女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~

第五章:ミステリー・オブ・ミッドナイト 10

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 徹夜明け。
 オレは五年生の教室――ではなく、母さんと可児校長と共に記者会見の場に座らされていた。
 周囲には報道陣。無数のカメラがレンズを向けて、オレ達の話を一瞬たりとも逃さないように撮っている。
 体はとても眠くて倒れそうなのに、緊張で寝落ちすることすら許されない。ななは一切気にせず爆睡しているが。

 今回の一件。正体が怪異ではなくただの犯罪であったため、当たり前だが報道されることになった。ではどうして犯行が明るみになったのか、という話になる訳で。そのせいでオレが学習サポーターとして通っていたことを公にしなくてはいけなくなり、そのついでに対霊処への要請が可児校長の自己判断だったことまで芋づる式に発覚してしまった。何しているんだよ、カニボウズ。

「可児校長、何故教育委員会に無断で対霊処に依頼したんですか?」
「かつての教え子とはいえ高校生に奥部小の問題を任せるのはいかがなものでしょうか?」
「学生の貴重な時間を浪費させたことに負い目はないのですか!?」
「学習サポーターと偽っていたのは児童やその保護者達を欺いていたと捉えてもよろしいのでしょうか?」
「責任者として不誠実ではないでしょうか!?」

 矢継ぎ早に飛び交う質問に可児校長は「教育委員会を通していたら早期に解決しない」「対霊処からの許可は受けている」「児童と保護者には今後改めて説明する場を設ける予定」「万が一問題が起これば責任をとって辞職し、頭を丸める」と答えている。しかし、「丸める髪の毛ないだろ、このハゲ」と報道陣から総ツッコミが入ったあたりで泡を吹いて倒れてしまった。

「駆郎さんは今回の依頼をどうお考えですか?」
「はい?」

 可児校長がダウンしたので質問の対象がオレに移ってきた。
 どうって聞かれても困るぞ。

「オ、オレは対霊処の念導者として粛々と仕事をこなすことだけを考えていました」

 それしかない。
 この依頼が初仕事だし、これから経験を積んで“あまみや”を継げる立派な念導者になるための第一歩なのだから。

「それはあなたの本当の気持ちですか?家の都合じゃないんですか?」

 何が言いたいんだ、この記者は。
 オレの言葉が母さんに言わされているとでも思っているのか。失礼だな。自分の意志で念導者になるって決めたんだぞ。
 なんて汚い聞き方をするんだ、まったく。母さんも何かびしっと言ってくれ――と思って目を合わせようとしたのだが、寝てる。
 ななと一緒に、母さんは爆睡していた。

「ちょっと母さんっ!?」
「んあ?……ごめん。寝てたわ」

 寝たいのはこっちなんですけど。昨日の夕方に仮眠をとって以降、休む暇なくここに座っているんですが。

「何故記者会見で眠れるんですか!このはさんには対霊処としての自覚がないんですか!?」
「今回の問題は学校側だけじゃないんですよ!あなたにも責任があるから呼ばれているんですよ!」
「これは責任問題です!こんな人に晩出市の対霊処を任せていいんですか!?」
「これだからよそ者は!清寂会ならもっとまともな人が担当してくれるのに!」

 そうだそうだ、とヤジが飛んでくる。むしろ怒号と言っても良いかもしれない。母さんに対する敵意が凄い。爆睡中だったななも跳ね起きるレベルだ。

「喧しいねぇ、責任責任ってさぁ」

 気怠そうに母さんはマイクを手に取る。
 その動きはゆったりとしていて、声も物静か。寝起きの人間らしい、緩慢さ。
 だが、オレは知っている。
 いつもふざけている母さんが重厚な静かで話す時は、特大級のカミナリが落ちる予兆だと。

「そんなに言うんでしたらあなた方はどうなんですかぁ?ねぇ、裏付けも取れてない記事書いている清寂会の太鼓持ちさん?私の店を叩くといくらもらえるんです?」

 母さんがにらみ付ける先はよそ者発言をした記者だ。“太鼓持ち”という言葉にびくりと体を震わせると、あっという間に縮こまってしまった。

「え?どーしてあの人怖がってるの?」

 ななが素朴な疑問を呟く。
 普段の明るくて優しい姿しか見たことのないななの目線からでは、母さんの恐ろしさに気付いていないのだろう。

「母さんは超弩級ちょうどきゅうに強いんだよ」
「例えば?」
「先週来たましろが百人に分身しても勝てないくらい強い。その気になればここにいる全員挽肉ひきにくに出来る」

 ブチギレ沸点に近づいたことが分かった辺りで手を引くのが定石だ。そういう意味ではあの記者は引き際を弁えている。

「うわ~スゴイ。でも、筋肉ムキムキマッチョッチョじゃないよ?」
「それはだな……最近太ってぷにぷにだけど、その脂肪の下には鍛え抜かれた筋肉が――」

 言い切るよりも速く母さんの恐竜絶滅級隕石鉄拳ゲンコツが脳天に激突し、オレは顔面で机を叩き割る羽目になった。













「は~い、他に何か言いたいことのある記者さんはいますかぁ?」

 薄れゆく意識の中、オレの耳には母さんの明るい声とそれに恐怖した記者の押し殺した悲鳴が届いていた。

 オレが意識を取り戻す頃には記者会見は終わっていた。
 どうやら泡吹きカニボウズが復活して、どうにか母さんを止めてくれたらしい。

 一言、言いたい。
 オレの顔って割と丈夫。
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