やがて光りの王となり

雉村由壱

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【 第一章 】未熟な王子と暫定騎士

護身術①

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 ウィルバートが帰って三日目。
 未だウィルバートとゆっくり話せる機会を持てずにいたマティアスは我慢できず自ら兵舎へと向かった。

 時刻は昼過ぎ。
 広場に近付くと何やら兵士たちが集まり騒いでいる。時折、カンッ! カンッ! と何かが打ち付けられる音がし、マティアスはそれが木剣の音であるとすぐに分かった。

 兵士たちで出来た人垣に「私にも見せてくれ」と声を掛けると、突然の王子の登場に兵士たちは驚き道を開けた。輪の中心では、ウィルバートとアーロンが手合わせをしていた。

 二人とも防具を着けず、木剣で打ち合っている。華麗な剣さばきで互いに相手に切り込み、汗が舞う。一触即発の接戦に見物している兵士たちからは時折どよめきが起こっていた。

 どちらも実力はほぼ互角だった。
 それもそのはず。ウィルバートは任務に出る五年前、兵士たちで行う武闘大会で優勝のアーロンに継ぐ準優勝となっていた。

「マティアス様……」

 ウィルバートがマティアスに気付き、ウィルバートの気が逸れたことを察しアーロンも手を止め振り返る。

「これはこれはマティアス殿下。この様なむさ苦しい所へ如何されましたか」

 アーロンがニコニコしながら聞いてくる。

「随分楽しそうじゃないか。私も混ぜろ」 

 マティアスは輪の中心へ出た。
 見ている兵士たちからは歓声が上がる。

「では……ブラックストンが手合わせを」

 アーロンがウィルバートにそう指示した。

「ウィル、私はアーロンに日々指南されているからな。この四年でかなり腕をあげたぞ。油断するなよ」

 マティアスは地面に転がされた木剣の中から自分に合いそうなを選びながら言った。

「隊長から……ですか」

 ウィルバートはどことなく眉を寄せた。

 四年前まではウィルバートと剣の鍛錬をしていた。マティアスは当時身長も低かったので今思えばそれはお遊戯レベルだった。しかし、身体が出来てきた最近はアーロンにかなり激しい稽古をつけられている。

 イーヴァリにはまるで成長してないかのように言われたが、マティアスはマティアスなりに努力しているつもりだった。それはウィルバートを驚かせたい。成長したと褒められたい。と言う気持ちからだったが。

「マティアス様、防具、着けてください」

 ウィルバートが言ってきた。

「えー」

 マティアスはしかめっ面でウィルバートを見た。
 広場には木剣と一緒に、練習用の兜や胸当てなどが転がっている。

 先ほどウィルバートとアーロンが防具無しで戦っていた様に、自分も防具無しでウィルバートと手合わせしたかった。何より自分だけ防具を着けるのが格好悪く感じる。

「成人の儀を前に顔に痣でもできたら一大事です。防具着けないなら相手はしません」

 ウィルバートは昔から頑固だ。仕方なくマティアスは兜を手に取った。

「……なんか、汗臭い」

 兵士たち共有で使用しているらしいその練習用兜は鉄の匂いに交じり汗臭さを感じる。

「殿下の兜をお持ちいたしましょうか?」

 近くにいた兵士が気を利かせて聞いてきた。

「いや、いいよ。これで」

 マティアスの防具一式を取りに行かせたら無駄に時間を喰ってしまう。マティアスは仕方なく防具一式を身に着けた。

(うーん、やっぱり臭いなぁ)

 他人の汗の匂いと言うのは実に不愉快だ。そう思いつつも気を引き締めマティアスはウィルバートに向き合って木剣を構えた。

「ではウィル、行くぞ!」

 マティアスはそう宣言すると地面を力強く蹴った。
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