを凝視する角の人の視線に、殺気を込める形となった。
柵の向こうの木陰から、その殺気を察知した黒い鳥が数羽飛んでいく。
「お客様、そんな怖い顔なさらず、キレイな顔が、台無しですよw」
ミカゲは笑みを浮かべて角の人を見る。
「不躾ですいません。お客様の装備とその剣を診て居る時に、その
言った辺りの損傷が激しかったので。
先ほど話していた時も、普通に動かせていたご様子なので、気にはしなかったんですが・・・。
自分が思うに、魔法の回復術で直したものの、完治はしていない感じの「ブレ」があったものでして」
ミカゲはそういうと、角の人の上腕を軽く指さして言った。
角の人は気取られぬように息を吐く。
併せて言葉にしてきた。
「確かに、私は数週間前、蛮族の討伐で抜けにくい矢を受け、右手を損傷しました。軸足も、同じ戦場にいた弟をかばい・・・。回復魔法の使える術師に治療をしてもらい、回復はしていたと思っていたのですが、。
私以外、誰も気づかぬその「ブレ」をあなたが気付くとは・・・。」
ミカゲが自国の言葉でもと言ったので、気にせずその言葉で話す。角の人も、自分の体の回復具合を、気にはなっていたようである。
戦場ではそういった僅かなブレでも、扱う武器によっては、大きなミス---死に繋《つな》がる。
回復魔法も様々な国々、世界で唄われるほど万能ではなく、術の施行で表向きは治っていても、完全に回復するほどの術の行使となれば、術の精度、練度、技術、魔力や、場合によっては、儀式などを行う等の条件も関係してくる。
神の使いといわれる神聖魔法の使い手といえど、人の命を呼び戻すのも、杖を振りかざし、エイッと言うわけにはいかないのだ。
逆に人の命は、何の躊躇もなく、簡単に無くなってしまうモノではあるのだが。
角の人は朗らかに返すミカゲに愛想しながら考えていた。
しかし、だ。装備の整備を頼んだものの、その損傷個所や具合でそれでもその動きを「ブレ」ととらえ話してくる、このミカゲという鍛冶屋の店主。
信のおける武人から聞いて来たものの、高位の術のかかった魔物除けと、人除けの処理済みの柵。
作り直すしかないと思った装備も、以前の状態で、耐久度も同じほどに仕上げる技術。
一級の鍛冶師ならばと思ったのだが、それだけではないような気がする。
その時、この鍛冶屋を教えてくれた人の言葉をふと思い出す。
「ミカゲ殿」
「はい、なんでしょう?w」
「一度、ミカゲ殿と手合わせ願えないだろうか?」
そういうのが最も想像しやすいと思う。
ここは帝国と王国の国境に近い場所。
この辺りは様々な魔物の跋扈する『魔の森』と、その魔物を生み出す要因の一つでもある『魔素』を大量に吐き出す『灰の山』のそびえ立つ辺鄙な場所である。
帝国側には上ることも下ることも、人力では難しい『崖』という天然の城壁に囲まれ、その間にある『渓谷』が唯一帝国領へと進める道といえるだろう。
その道も、帝国と王国側の国境として、それぞれ城壁のような壁と鉄の扉で固められ、通行証を持つ者だけが、通ることができるようになっていた。
両国とも、それほどいがみ合っているわけではない。
王国はつい数年前まで、突如魔物が大量発生して沸いた王国領にて、魔物を引き連れて攻めてきた『魔王』を倒したばかりだ。
その時は帝国側も、ほかの国も協力して、王国と共に戦った。
ただ、それはそれ、これはこれ、互いに線引きはしっかりしいきましょうということである。
そんな帝国と王国の国境に近い『灰の山』の麓寄り、そして『魔の森」の囲まれた一角に開けた所があり、更には人工物がる。
家屋のようだ。
家屋は一帯を、道といえる所以外は丸太を積み重ねた、塀のような囲いで守られていた。
畑もその囲いの中にあり、少し異質な雰囲気のある柵は、害獣や不意の来客に対してのけん制というところか。
家屋は囲いの一帯の端に長屋のような作りで二階建てで建てられており、1階の中央の扉の横には表札ではなく、平板の看板のようなものが立て掛けられていた。
「鍛冶屋 キュロプス」
と。
その中には人の気配があり、中央のドアから入ったあたりに一人、そしてその一人を囲むカウンターのような机を挟んで一人の計二人の気配。
客と店主であろうか・・?
扉のほうの人は背の高い、すらりとした人影である。
銀色の長い髪、そして赤黒い、見慣れない肌がより一層、
不可思議な印象を与えなくもない。
その印象をより強調するのが、額のあたりから生えている角。
まっすぐと前方に伸びるように伸び、そして少し上にそりあがっている。
長さにして数センチ程か。
羊などの動物の角と同じような表面で、皮膚が硬化しているのだろうか?
きれいに磨き、手入れもされておるようで、好奇心の強い人は触りたくなるような感じだ。
扉側から角の生えた人を、机を挟んで話している方は、見た目明らかに人である。
背こそ扉側の、角のある人影と同じくらいだが、肩幅も筋肉の盛り上がりで良く鍛えらえており、がっしりしており、一つ一つの動きに無駄がない。
少し茶色掛かった短髪、無精ひげも所々みられ、顔や、衣服から覗く腕やあちこちに、薄っすらと切り傷のようなものが見られた。
壮年のいかついおやじそのものである。
「大変、助かった。よもや、このような近場で、装備の手入れが、でき、るとは思って、いなかった。」
角のある人は、微妙な区切りと口調でそう言った。
「たしかに、こんな辺鄙な所に、お客さんの所有する武具を、整備できる所があるとは思わないでしょうね♪」
角の人の喋りには一切気にする様子もなく、体躯の良い男は、よく通る、低い声で、笑顔を浮かべて、そう言った。
「ミカゲ殿、と言ったか、何故こ、のような
所で?鍛冶屋、など?そな、たの腕なら中央の、工房や、貴族の、お抱えでも、十二分に、生きていけそう、なの、だが?」
角の人に「ミカゲ」といわれた男は肩をすくめて、
「他人に縛られるのはもうこりごりなんですよ。それにこの森の動物や山から頂けるものは生活にも、仕事にも使えるものばかりで。それを知るとどうも人の多いところには・・・♪」
角の人は成程と納得した雰囲気でかるく頷く。見た目とは裏腹に、角の人も気性の粗さもなく、穏やかな人柄のようだ。
たわいもない会話にミカゲという男が
答えていく。
ある程度角の人も笑みをうかべた、柔らかい表情で受け答えをしていた。
「また自分、でも、手入れ、が難しくなれば、持ってきます。」
角の人は腰に収めた剣の柄頭を触りながらそういった。
「また、よろしくお願いします。今後とも、ご贔屓にw」
角の人から何枚かの帝国通貨と、宝石のようなものを受け取り、ミカゲは答えた。
「店を出てその中央の石の台に、実践的に確認できる的やら木の杭など置いてるので、確認するならそちらで。」
店の扉を出る角の人にミカゲはそういうと、角の人は軽く会釈して、腰の剣の柄を握りながら、石でできた台の上に立った。
弓を撃つやや長方形の道場のような縦長いところで、端には弓矢の的。その間に、邪魔にならないように、木の杭などが数本、人の形に似せて打ち込まれていた。
角の人は剣を腰から抜くと、中段の構えから、前に歩むように、流れるように木の杭に突きを放つ。まったく無駄のない、流れるような、素早い刺突。
細身の剣の様に、刺突に特化した剣ではなく、薙ぎ払いもできる直刀の両刃の剣。
背中に背負うほど長くなく、かといって小回りが利く程短くもない。自分に合わせた使いやすい長さの、両刃の剣だ。
杭に吸い込まれた切っ先が、抵抗もなく、
「スッ」とぬける。
角の人は刺した剣先の刃先をみる。木の杭もしっかりと乾燥して身がしまっている。普通の剣先だとこうも刺さり、また抜けるものでもない。
先刻受け取る際軽く試してみたが、仕上がりも申し分なく、握り、振り、共にしっくりくる感覚だ。
「スバラシイ」
ミカゲと話した言葉とは違う言葉で、角の人は呟く。
店の扉のその横の部屋の勝手口開き、そこからミカゲが出てきて、長屋の横の倉庫のようなところに入っていく。
小さい台車にきれいに並べられた木炭や、それが落ちないように積み重ねられた、平たい板状の、溶岩が固まった様なものを載せて来た。
それを勝手口の部屋に入っていき、何往復かする。
その後、ミカゲは長屋の家の中から、木のコップに何か入れて角の人に持っていく。
「良かったら。」
角の人は剣を鞘に納め、軽く礼をしてうけとる。コップの中には水が入っている。指先には冷えた感触がある。
匂いは柑橘系の香り。
少し口をつけると、冷たい水と、その後から爽やかな感覚が、口と喉を通り過ぎていった。
角の人は少しびっくりしてコップの中身を見た。
見た目水だ。
でも飲むと水の喉越しと、柑橘類の清涼感が襲ってくる。
「この山でとれる柑物の果汁、と清流の水を冷やしたものを合わせたものですよ。」
ミカゲがそう言うと、角の人は一気に飲み干し、もう一杯ミカゲに頼み、
「この味が、ここ、から離れ、られな、い理由の、ひとつな、のだな」
角の人はそうつぶやき、次はゆっくり味わいながら飲んでいると、
「お客さん、軸足か、利き腕の健か骨を、痛めていないですか?」
ミカゲのぽつりと言った言葉に、角の人は少し驚いた様子でミカゲを見た。
「なぜ、ソウオモウ?」
帝国訛りと、そうでない言葉を話してしまい、角の人は自分がかなり焦っていることを、ミカゲにさらす形となってしまった。
「お客さん言葉はおきになさらず。ここは王国の辺境地。帝国から北方や、先住民の種族、様々な人が訪れます。もちろん、魔族の国の言葉でも、」
ミカゲはそこで区切り、
「ジブンハ、ハナセマスカラ」
と角の人の言葉でそう言った。
空気が、ぴんと張りつめた。
二人の間にはその張り詰めた空気の塊が、やがて二人を包み、それは緊張の糸となり、ミカゲを凝視する角の人の視線に、殺気を込める形となった。
柵の向こうの木陰から、その殺気を察知した黒い鳥が数羽飛んでいく。
「お客様、そんな怖い顔なさらず、キレイな顔が、台無しですよw」
ミカゲは笑みを浮かべて角の人を見る。
「不躾ですいません。お客様の装備とその剣を診て居る時に、その
言った辺りの損傷が激しかったので。
先ほど話していた時も、普通に動かせていたご様子なので、気にはしなかったんですが・・・。
自分が思うに、魔法の回復術で直したものの、完治はしていない感じの「ブレ」があったものでして」
ミカゲはそういうと、角の人の上腕を軽く指さして言った。
角の人は気取られぬように息を吐く。
併せて言葉にしてきた。
「確かに、私は数週間前、蛮族の討伐で抜けにくい矢を受け、右手を損傷しました。軸足も、同じ戦場にいた弟をかばい・・・。回復魔法の使える術師に治療をしてもらい、回復はしていたと思っていたのですが、。
私以外、誰も気づかぬその「ブレ」をあなたが気付くとは・・・。」
ミカゲが自国の言葉でもと言ったので、気にせずその言葉で話す。角の人も、自分の体の回復具合を、気にはなっていたようである。
戦場ではそういった僅かなブレでも、扱う武器によっては、大きなミス---死に繋《つな》がる。
回復魔法も様々な国々、世界で唄われるほど万能ではなく、術の施行で表向きは治っていても、完全に回復するほどの術の行使となれば、術の精度、練度、技術、魔力や、場合によっては、儀式などを行う等の条件も関係してくる。
神の使いといわれる神聖魔法の使い手といえど、人の命を呼び戻すのも、杖を振りかざし、エイッと言うわけにはいかないのだ。
逆に人の命は、何の躊躇もなく、簡単に無くなってしまうモノではあるのだが。
角の人は朗らかに返すミカゲに愛想しながら考えていた。
しかし、だ。装備の整備を頼んだものの、その損傷個所や具合でそれでもその動きを「ブレ」ととらえ話してくる、このミカゲという鍛冶屋の店主。
信のおける武人から聞いて来たものの、高位の術のかかった魔物除けと、人除けの処理済みの柵。
作り直すしかないと思った装備も、以前の状態で、耐久度も同じほどに仕上げる技術。
一級の鍛冶師ならばと思ったのだが、それだけではないような気がする。
その時、この鍛冶屋を教えてくれた人の言葉をふと思い出す。
「ミカゲ殿」
「はい、なんでしょう?w」
「一度、ミカゲ殿と手合わせ願えないだろうか?」
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる