異形狩り

アルゴ

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第一章 【転機、あるいは死期】

*研ぎ澄ませ

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「……時間は考えたらダメだ。」

考えるだけで気が遠くなる。終わりのことは考えない。目の前のことだけに集中しなきゃ。とはいえ……

「……ッ!」

無造作に振り下ろされる鋏をよろめきながら回避する。砂煙と一緒に吹き飛ばされながらなんとか体制を保つ。遊ばれているのは痛いくらいに分かるが、この気まぐれに生かされているのも事実。物の少ない砂漠だ。いつ飢えが遊びを上回るか分からない。【赤黒蠍】が飽きた時、文字通り私は終わる。ならそれまでだけでも……

「こんな所で……!」

震える足を叱咤するように叫ぶ。喉はとっくに焼け付いて限界を迎えている。水筒は引きちぎられてもうどこかの砂の下。身体強化も悲鳴をあげる体を無理やり動かしているに過ぎない。

「GRRRRRRRRRRRRooo」

直接いたぶる事に飽きたのか、【赤黒蠍】は鋏と尾先で砂利を飛ばし始めた。砂利とは言え恐るべき膂力で弾かれるそれはショットガンに比肩する程の威力を孕む。フラフラとサイドステップを踏みながら辛うじて躱す。だが少しづつ、確実に肌に傷が増えていく。

「……ゼヒュッ……ゔッ……」

とうとう右足を砂礫が捉えた。思わず倒れ込む私を覗き込み、【赤黒蠍】は楽しげに歩み寄って来る。私は悔しさに手元の砂を握り……「ある物」に気がついた。

「CRRRoooo……KKKKKKK」

そのまま私の足を掴み、【赤黒蠍】が私を真上に持ち上げた。矯めつ眇めつ見るように、目元に持ち上げ、再び口元を歪める。私はされるがままに運ばれ、そのまま口元に運ばれる瞬間。【赤黒蠍】を見つめる。集中する。過度な集中によって眼球が充血し赤く染まるまで凝視する。そして牙が目の前に迫った瞬間……私は手にした「短剣」を、間近に迫った複眼へ全力で投げた。短剣は自分が投げたとは思えない速度で、ゾブリとおぞましい水音を立てて【赤黒蠍】の複眼を1つ抉り突き立った。

「GGGGGGGGHHHHHHHAAAA!!!?!?」

ダメージ量はほぼ無いが予想外の反撃に【赤黒蠍】は私を放り投げ、目を庇うような素振りを見せる。砂をぶちまけながら何とか受身を取った私は軋む身体を動かし即座に次の短剣を探り当て手に取る。

そう。気づいたのだ。この地形。この地形が【赤黒蠍】のテリトリーなら。餌場なら。……「今まで襲われた狩人たちの装備が埋もれていてもおかしくは無い」と。

【赤黒蠍】が砂礫を飛ばす際に埋もれていた物が掘り起こされたのか、私の手元に飛んできた物以外にも、そこかしこに鈍い鋼の輝きが見える。奴に殺された数多の狩人たちの無念が成した業か。それともただの偶然か。どちらにせよ運命がまだ、私に抗うことを許すのなら……

「私は殺されない……!!!!お前なんかに!!!」


赤く染まり、かすかに輝きを放つ目を見開き、私は覚悟と共に短剣を構える。
日の沈みゆく砂漠の闘技場
その戦いは際限なく加熱してゆく。






ジンはすぐ側の小高い丘から身を起こした。ピリピリと肌に刺す感覚。弱いが、確実に感じる。「同族」の気配。

「やっぱりな……」 
凶悪な笑みと共に彼は歩き出した。
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