スミス・ロード -辺境の鍛冶屋ー

シンゴぱぱ

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第二章 湖の村日常編

15.灰山の王

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 朝からミカゲは準備を始めていた。
 それもかなりしっかりと。
 以前ティタ達の襲撃の時と同じくらいの戦支度だ。

「どこか行かれるのですか?」

「ルマリア、灰の山の主と一戦してくるんだが、くるか?」

「え?いいんですか?」

 装備を整えながらミカゲは言う。

「ワシらも見に行くぞ」

 ステイシアは余所行きの格好だ。足元には使い魔の灰色の狼が子犬サイズでうろうろしている。

「年に数度、この山の主とタイマンするんだが、まぁ祭りのようなもんだ」

 ミカゲは背負い袋に酒やつまみを入れた袋をぎゅう詰めしてせおう。

 ルマリアもとりあえず出かける用意を始めた。

 ミカゲの店から数十分上っていくと、灰の山の中腹より少し上、八合あたりだろうか、開けた所に出てくる。

 シデレラに乗ったミカゲはそこで降り、シデレラにつけた背負い袋や酒や食べ物を運ぶ。

 中腹の広い空き地の真ん中に、背の高い黒い人の様な物が、でかい玉座に座っている。

 巨大な翼も奇怪な大きな角もある、いわば魔人と言われる種族だ。

 巨大な両刃の剣を座した前に突き刺し、それを杖代わりに手を置いている。

「来たか、ミカゲ、まちわびたぞ」

「またせた、といっても合図は今日の朝きたがな」

「ふむ、まぁはやる気持ちがそう言わせたのだ、ゆるせ」

 魔人の後ろに立っている長い髪の従者の何人かが、ミカゲの持ってきた袋を受け取っている。

「他は後の者が持ってくる」

「そうか、ではその者達が来たら始めるか」

「ああ、その前に一杯するか?」

「無論」

 魔人はどこからかグラスを出す。禍々しいデザインのワイングラスのようだ。

 ミカゲも一升瓶を出して腰の子袋から出した湯飲み茶碗になみなみと注ぎ始める。

「ワシももらうぞ」

 いつの間にかステイシアも胡坐を組んで二人の間に座している。

 魔人も剣を背中に胡坐をかくと、ミカゲとステイシアの元に座る。

 グイっとのむ。

「くぅ、相変わらずうまいぞこれは。従者に言われるが半月でのんでしまうぞ」

 湖の村でとれる酒用の米でつくる清酒である。

 発酵度数も高く、熟成もしっかりしてるので度数も高い。

「ワシも希少だからここでしかのめんわえ」

 ステイシアの白い肌が珍しく赤みを帯びて上気している。

 かなりの度数なのだろう。

「あとは終わってからやりましょう。もう二本仕込んできたので」

「うむ、かまわん、わしもこの前敗北を味わった時より、お主倒すために技を磨いたからの、うずくわい」

 魔人が抑えきれずオーラをまき散らす。

 ハナからやる気の魔人、しかしミカゲは飄々としている。

 灰の山の宴が、始まろうとしている。

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