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マルフィに起きた大異変
64話 信じがたい結末
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土竜に右腕を噛みつかれ、体ごと引きずられる!
同時に、ムスカリ君が背中から転げ落ちてしまった。
土竜に引きづられるあたし。
「お姉ちゃん!」と叫ぶムスカリ君の声が、後ろから聴こえる。
どうしよう......
周さんの魔法障壁がかかっているので痛くは無い......
いや?少し圧迫感を感じる。
あっ........
いだだだだぁ!!
土竜の顎の力が強すぎるのか魔法障壁がひしゃげてきているのを感じる。
時間停滞を使うか?
いや、今、スローモーションになってしまったら土竜の馬鹿力が固定されて、引き抜こうにも引き抜けなくなる。それどころか、この圧迫がずっと続くのはきつい。
とはいっても、噛み千切られるのは時間の問題........
ただ、右腕を噛み千切られそうにも関わらず、どこか他人事な自分がいる。
さっき、自身の身体が人形であって、周辺の空気が本体であるように感じたのと関係があるのか。
周辺の空気....周辺......あ!!あたしには空間魔法がある。
周辺の何かを操り、土竜を攻撃すればいい。
緊急なので新しい事を試している余裕は無い......
ナルバの時と同様に、岩で土竜を串刺しにするイメージをした。
それと同時に、周辺の岩が土竜を串刺しにすべく次々に襲い掛かる。
これを岩槍と名付けよう。
(ん?魔法に名づけをするのは私の趣味じゃなかったような....)
土竜は横っ腹に伸びて来る岩槍に驚き、あたしの右腕を離した。
そこからの土竜の動きはすさまじかった。
始めの岩槍を体をアーチ状にする事で紙一重で交わし、次々に襲い掛かる岩槍を蛇のように体をくねらせながら的確に回避していく。
まだまだ行くわよ!!
土竜と距離を取り、少し余裕が出てきたので新しい事も試すことにした。
土竜の左右の壁を真ん中へと寄せることで圧殺する。
当然、土竜の反応速度を考えれば、回避しようと動くだろう。
そのため、土竜の前後に岩槍を伸ばし、退路を断つようイメージした。
土竜の左右の壁がゴゴゴゴッ!と地響きをあげつつ圧殺すべく迫る。
同時に、前方後方から無数の岩槍が伸びる。
土竜は周囲を素早く見回している。
それにしても、少し距離が離れているのにこんな大質量の物を動かせるなんて....
自分の変化に驚きつつ、土竜の動きを観察する。
クックック....さあ、どうするの??
土竜は予想外の方法を取った。
ただ睡眠をとることにしたように、その場にうずくまった。
次の瞬間、土竜の足元に魔法陣が広がり、輝くダイヤのような身体へと変質していく。
左右の壁が真ん中へと押し寄せると、壁の方が砕けていったのが見えた。
なにあれ....この土竜、そんな事ができるの?
反則反則!!!
自分の空間操作を棚に上げて憤慨した。
ダイヤのように変質した身体が元のフサフサした体表に戻っていく。
元に戻ると、土竜はこちらを睨み構えつつ、あたしの動きを観察しているようだ。
あのダイヤ魔法は一瞬しか使えないのかな?
それなら......
あたしは土竜の全方位から岩槍を伸ばすようイメージした。
全方位から岩槍が土竜に襲い掛かる。
再度、土竜はダイヤ魔法を発動させた。
ダイヤへと変質した巨体に、岩槍はことごとく砕け散る。
ダイヤの状態が解けるのを待つ。
.......解けたぁ!!
あたしは再度、全方位から岩槍を伸ばした。
魔法の打ち終わりを狙われたら、すぐにダイヤの魔法は発動できないでしょう!
次はどうする?
土竜は猛烈な勢いで、前方の岩槍を両手で砕きはじめた。
後方の岩槍はお尻、胴体へと刺さっていく。
が....前方の岩槍を砕いた事で前方へと脱出したようだ。
ただ、赤黒い血が地面に滴っている。
仕留める事は出来なかったが、ダメージを与える事には成功した。
胴体やお尻には幾つか穴が空いているようだ。
手負いの獣は怖いと聴いたことがある。
無駄に苦しめたく無いし、速くとどめを刺したい所だ。
土竜は低い唸り声をあげ、こちらを睨んでいる。
手負いとは思えない気迫である。
でも、この土竜は学習能力が高そうだから、さっきと同じやり方では通用しないかもしれない。
戦闘経験の乏しいあたしには、他に攻撃方法なんて分からないし、どうしよう。
あぁ......面倒くさいわね。
じゃあ、一気に終わらせてやるわ。
心の内側から自分とは明らかに違う、狂暴な思いが湧いてきた。
次の瞬間、あたしの周囲から漆黒のオーラが発せられる。
私の身に纏われた漆黒のオーラは、体と分離していき、4つの球体になった。
サッカーボールほどの大きさの球体が周囲に浮かんでいる。
これは消滅黒球!!!??
ナルバの使っていたものと同じ.....なんで!?
あたしの驚きに反し、あたしの心と身体は淡々と土竜に狙いをつけていき....
それは発射された。
土竜は消滅黒球の威力を直感的に理解したのか、すでに逃走を始めていた。
しかし、非情にも最初の一発は土竜のお尻に直撃し、5メートルほどの大きさまで膨らみ、土竜の下半身は消し飛んだ。
こちらからは一瞬、上半身の断面が見えた。
直撃した事で、もう黒球を残す必要はないと判断するや、あたしの心と身体はすぐさま残りの3つを発射し、土竜の上半身も跡形も無く消え去った。
断末魔の叫びをあげる時間さえも無かっただろう。
いくらか、土竜と共に空洞内の壁や地面も球状に抉れている。
あたしはショックで言葉も無く佇む.......
土竜を殺す覚悟は決めていたけど、いざ、やってみると罪悪感は大きい。
ただ、それ以上に....
消滅黒球を発動したこと。
それを発動したのが、あたしとは全く別の《狂暴な何か》である事。
その事実に恐怖を感じていた。
あたし.....どうしちゃったの?
外見が変わり、それを、どこか血なまぐさいと感じたのは、あたしの中の狂暴な何かが外見に投影されていたからだろうか。
顔だけ見れば美しい容姿だと思うのだが......
果たして、これは成長と言えるのだろうか?
あたしはかつてないほどの不安に苛まれていた。
あ......そういえば、あの土竜に宿っていた女性の魂はどうなったの!?
--------------------------
野田周視点
ヤギミイラを倒した後からアリシャの様子がおかしい。
その矢先に、巨大モグラの登場だ。
思いがけず波乱の道のりになってしまった.....
バトルの連続じゃねえか。
下記はモグラを解析してみた結果である。
・・・・・・・・・・
実体 チン・メイファン
マルフィ顕現体 ドラコスカロプス
ニンファルに存在する大型の魔物である。
様々な事情によりマルフィにも出現している。
地中を移動し洞窟を形成していく習性がある。その洞窟は地盤沈下の元にもなり、また、牙を向けばSランクの冒険者(ニンファル基準)でも手を焼くほどである。
様々な害をなすとして、古来から人間に警戒されている。
麻痺を引き起こす状態異常魔法、体を硬質化させる魔法なども使い、他、無属性のブレスなども吐いてくる。
チン・メイファンは前世、約60年前のアースにて麻薬カルテルのボスの妻をしていた。
この組織が非合法に得た利益は巨額であり、また、世界に及ぼす悪影響は甚大であった。
メイファンの夫は、麻薬売買を”表社会では生きられない社会的弱者の生活の糧だ”と、必要悪として割り切っていた。
ただ、メイファンは夫の方針とは違い、麻薬の利益で夫ともに豪華な暮らしをする事に対し、良心の呵責を抱えていた。
メイファン自身は社会に対する反発心を原因とした、刺激を求める性格をしており、それがゆえに、麻薬カルテルのボスの生き方に惹かれ、夫の愛人から始まり、後に正妻となった。
良心の呵責により、夫に対して麻薬カルテルを離れるよう遠回しに言うものの、ハッキリは言えないままであった。
ある時期から、豪華な暮らしに少しの価値も見出せなくなり、それを機会に自身も麻薬に手を染めるようになった。
その後、自殺を図り、パーゲトルのミディケモ地域へと行きつく。
ただ、自殺による罪と精神に残留した麻薬依存はパーゲトルでもメイファンを苦しめた。
その矢先に、マルフィのドラコスカロプスへと転生することになった。
チン・メイファンはドラコスカロプスの肉体を失った後は、グランディにて再度転生し、療養する見込みである。
・・・・・・・・・・
このモグラは転生者だった。
しかも、どういうわけか、アリシャはモグラに宿るメイファンの声を直接聴いていた。(アリシャを通じて俺も相手の声が聴こえた)
やはりアリシャは神の領域に足を踏み入れている可能性が高い。
だから、相手の精神体と直接話すことができるのではないだろうか。
俺は、解析に書いてあった
”ドラコスカロプスの肉体を失った後は、グランディにて再度転生し、療養する見込みである”
という一文を読んだのと、メイファンの声を聴いたことで、アリシャに土竜討伐をさせることに決めたのだ。
が......最終的には、信じがたい事態が起こった。
アリシャがナルバの消滅黒球を発動し、モグラにとどめを刺したのだ。
アリシャは闇魔法に適正があるのか?
なぜ、ナルバの使っていた魔法を使うことができる?
アリシャの服に刻まれた黒曜石のような黒く輝く刺繍....あれは、ナルバの持っていた杖についていた黒曜石に似ている。
何か関係があるのだろうか....
俺はアリシャの”進化”に対して、不穏なものを強く感じていた。
うおっ!!そういえば、消滅黒球でメイファンの魂ごと消し去ってないだろうな.....まあ、ああいう攻撃魔法は物的なものにしか作用しないと思うのだが.....
イドが知っている方法なのか分からないが、俺はアリシャから一瞬意識を手放し、メイファンの魂の所在を探った。
おお!良かった。
メイファンは休眠状態になったが、グランディへと上昇してくるのが分かる。
いつ転生するのか分からないが、たぶん、大丈夫だと思う。
さっきのメイファンの様子から考えるに、魔物に転生した人間は、いつしか自我を失い存在すらも消滅してしまうのだろうか。
だとするなら.......恐ろしすぎる。
俺はアリシャへと意識を戻す。
アリシャはまだまだ混乱状態にいるな。俺もだけど。
狂暴な魔物とはいえ、相手の魂を助けるためとはいえ、自身の手で殺めたのだから罪悪感もあるだろう。
これはフォローをしなければいかん!
同時に、ムスカリ君が背中から転げ落ちてしまった。
土竜に引きづられるあたし。
「お姉ちゃん!」と叫ぶムスカリ君の声が、後ろから聴こえる。
どうしよう......
周さんの魔法障壁がかかっているので痛くは無い......
いや?少し圧迫感を感じる。
あっ........
いだだだだぁ!!
土竜の顎の力が強すぎるのか魔法障壁がひしゃげてきているのを感じる。
時間停滞を使うか?
いや、今、スローモーションになってしまったら土竜の馬鹿力が固定されて、引き抜こうにも引き抜けなくなる。それどころか、この圧迫がずっと続くのはきつい。
とはいっても、噛み千切られるのは時間の問題........
ただ、右腕を噛み千切られそうにも関わらず、どこか他人事な自分がいる。
さっき、自身の身体が人形であって、周辺の空気が本体であるように感じたのと関係があるのか。
周辺の空気....周辺......あ!!あたしには空間魔法がある。
周辺の何かを操り、土竜を攻撃すればいい。
緊急なので新しい事を試している余裕は無い......
ナルバの時と同様に、岩で土竜を串刺しにするイメージをした。
それと同時に、周辺の岩が土竜を串刺しにすべく次々に襲い掛かる。
これを岩槍と名付けよう。
(ん?魔法に名づけをするのは私の趣味じゃなかったような....)
土竜は横っ腹に伸びて来る岩槍に驚き、あたしの右腕を離した。
そこからの土竜の動きはすさまじかった。
始めの岩槍を体をアーチ状にする事で紙一重で交わし、次々に襲い掛かる岩槍を蛇のように体をくねらせながら的確に回避していく。
まだまだ行くわよ!!
土竜と距離を取り、少し余裕が出てきたので新しい事も試すことにした。
土竜の左右の壁を真ん中へと寄せることで圧殺する。
当然、土竜の反応速度を考えれば、回避しようと動くだろう。
そのため、土竜の前後に岩槍を伸ばし、退路を断つようイメージした。
土竜の左右の壁がゴゴゴゴッ!と地響きをあげつつ圧殺すべく迫る。
同時に、前方後方から無数の岩槍が伸びる。
土竜は周囲を素早く見回している。
それにしても、少し距離が離れているのにこんな大質量の物を動かせるなんて....
自分の変化に驚きつつ、土竜の動きを観察する。
クックック....さあ、どうするの??
土竜は予想外の方法を取った。
ただ睡眠をとることにしたように、その場にうずくまった。
次の瞬間、土竜の足元に魔法陣が広がり、輝くダイヤのような身体へと変質していく。
左右の壁が真ん中へと押し寄せると、壁の方が砕けていったのが見えた。
なにあれ....この土竜、そんな事ができるの?
反則反則!!!
自分の空間操作を棚に上げて憤慨した。
ダイヤのように変質した身体が元のフサフサした体表に戻っていく。
元に戻ると、土竜はこちらを睨み構えつつ、あたしの動きを観察しているようだ。
あのダイヤ魔法は一瞬しか使えないのかな?
それなら......
あたしは土竜の全方位から岩槍を伸ばすようイメージした。
全方位から岩槍が土竜に襲い掛かる。
再度、土竜はダイヤ魔法を発動させた。
ダイヤへと変質した巨体に、岩槍はことごとく砕け散る。
ダイヤの状態が解けるのを待つ。
.......解けたぁ!!
あたしは再度、全方位から岩槍を伸ばした。
魔法の打ち終わりを狙われたら、すぐにダイヤの魔法は発動できないでしょう!
次はどうする?
土竜は猛烈な勢いで、前方の岩槍を両手で砕きはじめた。
後方の岩槍はお尻、胴体へと刺さっていく。
が....前方の岩槍を砕いた事で前方へと脱出したようだ。
ただ、赤黒い血が地面に滴っている。
仕留める事は出来なかったが、ダメージを与える事には成功した。
胴体やお尻には幾つか穴が空いているようだ。
手負いの獣は怖いと聴いたことがある。
無駄に苦しめたく無いし、速くとどめを刺したい所だ。
土竜は低い唸り声をあげ、こちらを睨んでいる。
手負いとは思えない気迫である。
でも、この土竜は学習能力が高そうだから、さっきと同じやり方では通用しないかもしれない。
戦闘経験の乏しいあたしには、他に攻撃方法なんて分からないし、どうしよう。
あぁ......面倒くさいわね。
じゃあ、一気に終わらせてやるわ。
心の内側から自分とは明らかに違う、狂暴な思いが湧いてきた。
次の瞬間、あたしの周囲から漆黒のオーラが発せられる。
私の身に纏われた漆黒のオーラは、体と分離していき、4つの球体になった。
サッカーボールほどの大きさの球体が周囲に浮かんでいる。
これは消滅黒球!!!??
ナルバの使っていたものと同じ.....なんで!?
あたしの驚きに反し、あたしの心と身体は淡々と土竜に狙いをつけていき....
それは発射された。
土竜は消滅黒球の威力を直感的に理解したのか、すでに逃走を始めていた。
しかし、非情にも最初の一発は土竜のお尻に直撃し、5メートルほどの大きさまで膨らみ、土竜の下半身は消し飛んだ。
こちらからは一瞬、上半身の断面が見えた。
直撃した事で、もう黒球を残す必要はないと判断するや、あたしの心と身体はすぐさま残りの3つを発射し、土竜の上半身も跡形も無く消え去った。
断末魔の叫びをあげる時間さえも無かっただろう。
いくらか、土竜と共に空洞内の壁や地面も球状に抉れている。
あたしはショックで言葉も無く佇む.......
土竜を殺す覚悟は決めていたけど、いざ、やってみると罪悪感は大きい。
ただ、それ以上に....
消滅黒球を発動したこと。
それを発動したのが、あたしとは全く別の《狂暴な何か》である事。
その事実に恐怖を感じていた。
あたし.....どうしちゃったの?
外見が変わり、それを、どこか血なまぐさいと感じたのは、あたしの中の狂暴な何かが外見に投影されていたからだろうか。
顔だけ見れば美しい容姿だと思うのだが......
果たして、これは成長と言えるのだろうか?
あたしはかつてないほどの不安に苛まれていた。
あ......そういえば、あの土竜に宿っていた女性の魂はどうなったの!?
--------------------------
野田周視点
ヤギミイラを倒した後からアリシャの様子がおかしい。
その矢先に、巨大モグラの登場だ。
思いがけず波乱の道のりになってしまった.....
バトルの連続じゃねえか。
下記はモグラを解析してみた結果である。
・・・・・・・・・・
実体 チン・メイファン
マルフィ顕現体 ドラコスカロプス
ニンファルに存在する大型の魔物である。
様々な事情によりマルフィにも出現している。
地中を移動し洞窟を形成していく習性がある。その洞窟は地盤沈下の元にもなり、また、牙を向けばSランクの冒険者(ニンファル基準)でも手を焼くほどである。
様々な害をなすとして、古来から人間に警戒されている。
麻痺を引き起こす状態異常魔法、体を硬質化させる魔法なども使い、他、無属性のブレスなども吐いてくる。
チン・メイファンは前世、約60年前のアースにて麻薬カルテルのボスの妻をしていた。
この組織が非合法に得た利益は巨額であり、また、世界に及ぼす悪影響は甚大であった。
メイファンの夫は、麻薬売買を”表社会では生きられない社会的弱者の生活の糧だ”と、必要悪として割り切っていた。
ただ、メイファンは夫の方針とは違い、麻薬の利益で夫ともに豪華な暮らしをする事に対し、良心の呵責を抱えていた。
メイファン自身は社会に対する反発心を原因とした、刺激を求める性格をしており、それがゆえに、麻薬カルテルのボスの生き方に惹かれ、夫の愛人から始まり、後に正妻となった。
良心の呵責により、夫に対して麻薬カルテルを離れるよう遠回しに言うものの、ハッキリは言えないままであった。
ある時期から、豪華な暮らしに少しの価値も見出せなくなり、それを機会に自身も麻薬に手を染めるようになった。
その後、自殺を図り、パーゲトルのミディケモ地域へと行きつく。
ただ、自殺による罪と精神に残留した麻薬依存はパーゲトルでもメイファンを苦しめた。
その矢先に、マルフィのドラコスカロプスへと転生することになった。
チン・メイファンはドラコスカロプスの肉体を失った後は、グランディにて再度転生し、療養する見込みである。
・・・・・・・・・・
このモグラは転生者だった。
しかも、どういうわけか、アリシャはモグラに宿るメイファンの声を直接聴いていた。(アリシャを通じて俺も相手の声が聴こえた)
やはりアリシャは神の領域に足を踏み入れている可能性が高い。
だから、相手の精神体と直接話すことができるのではないだろうか。
俺は、解析に書いてあった
”ドラコスカロプスの肉体を失った後は、グランディにて再度転生し、療養する見込みである”
という一文を読んだのと、メイファンの声を聴いたことで、アリシャに土竜討伐をさせることに決めたのだ。
が......最終的には、信じがたい事態が起こった。
アリシャがナルバの消滅黒球を発動し、モグラにとどめを刺したのだ。
アリシャは闇魔法に適正があるのか?
なぜ、ナルバの使っていた魔法を使うことができる?
アリシャの服に刻まれた黒曜石のような黒く輝く刺繍....あれは、ナルバの持っていた杖についていた黒曜石に似ている。
何か関係があるのだろうか....
俺はアリシャの”進化”に対して、不穏なものを強く感じていた。
うおっ!!そういえば、消滅黒球でメイファンの魂ごと消し去ってないだろうな.....まあ、ああいう攻撃魔法は物的なものにしか作用しないと思うのだが.....
イドが知っている方法なのか分からないが、俺はアリシャから一瞬意識を手放し、メイファンの魂の所在を探った。
おお!良かった。
メイファンは休眠状態になったが、グランディへと上昇してくるのが分かる。
いつ転生するのか分からないが、たぶん、大丈夫だと思う。
さっきのメイファンの様子から考えるに、魔物に転生した人間は、いつしか自我を失い存在すらも消滅してしまうのだろうか。
だとするなら.......恐ろしすぎる。
俺はアリシャへと意識を戻す。
アリシャはまだまだ混乱状態にいるな。俺もだけど。
狂暴な魔物とはいえ、相手の魂を助けるためとはいえ、自身の手で殺めたのだから罪悪感もあるだろう。
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