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【 第二章 】異国の仕立て屋と黒衣の王
思わぬ賓客④
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「でかした! カイ!」
国王陛下御一行様を乗せた馬車が見えなくなるまで見送った後、ヨエルがカイに抱きついてきた。
「ヨエル、やめろっ」
カイは本気で嫌がった。なぜならせっかく身に残ったマティアスの余韻がかき消されてしまいそうだからだ。
「これはもう、国王陛下の衣装をうちに任せて貰えると思って良いだろう!」
カイに引き剥がされたヨエルだが興奮状態が続いている。
ついさっき、ニーナからの知らせで工房に舞い戻ったヨエルは、無事マティアスと対面を果たした。その中でマティアスは謁見での件を詫び、衣装作りを検討したいとヨエルに伝えた。
三人で家の中に入るとカイはヘロヘロとソファに座った。マティアスが座っていた場所だ。まだ温かさが残っている気がする。
「はぁ~、凄い日だったわ……。ちょっとお茶いれるわね」
ニーナはそう言って台所へ向かった。
「カイ、お前かなり陛下に気に入られたぽいな。良くやったよ!」
四日前は散々カイを叱ったヨエルだが今はニコニコと上機嫌だ。そんなヨエルにカイはソファに仰向けに伸びたまま言った。
「キス、してしまった……」
言うか言わまいか迷ったが、相手が国王でこのテーラーの上客になりそうな人物なだけに、カイは自分だけで抱えられる事では無いと判断した。
「ん?」
ヨエルが良く聴こえなかったのか聞き返してくる。
「だから……倉庫案内してて陛下と二人きりになって、なんか……そう言う雰囲気になって。しちゃったんだよね……キス」
「はあ?!!」
ヨエルの声が狭い工房に響く。
「ちょ、はっ、ど、どういうことだよっ!」
ヨエルはドカドカとカイに詰め寄り隣に座った。
「どういう事って……今話したまんまだ」
「お、お前、無理やりじゃないよなっ?!」
「したのは俺からだけど、嫌がっては無かった、と思う……」
「お、お前……」
ヨエルはあまりの展開に頭が追いつかない様子で驚いた顔のまま固まり、口をパクパクさせている。今日ニーナもそんな顔をしていたなとカイは思った。
「……なんて危険な事をっ! それで陛下の不興を買ったら不敬罪で処刑だってありえるだろ?! 僕とニーナだってどんなとばっちり食らうか!」
確かにヨエルの言う通りだが、あの時はそんなこと全く考えてなかった。ただただ吸い寄せられるように唇を合わせてしまったのだ。
「『とんだ不敬を』って謝ったら、『不敬かは私が決める』って言われた……」
「そ、それって……つまり寵愛を得たってことか?!」
ヨエルが再び声を張り上げる。
「寵愛って」
カイは鼻で笑ったが、確かにマティアスは国王なのだから『寵愛を賜る』と言う表現は正しいのかもしれない。
「……そうか! 謁見の時のあの動揺っぷりはカイが好みの男だったからってことか。陛下が妃を娶らないのも男色家だからで、今日はカイに会いに来た! そういうことか!」
ヨエルがそう纏めると、途端にマティアスが好色家の駄目王様だと言われているようでカイは腹立たしさを感じた。しかし、それが正しいような気もしてくる。
「このままカイが陛下に気に入られていけば、服一着どころか、王家の衣装全部だって任せてもらえるかも!」
「まあ、陛下はだいぶケチだけどな」
「だけど、『国王御用達』の看板がつけば貴族からの注文も絶対増えるぞ! カイ、分かってるな。なんとしても陛下に気に入られ続けろ!」
興奮気味のヨエルにカイはニヤッと笑った。
「言われなくてもそのつもりだ」
国王陛下御一行様を乗せた馬車が見えなくなるまで見送った後、ヨエルがカイに抱きついてきた。
「ヨエル、やめろっ」
カイは本気で嫌がった。なぜならせっかく身に残ったマティアスの余韻がかき消されてしまいそうだからだ。
「これはもう、国王陛下の衣装をうちに任せて貰えると思って良いだろう!」
カイに引き剥がされたヨエルだが興奮状態が続いている。
ついさっき、ニーナからの知らせで工房に舞い戻ったヨエルは、無事マティアスと対面を果たした。その中でマティアスは謁見での件を詫び、衣装作りを検討したいとヨエルに伝えた。
三人で家の中に入るとカイはヘロヘロとソファに座った。マティアスが座っていた場所だ。まだ温かさが残っている気がする。
「はぁ~、凄い日だったわ……。ちょっとお茶いれるわね」
ニーナはそう言って台所へ向かった。
「カイ、お前かなり陛下に気に入られたぽいな。良くやったよ!」
四日前は散々カイを叱ったヨエルだが今はニコニコと上機嫌だ。そんなヨエルにカイはソファに仰向けに伸びたまま言った。
「キス、してしまった……」
言うか言わまいか迷ったが、相手が国王でこのテーラーの上客になりそうな人物なだけに、カイは自分だけで抱えられる事では無いと判断した。
「ん?」
ヨエルが良く聴こえなかったのか聞き返してくる。
「だから……倉庫案内してて陛下と二人きりになって、なんか……そう言う雰囲気になって。しちゃったんだよね……キス」
「はあ?!!」
ヨエルの声が狭い工房に響く。
「ちょ、はっ、ど、どういうことだよっ!」
ヨエルはドカドカとカイに詰め寄り隣に座った。
「どういう事って……今話したまんまだ」
「お、お前、無理やりじゃないよなっ?!」
「したのは俺からだけど、嫌がっては無かった、と思う……」
「お、お前……」
ヨエルはあまりの展開に頭が追いつかない様子で驚いた顔のまま固まり、口をパクパクさせている。今日ニーナもそんな顔をしていたなとカイは思った。
「……なんて危険な事をっ! それで陛下の不興を買ったら不敬罪で処刑だってありえるだろ?! 僕とニーナだってどんなとばっちり食らうか!」
確かにヨエルの言う通りだが、あの時はそんなこと全く考えてなかった。ただただ吸い寄せられるように唇を合わせてしまったのだ。
「『とんだ不敬を』って謝ったら、『不敬かは私が決める』って言われた……」
「そ、それって……つまり寵愛を得たってことか?!」
ヨエルが再び声を張り上げる。
「寵愛って」
カイは鼻で笑ったが、確かにマティアスは国王なのだから『寵愛を賜る』と言う表現は正しいのかもしれない。
「……そうか! 謁見の時のあの動揺っぷりはカイが好みの男だったからってことか。陛下が妃を娶らないのも男色家だからで、今日はカイに会いに来た! そういうことか!」
ヨエルがそう纏めると、途端にマティアスが好色家の駄目王様だと言われているようでカイは腹立たしさを感じた。しかし、それが正しいような気もしてくる。
「このままカイが陛下に気に入られていけば、服一着どころか、王家の衣装全部だって任せてもらえるかも!」
「まあ、陛下はだいぶケチだけどな」
「だけど、『国王御用達』の看板がつけば貴族からの注文も絶対増えるぞ! カイ、分かってるな。なんとしても陛下に気に入られ続けろ!」
興奮気味のヨエルにカイはニヤッと笑った。
「言われなくてもそのつもりだ」
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