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人類の見守り役
37話 マルファーニとメレディスの衝突
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眠りに落ちている魔人を解析したら、俺の脳裏に次の情報が記された。
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実体 ジョン・マクレガー
ニンファル顕現体 ゴルマキア
ニンファルのグラブダル地域にあるビツラウラ洞窟にて生息している魔物。
体格を活かした剣による強力な攻撃を得意とする。魔法は使用しない。
実体であるジョン・マクレガーは86年前のアメリカ合衆国にて農業用の機械を貸し出す会社を経営していた。経営手腕に優れ、他者よりも速く農業用機械を次々に押さえた事で農業用機械のリースにおいて多くのシェアを握り、物的財産を築いた。
しかし、その経営方法は世界のためになるとは言い難く、ジョンの会社が利益を独占した分だけ困窮したり倒産する会社が相次いだ。また、リース料を払えなくなった農家や企業からは容赦なく農業用機械を返還させた。
ジョンの行為による世界へのひずみは、ジョンの荒廃した人格へと反映された。
他者を蹴落とし利益を上げるほどに傲慢・強欲になり他者を見下すことも多くなり、また、家族関係におけるトラブルも多くなった。
最終的には持病の糖尿病に起因した心筋梗塞により48歳で死没。
その後、パーゲトルにあるガルム地域にて奴隷として炭鉱で働くことになる。
しかし、天使や神達の襲撃によりパーゲトルで死を迎えたことで、ニンファルにてゴルマキアとして転生した。
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この魔人......元人間だってのか!?
一体、何だってそんなことに。
さらに、この世界においては元人間である魔物を狩る事が奨励されているのだろうか。
勇者が魔人と戦っていたことからも、勇者の解析で現れた文字を読んでも、それは間違いないだろう。
魔物が人間を襲撃したりなど、色々な事情はあるかもしれない。
この世界の人達は魔物が元人間であるなんて知らないかもしれない。
胃のあたりがムカムカする。胸糞悪いっていうのはこの事なのか.......
ニンファルの人達に罪は無い。
俺がムカついているのは、前世の素行が悪い場合、魔物に転生する事もありえるという輪廻転生の仕組みに対してだ。
いくらなんでもそれは無いだろう......
吾郎は今、まさに魔物を殺しそうになったんだぞ。
いや、もう、多くの魔物を手にかけてきた事は間違いないだろう。
無自覚に殺人を犯すような仕組みが成り立っている事に俺は苛立ちを禁じ得ない。
《周さん、どうかしましたか?》
アガパンサは心配そうに俺の顔を覗き込む。
正直、この事に対して何も感じないアガパンサに対しても、俺は少し苛立ちを覚えていたが、アガパンサは龍である。しかも、最近まで人間に不信を抱いていたぐらいだ。それらの事を考えれば俺の苛立ちを向けるのはお門違いである。
《なあ、ニンファルでは人間が魔物に転生するなんて事がずっと行われてきてたのか?》
《...............》
アガパンサはばつの悪そうな顔を一瞬したあと、わずか斜め下に顔を向け黙ってしまった。
蒼く輝く美しい髪に遮られ、表情は伺い知る事ができない。
《アガパンサ....?》
《........約80年前に天使、神々などがパーゲトルを襲撃して以降、人間が魔物に転生するようになりました》
そういえば、ゴルマキアとか言う魔物を解析した時に出てきた文字にも書いてあった。
《一体なんだって天使と神々がパーゲトルを襲撃したんだ?》
《それは............》
アガパンサはいかにも言いたく無さそうに、躊躇しながら言葉を絞りだそうとした瞬間、女勇者に動きがあった。
女勇者は洞窟内の移動を始めるようだ。
先に向かうのか、帰るのかは分からないが。
《よし、俺たちもついて行っていいかな》
この女勇者は吾郎の生まれ変わりだ。マルファーニが何をしようとしてるのかは気になる所である。
........魔物に出会ったらできるだけ殺さないように導きたい。それに意味があることなのかは分からないが。
《はい!彼女の後をついていきましょう》
アガパンサの声には安堵の色が浮かんでいた。俺としても、アガパンサが、言うのにそこまで躊躇うことを聴いていいのか迷う所である。
マルファーニは赤や紫に光る水晶の並ぶ道を速足で進んでいく。
まだ魔物には出会わないようだ。
しばらく道を進んでいくと.........俺たちとマルファーニは大きな空洞に到達した。
広々とした空間で天井、壁を見渡せば無数の水晶が青、赤、紫色に煌めいているのが見える。
幻想的な光景である。
うん?空間の奥の方を観ると...............階段がある。
そして、階段の先には祭壇のようなものがあり....女の子がいる。
え!女の子が鎖で繋がれてる!!一体どういう状況なんだ?これ。
マルファーニは祭壇の女の子を発見し、駆け出した。
その瞬間である。
駆けだした勇者の目の前に魔法陣のようなものが広がり.......人間が現れた。
黒髪で気性の荒そうな顔をした若い女性である。そして、サイボーグのようなスーツ....こ、コイツは!
海中トンネルで俺を襲ってきた女だ!!?隣にいた輩はメレディスとか呼んでた。
「長旅ご苦労さん。悪いけど、勇者のお前にこの子を渡すわけにはいかないよ」
と言いながら、メレディスはライフルをマルファーニに向ける。
アイツはやばいぞ!大丈夫なのか?
「あんたは誰?何の目的で邪魔をする!?」
マルファーニが叫ぶ。両方とも気性が荒そうだ。
「それをお前に話す義務は無いな。ここで死んで.....次はもっとマシな役割につかせてもらいなぁ!!」
メレディスは何だか意味深な事を言いながら、向けていたライフルを発砲した。
が、マルファーニは弾道を予測し、残像を伴いながら避けた。なんちゅー回避速度だ。
着弾した後方の水晶がバアァアアアアン!!という音を立てて吹き飛ぶ。
マルファーニは残像を伴いながらメレディスの真横へと一瞬で到達すると、胴体を真っ二つにするべく、光りの剣を薙ぎ払った。
メレディスは瞬時に足を開きかがみこみ、紙一重で光の剣を避ける。
光の剣が薙ぎ払われると、グオッ!という音を立て、風圧がその場所を中心に広がったのが分かる。
かがみこんだまま、メレディスは小型の爆弾のような物を女勇者に「ほらよっ」と言いながら投げ、ブーツを光らせつつ瞬時に退避した。こちらも瞬間移動のような速さである。
直後に爆弾は大爆発を起こす。
ドガァアアアアアアン!!!
マルファーニ大丈夫か!?
光の剣を縦に構え魔法障壁のような物を張っていたらしい。
爆発によるダメージは無さそうだ。
それにしてもマルファーニもメレディスも強いな。戦闘技術が両者共に異常に高い。
「流石は勇者様だねぇ。それほどの力を手にしたんだから、さぞかし多くの魔物をやってくれたんだろうよ」
ん?何だ、この言い方。魔物を倒すほど強くなるとでも言わんばかりだ。しかも、魔物に加勢するような言い方である。
「あんたも人間にしちゃ、やるじゃない。サイボーグなのかしら?アースではそういうバトルスーツを着てるのは軍の特殊部隊かサイボーグと相場が決まってるんだけど」
「あたしゃ生粋の人間だよォ!!」
と、言いながら、ブーツを光らせ瞬時にマルファーニに接近する。
片手にはダガーのような短刀を持ち、マルファーニの腹部に向けて突き立てていく。
マルファーニはメレディスのダガーを持つ腕を難なく片手で掴むと、人間離れした握力でその腕を破壊した。
バキィ!!という寒気がするような音が辺りに響く。
「グアァアアアア!!!」と呻き声をあげつつ、メレディスは瞬間移動の速度で後方に退避した。
メレディスは痛みにより肩で息をしている状態だ。
マルファーニはまだまだ余裕がありそうである。
つ、強え.......勇者ってみんなこんなに強いのか?
明らかにメレディスの分が悪いように見える。
その瞬間だった。
メレディスは美しい銀のオーラを身に纏いはじめた。
マルファーニの方は..........
赤黒いオーラを身に纏いはじめた。
えっ?え!?ま、まじかよ。
俺は、メレディスは悪役でロクな事を考えていない。
てっきりそう思い込んでいた。
しかし、目の前の光景は、メレディスの方が、魔王に追いつめられ、人類の命運を背負う勇者であるかのように展開している。オーラが見えるなら誰もがそう判断するだろう。
お、俺はどうするべきなのだろうか.......
次の瞬間。
マルファーニは殺気に満ちた顔で残像を伴いつつ、メレディスに切りかかった。
メレディスは焦燥がにじむ顔で破壊された腕をおさえている。
魔法陣による転移で逃げようにも間に合わないだろう、絶対絶命というやつだ。
すると突然...........
二人がスローモーションになった。
マルファーニは剣を構えながらゆっくりとメレディスに突進していく。
なぜか知らんが俺が手を加えるチャンスだ。どうすればいいか必死に考える。
両者の事情はさっぱり分からない。が、このままにしていいとも絶対思えない。
俺はメレディスを転移させることにした。
場所はどこでもいい。俺は真相界の土地勘がほとんど無い。
転移先はメルシアに来た時に座っていた砂浜でいいだろ。
俺はメレディスがメルシアの砂浜に転移したイメージを浮かべた。
そして.........
世界はまた通常の速度に戻る。
メレディスを一刀両断すべく光の剣を薙ぎ払った。
殺気を込めた一刀による風圧が衝撃波のように空洞全体に広がる。
が、メレディスはすでにそこにはいなかった。
「えっ!?」
と、光の剣が空振りに終わったことに戸惑い、周囲にメレディスがいないか見渡すマルファーニ。
目の前で敵が消えたんだ。当然の反応だろう。
「魔法陣も出なかったけど......一体なんなの?」
この世界においても、魔法使用の際に魔法陣が出ないのは異常なことなのか。
マルファーニは周囲の安全確認のためにザっと見渡し、安全だと分かると鞘に剣を収め、階段を上がり祭壇のような場所へと向かった。
女の子が両手を鎖で繋がれている。
歩いてくるマルファーニに怯えて震えているようだ。
女の子は銀髪で年齢は8歳前後に見える。エルフのような耳が尖った形をしていて、服装は白と朱色の民族衣装のようである。
「もう大丈夫。安心して。助けにきたわ!」
マルファーニは震える女の子に対し、優しく声をかけた。
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実体 ジョン・マクレガー
ニンファル顕現体 ゴルマキア
ニンファルのグラブダル地域にあるビツラウラ洞窟にて生息している魔物。
体格を活かした剣による強力な攻撃を得意とする。魔法は使用しない。
実体であるジョン・マクレガーは86年前のアメリカ合衆国にて農業用の機械を貸し出す会社を経営していた。経営手腕に優れ、他者よりも速く農業用機械を次々に押さえた事で農業用機械のリースにおいて多くのシェアを握り、物的財産を築いた。
しかし、その経営方法は世界のためになるとは言い難く、ジョンの会社が利益を独占した分だけ困窮したり倒産する会社が相次いだ。また、リース料を払えなくなった農家や企業からは容赦なく農業用機械を返還させた。
ジョンの行為による世界へのひずみは、ジョンの荒廃した人格へと反映された。
他者を蹴落とし利益を上げるほどに傲慢・強欲になり他者を見下すことも多くなり、また、家族関係におけるトラブルも多くなった。
最終的には持病の糖尿病に起因した心筋梗塞により48歳で死没。
その後、パーゲトルにあるガルム地域にて奴隷として炭鉱で働くことになる。
しかし、天使や神達の襲撃によりパーゲトルで死を迎えたことで、ニンファルにてゴルマキアとして転生した。
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この魔人......元人間だってのか!?
一体、何だってそんなことに。
さらに、この世界においては元人間である魔物を狩る事が奨励されているのだろうか。
勇者が魔人と戦っていたことからも、勇者の解析で現れた文字を読んでも、それは間違いないだろう。
魔物が人間を襲撃したりなど、色々な事情はあるかもしれない。
この世界の人達は魔物が元人間であるなんて知らないかもしれない。
胃のあたりがムカムカする。胸糞悪いっていうのはこの事なのか.......
ニンファルの人達に罪は無い。
俺がムカついているのは、前世の素行が悪い場合、魔物に転生する事もありえるという輪廻転生の仕組みに対してだ。
いくらなんでもそれは無いだろう......
吾郎は今、まさに魔物を殺しそうになったんだぞ。
いや、もう、多くの魔物を手にかけてきた事は間違いないだろう。
無自覚に殺人を犯すような仕組みが成り立っている事に俺は苛立ちを禁じ得ない。
《周さん、どうかしましたか?》
アガパンサは心配そうに俺の顔を覗き込む。
正直、この事に対して何も感じないアガパンサに対しても、俺は少し苛立ちを覚えていたが、アガパンサは龍である。しかも、最近まで人間に不信を抱いていたぐらいだ。それらの事を考えれば俺の苛立ちを向けるのはお門違いである。
《なあ、ニンファルでは人間が魔物に転生するなんて事がずっと行われてきてたのか?》
《...............》
アガパンサはばつの悪そうな顔を一瞬したあと、わずか斜め下に顔を向け黙ってしまった。
蒼く輝く美しい髪に遮られ、表情は伺い知る事ができない。
《アガパンサ....?》
《........約80年前に天使、神々などがパーゲトルを襲撃して以降、人間が魔物に転生するようになりました》
そういえば、ゴルマキアとか言う魔物を解析した時に出てきた文字にも書いてあった。
《一体なんだって天使と神々がパーゲトルを襲撃したんだ?》
《それは............》
アガパンサはいかにも言いたく無さそうに、躊躇しながら言葉を絞りだそうとした瞬間、女勇者に動きがあった。
女勇者は洞窟内の移動を始めるようだ。
先に向かうのか、帰るのかは分からないが。
《よし、俺たちもついて行っていいかな》
この女勇者は吾郎の生まれ変わりだ。マルファーニが何をしようとしてるのかは気になる所である。
........魔物に出会ったらできるだけ殺さないように導きたい。それに意味があることなのかは分からないが。
《はい!彼女の後をついていきましょう》
アガパンサの声には安堵の色が浮かんでいた。俺としても、アガパンサが、言うのにそこまで躊躇うことを聴いていいのか迷う所である。
マルファーニは赤や紫に光る水晶の並ぶ道を速足で進んでいく。
まだ魔物には出会わないようだ。
しばらく道を進んでいくと.........俺たちとマルファーニは大きな空洞に到達した。
広々とした空間で天井、壁を見渡せば無数の水晶が青、赤、紫色に煌めいているのが見える。
幻想的な光景である。
うん?空間の奥の方を観ると...............階段がある。
そして、階段の先には祭壇のようなものがあり....女の子がいる。
え!女の子が鎖で繋がれてる!!一体どういう状況なんだ?これ。
マルファーニは祭壇の女の子を発見し、駆け出した。
その瞬間である。
駆けだした勇者の目の前に魔法陣のようなものが広がり.......人間が現れた。
黒髪で気性の荒そうな顔をした若い女性である。そして、サイボーグのようなスーツ....こ、コイツは!
海中トンネルで俺を襲ってきた女だ!!?隣にいた輩はメレディスとか呼んでた。
「長旅ご苦労さん。悪いけど、勇者のお前にこの子を渡すわけにはいかないよ」
と言いながら、メレディスはライフルをマルファーニに向ける。
アイツはやばいぞ!大丈夫なのか?
「あんたは誰?何の目的で邪魔をする!?」
マルファーニが叫ぶ。両方とも気性が荒そうだ。
「それをお前に話す義務は無いな。ここで死んで.....次はもっとマシな役割につかせてもらいなぁ!!」
メレディスは何だか意味深な事を言いながら、向けていたライフルを発砲した。
が、マルファーニは弾道を予測し、残像を伴いながら避けた。なんちゅー回避速度だ。
着弾した後方の水晶がバアァアアアアン!!という音を立てて吹き飛ぶ。
マルファーニは残像を伴いながらメレディスの真横へと一瞬で到達すると、胴体を真っ二つにするべく、光りの剣を薙ぎ払った。
メレディスは瞬時に足を開きかがみこみ、紙一重で光の剣を避ける。
光の剣が薙ぎ払われると、グオッ!という音を立て、風圧がその場所を中心に広がったのが分かる。
かがみこんだまま、メレディスは小型の爆弾のような物を女勇者に「ほらよっ」と言いながら投げ、ブーツを光らせつつ瞬時に退避した。こちらも瞬間移動のような速さである。
直後に爆弾は大爆発を起こす。
ドガァアアアアアアン!!!
マルファーニ大丈夫か!?
光の剣を縦に構え魔法障壁のような物を張っていたらしい。
爆発によるダメージは無さそうだ。
それにしてもマルファーニもメレディスも強いな。戦闘技術が両者共に異常に高い。
「流石は勇者様だねぇ。それほどの力を手にしたんだから、さぞかし多くの魔物をやってくれたんだろうよ」
ん?何だ、この言い方。魔物を倒すほど強くなるとでも言わんばかりだ。しかも、魔物に加勢するような言い方である。
「あんたも人間にしちゃ、やるじゃない。サイボーグなのかしら?アースではそういうバトルスーツを着てるのは軍の特殊部隊かサイボーグと相場が決まってるんだけど」
「あたしゃ生粋の人間だよォ!!」
と、言いながら、ブーツを光らせ瞬時にマルファーニに接近する。
片手にはダガーのような短刀を持ち、マルファーニの腹部に向けて突き立てていく。
マルファーニはメレディスのダガーを持つ腕を難なく片手で掴むと、人間離れした握力でその腕を破壊した。
バキィ!!という寒気がするような音が辺りに響く。
「グアァアアアア!!!」と呻き声をあげつつ、メレディスは瞬間移動の速度で後方に退避した。
メレディスは痛みにより肩で息をしている状態だ。
マルファーニはまだまだ余裕がありそうである。
つ、強え.......勇者ってみんなこんなに強いのか?
明らかにメレディスの分が悪いように見える。
その瞬間だった。
メレディスは美しい銀のオーラを身に纏いはじめた。
マルファーニの方は..........
赤黒いオーラを身に纏いはじめた。
えっ?え!?ま、まじかよ。
俺は、メレディスは悪役でロクな事を考えていない。
てっきりそう思い込んでいた。
しかし、目の前の光景は、メレディスの方が、魔王に追いつめられ、人類の命運を背負う勇者であるかのように展開している。オーラが見えるなら誰もがそう判断するだろう。
お、俺はどうするべきなのだろうか.......
次の瞬間。
マルファーニは殺気に満ちた顔で残像を伴いつつ、メレディスに切りかかった。
メレディスは焦燥がにじむ顔で破壊された腕をおさえている。
魔法陣による転移で逃げようにも間に合わないだろう、絶対絶命というやつだ。
すると突然...........
二人がスローモーションになった。
マルファーニは剣を構えながらゆっくりとメレディスに突進していく。
なぜか知らんが俺が手を加えるチャンスだ。どうすればいいか必死に考える。
両者の事情はさっぱり分からない。が、このままにしていいとも絶対思えない。
俺はメレディスを転移させることにした。
場所はどこでもいい。俺は真相界の土地勘がほとんど無い。
転移先はメルシアに来た時に座っていた砂浜でいいだろ。
俺はメレディスがメルシアの砂浜に転移したイメージを浮かべた。
そして.........
世界はまた通常の速度に戻る。
メレディスを一刀両断すべく光の剣を薙ぎ払った。
殺気を込めた一刀による風圧が衝撃波のように空洞全体に広がる。
が、メレディスはすでにそこにはいなかった。
「えっ!?」
と、光の剣が空振りに終わったことに戸惑い、周囲にメレディスがいないか見渡すマルファーニ。
目の前で敵が消えたんだ。当然の反応だろう。
「魔法陣も出なかったけど......一体なんなの?」
この世界においても、魔法使用の際に魔法陣が出ないのは異常なことなのか。
マルファーニは周囲の安全確認のためにザっと見渡し、安全だと分かると鞘に剣を収め、階段を上がり祭壇のような場所へと向かった。
女の子が両手を鎖で繋がれている。
歩いてくるマルファーニに怯えて震えているようだ。
女の子は銀髪で年齢は8歳前後に見える。エルフのような耳が尖った形をしていて、服装は白と朱色の民族衣装のようである。
「もう大丈夫。安心して。助けにきたわ!」
マルファーニは震える女の子に対し、優しく声をかけた。
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