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人類の見守り役
34話 輪廻転生が発生する理由の一端を知る
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目の前に映っているJR横浜駅の街並みから、横浜シエスタという海に面した商業施設へとズームアップしていった。
横浜シエスタ内の広場を人が行き来している。
天気は晴天である。
ファントムウイルス流行のさなかでも人々は普通に生活していた。というか、もはや為すすべ無いほどに感染が拡大しているので、普通に生活するしか無いというのが正しい。
自分もいつ死ぬか分からないのだから、お金など長く持っていても仕方がない。
そういう意識から、人々は娯楽や食に対してお金を良く使う。世界人口が半減する事態になっても、この商業施設は賑わっていた。
「では、この場所に直接行ってみましょうか」
と、アガパンサは言うと大画面の中に足を踏み入れた。
俺もその後に続き、大画面の中に入り込んだ。
海を見渡せる広場の中、人々の足音、人々の会話する声が聴こえる。
俺たちは違う次元に存在しているので空気感は感じない。
時々、広場を行く人達が俺の体をすり抜ける。
それでも、俺はアースに戻ってきた気分である。
まさかこんな形でアースに戻ってこれるとは。
少し感動した。
アガパンサは、
「それでは、あのお店の中の人にしましょう」
そういうと、賑わっているイタリアンレストランを指をさした。
その瞬間、俺たちはレストランの中にいた。
次に、アガパンサは一人の女性を指さす。
接客役に似つかわしくない、不機嫌そうな顔をした20代ぐらいの若い女性ウエイターがいる。
「この女性の名前は石橋まる子さんです。彼女の現在の課題点は”人に気を使えない”といった点にあります。
石橋さんの場合では、それがゆえに、このお店でウエイターとして働くように導かれたのでしょう」
動き回るその女性を見つつ、アガパンサがすらすらと個人情報を述べていく。
「なんでこの人の事が分かるんだ?」
アガパンサの精神はデータバンクとでも繋がっているのだろうか。
「うふふっ.....周さんも出来ますよ。石橋さんの内側を覗き込むような意識で集中してみてください」
言われた通りにやってみた。
すると、その女性の実体と共に、様々な情報が文字として見えてきた。
まるでRPGゲームの中で分析魔法をかけたようである。
この女性の実体は、黄土色の髪色をした、にこにこした丸顔が特徴の可愛らしい女性である。
アースにいる物的肉体のしかめ面の彼女とは大違いだ。
なになに......浮き上がってきた文字を読んでみよう。
-----------------------------
「実体 ベアトリーチェ」
「アース顕現体 石橋まる子」
130年前にイタリアで女性として産まれたベアトリーチェは、人に嫌われるのを恐れるばかりに周囲に気を使い過ぎ、過度に愛嬌を振りまいてしまう欠点があった。
持ち前の愛嬌が通じない経験を通し、孤独への強さを得るために、今世においては愛嬌の通じない厳しい両親に育てられた。
両親の持つ肉体遺伝子は、些細な事にまで厳しくこだわる性格・職人的気質なものであり、石橋まる子も同様の物を受け継いでいる。そのため、産まれた時点から、石橋まる子は表面的には無愛想な性質を持っていた。
無愛想で人に気を使えない性質も相まって、友人は中々できない。ただ、その孤独な体験を通じて、孤独に対する耐性と力強さを得ることになった。※ただ、完全に得たというわけではない。
次の課題点は「人前で笑顔を見せる」「周囲に気を配る」といった事であり、そうした体験が多くできるよう、ウエイターとしての仕事に就くよう導かれた。
それらの事ができるようになるほどに、ベアトリーチェより前の実体である、420年前に存在していた、ニンファルに属していたアルベスト(男性)としての個性が戻ってくる。
-----------------------------
「見る事ができましたね。アースに誕生する人々はこのように、実体が持つ課題点を克服しやすい環境を選んで生まれていきます」
俺が読み終わった事を察し、アガパンサが言う。
「ああ。俺がアースにいた時には気が付かなかったけど、人間が産まれるにあたって色んな事情があったんだな」
そう思うと、しかめ面の彼女に対して憎めない感じがした。
何とかして導いてあげたい気持ちになる。
「ところで、最後の所にあった”ニンファルに属していたアルベスト(男性)としての個性が戻ってくる”って何のことだ?」
隣で俺と同様に石橋さんを観ているアガパンサに聴いてみた。
「ニンファルとはマルフィより一つ上にある世界です。そこはアースを去った自覚を得た人間、また、精神の進歩に目を向け始めた人間達が住む真相界です。ただ、人間達といっても、アースのみから集まっているわけではありません。他の仮相界からも集まっています。
石橋まる子は、元々、420年前にはニンファルでアルベストという男性として暮らしていたのでしょう」
「そうなのか。精神の進歩をするほどにベアトリーチェとしての過去、アルベストとしての過去を思い出すってことか。それに合わせて、アースを離れた後に落ち着く世界も変わるんだな」
「はい!その通りです」
「しかし、石橋さんも可哀そうだな。いくら実体が、人から嫌われるのを過度に恐れる欠点を持っていたにしろ、愛嬌の通じない厳しい親の元に産まれるなんて.......」
誰だって、そのままの姿で愛してくれる親の元に産まれたいに決まっている。
「周さん、石橋まる子の情報を観ながら、”なぜ、その厳しい親の元に産まれたのか?”という問いを心の内で念じてみてください」
言われた通りにしてみた。
すると.......また文字が現れた。
-----------------------------
ニンファル在住時にアルベストは冒険家として世界各地を巡っていた。
その時に、魔物に襲われていた女性がおり、助ける力がありながらも見殺しにしてしまった事。
それが、まず、ベアトリーチェといった、臆病だが愛嬌のある女性として、アースのイタリアで産まれる原因となりました。
なお、アルベストとして冒険家をしていた時は、男尊女卑の考えが強く、それがゆえにベアトリーチェという女性らしい女性として、女性特有の視点やきめ細かさを学ぶ必要も生まれていました。
現時点でも学びきれているとは言えず、石橋まる子は、過去の自分のような男尊女卑の傾向のある家系に、女性として誕生しています。
女性としての優れた資質が養えた後でなら、ベアトリーチェ、また、アルベストとしての個性が戻ってきても男尊女卑といった偏見は無くなるでしょう。
-----------------------------
なるほど、厳しい親に産まれた事は、2代前の実体による行いが起因してるってことか。
それにしても........また気になる点がある。
「ニンファルには魔物がいるのか?」
「はい。ニンファルは広大な世界です。全土に魔物がいるわけでは無いのですが、場所によっては魔物も生息しているでしょう」
「魔物のいる世界か.......」
少し興味はある。いつかその世界も観てみたいと思った。
まあ、今はムスカリ君を家族に会わせてあげないとな。
そのためにもアースの人間に影響を与える訓練を頑張らなければ。
「色々教えてくれてありがとうな。
よしっ!それじゃあ、石橋さんに影響を与える方法を教えてくれないか?」
「はい!ぜひ、一緒にやってみましょう」
アガパンサは蒼く輝く髪をいじりながら、嬉しそうに言った。
横浜シエスタ内の広場を人が行き来している。
天気は晴天である。
ファントムウイルス流行のさなかでも人々は普通に生活していた。というか、もはや為すすべ無いほどに感染が拡大しているので、普通に生活するしか無いというのが正しい。
自分もいつ死ぬか分からないのだから、お金など長く持っていても仕方がない。
そういう意識から、人々は娯楽や食に対してお金を良く使う。世界人口が半減する事態になっても、この商業施設は賑わっていた。
「では、この場所に直接行ってみましょうか」
と、アガパンサは言うと大画面の中に足を踏み入れた。
俺もその後に続き、大画面の中に入り込んだ。
海を見渡せる広場の中、人々の足音、人々の会話する声が聴こえる。
俺たちは違う次元に存在しているので空気感は感じない。
時々、広場を行く人達が俺の体をすり抜ける。
それでも、俺はアースに戻ってきた気分である。
まさかこんな形でアースに戻ってこれるとは。
少し感動した。
アガパンサは、
「それでは、あのお店の中の人にしましょう」
そういうと、賑わっているイタリアンレストランを指をさした。
その瞬間、俺たちはレストランの中にいた。
次に、アガパンサは一人の女性を指さす。
接客役に似つかわしくない、不機嫌そうな顔をした20代ぐらいの若い女性ウエイターがいる。
「この女性の名前は石橋まる子さんです。彼女の現在の課題点は”人に気を使えない”といった点にあります。
石橋さんの場合では、それがゆえに、このお店でウエイターとして働くように導かれたのでしょう」
動き回るその女性を見つつ、アガパンサがすらすらと個人情報を述べていく。
「なんでこの人の事が分かるんだ?」
アガパンサの精神はデータバンクとでも繋がっているのだろうか。
「うふふっ.....周さんも出来ますよ。石橋さんの内側を覗き込むような意識で集中してみてください」
言われた通りにやってみた。
すると、その女性の実体と共に、様々な情報が文字として見えてきた。
まるでRPGゲームの中で分析魔法をかけたようである。
この女性の実体は、黄土色の髪色をした、にこにこした丸顔が特徴の可愛らしい女性である。
アースにいる物的肉体のしかめ面の彼女とは大違いだ。
なになに......浮き上がってきた文字を読んでみよう。
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「実体 ベアトリーチェ」
「アース顕現体 石橋まる子」
130年前にイタリアで女性として産まれたベアトリーチェは、人に嫌われるのを恐れるばかりに周囲に気を使い過ぎ、過度に愛嬌を振りまいてしまう欠点があった。
持ち前の愛嬌が通じない経験を通し、孤独への強さを得るために、今世においては愛嬌の通じない厳しい両親に育てられた。
両親の持つ肉体遺伝子は、些細な事にまで厳しくこだわる性格・職人的気質なものであり、石橋まる子も同様の物を受け継いでいる。そのため、産まれた時点から、石橋まる子は表面的には無愛想な性質を持っていた。
無愛想で人に気を使えない性質も相まって、友人は中々できない。ただ、その孤独な体験を通じて、孤独に対する耐性と力強さを得ることになった。※ただ、完全に得たというわけではない。
次の課題点は「人前で笑顔を見せる」「周囲に気を配る」といった事であり、そうした体験が多くできるよう、ウエイターとしての仕事に就くよう導かれた。
それらの事ができるようになるほどに、ベアトリーチェより前の実体である、420年前に存在していた、ニンファルに属していたアルベスト(男性)としての個性が戻ってくる。
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「見る事ができましたね。アースに誕生する人々はこのように、実体が持つ課題点を克服しやすい環境を選んで生まれていきます」
俺が読み終わった事を察し、アガパンサが言う。
「ああ。俺がアースにいた時には気が付かなかったけど、人間が産まれるにあたって色んな事情があったんだな」
そう思うと、しかめ面の彼女に対して憎めない感じがした。
何とかして導いてあげたい気持ちになる。
「ところで、最後の所にあった”ニンファルに属していたアルベスト(男性)としての個性が戻ってくる”って何のことだ?」
隣で俺と同様に石橋さんを観ているアガパンサに聴いてみた。
「ニンファルとはマルフィより一つ上にある世界です。そこはアースを去った自覚を得た人間、また、精神の進歩に目を向け始めた人間達が住む真相界です。ただ、人間達といっても、アースのみから集まっているわけではありません。他の仮相界からも集まっています。
石橋まる子は、元々、420年前にはニンファルでアルベストという男性として暮らしていたのでしょう」
「そうなのか。精神の進歩をするほどにベアトリーチェとしての過去、アルベストとしての過去を思い出すってことか。それに合わせて、アースを離れた後に落ち着く世界も変わるんだな」
「はい!その通りです」
「しかし、石橋さんも可哀そうだな。いくら実体が、人から嫌われるのを過度に恐れる欠点を持っていたにしろ、愛嬌の通じない厳しい親の元に産まれるなんて.......」
誰だって、そのままの姿で愛してくれる親の元に産まれたいに決まっている。
「周さん、石橋まる子の情報を観ながら、”なぜ、その厳しい親の元に産まれたのか?”という問いを心の内で念じてみてください」
言われた通りにしてみた。
すると.......また文字が現れた。
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ニンファル在住時にアルベストは冒険家として世界各地を巡っていた。
その時に、魔物に襲われていた女性がおり、助ける力がありながらも見殺しにしてしまった事。
それが、まず、ベアトリーチェといった、臆病だが愛嬌のある女性として、アースのイタリアで産まれる原因となりました。
なお、アルベストとして冒険家をしていた時は、男尊女卑の考えが強く、それがゆえにベアトリーチェという女性らしい女性として、女性特有の視点やきめ細かさを学ぶ必要も生まれていました。
現時点でも学びきれているとは言えず、石橋まる子は、過去の自分のような男尊女卑の傾向のある家系に、女性として誕生しています。
女性としての優れた資質が養えた後でなら、ベアトリーチェ、また、アルベストとしての個性が戻ってきても男尊女卑といった偏見は無くなるでしょう。
-----------------------------
なるほど、厳しい親に産まれた事は、2代前の実体による行いが起因してるってことか。
それにしても........また気になる点がある。
「ニンファルには魔物がいるのか?」
「はい。ニンファルは広大な世界です。全土に魔物がいるわけでは無いのですが、場所によっては魔物も生息しているでしょう」
「魔物のいる世界か.......」
少し興味はある。いつかその世界も観てみたいと思った。
まあ、今はムスカリ君を家族に会わせてあげないとな。
そのためにもアースの人間に影響を与える訓練を頑張らなければ。
「色々教えてくれてありがとうな。
よしっ!それじゃあ、石橋さんに影響を与える方法を教えてくれないか?」
「はい!ぜひ、一緒にやってみましょう」
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