女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~

第七章:最後の一週間 2

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 時刻は午後九時を過ぎ、学校内全てが施錠される。もっとも、オレが派手に破壊した六年三組はブルーシートで覆われているだけだが。
 オレ達は職員室前の廊下でその時を待つことにしたのだが、夏も本番突入している上に締め切り状態なので尋常じゃないくらい暑い。廊下でも暑い、汗がだらだら滝のように出てくる。多めに飲み物を持ってきておいて良かった。これでは怪現象が起きる前にこっちが干からびて霊になってしまう。

「あ~つ~い~」
「そうだな」
「あ~つ~い~よ~」
「そうだな」
「あ~ついよ~あ~ついよ~あ~ついよ~あ~ついよ~、あ~ついよあ~ついよあ~ついよ、あ~つあ~つあ~つあ~つあ~つ、あじ~あじ~あじ~あじ~~~~」
せみかお前は」
「だって暑いんだもん」
「暑いって言うから暑いんだよ」

 喧しいななを黙らせるために根性論を持ち出す。昔よく父さんや母さんに言われて「そんなことあるか、暑いもんは暑い!」って思った無茶苦茶な屁理屈だが、保護者側に回ると言いたくなる気持ちも分かる。
 こっちだって暑いのは同じだから、せめて静かにして暑苦しさだけは取り除きたい。
 今なら分かるよ、うん。

「いいよね~駆郎にぃは~。冷たい飲み物が飲めてさ~」
「飲まなきゃ死ぬからな」
「ななも死にそうなんですけどー」
「もう死んでるだろ」

 霊体になったのにまだ暑がるとは、ななも難儀な霊だ。
 涼めるように職員室で冷房をかけてやりたいところだが、がっちり鍵が掛けられているので入れない。こじ開けたら警報が鳴ってしまう。

「そうだ。水浴びでもしてきたらどうだ?」
「え~」
「プールならそこの壁をすり抜けたらすぐ着くし、それが嫌なら手洗い場のシンクにでも寝そべってじゃばーっと……」
「ななはそこまでおバカじゃないよ」

 じと~っとした目つきで睨んでくる。流石に馬鹿にされたと分かったか。でもやりそうだと思ったんだけどなぁ。

「まぁ、別にしてきてもいいけど」
「お?今日は素直じゃないか」
「駆郎にぃがななのびしょ濡れ透けワンピが見たいって言うならいくらでもいいんだよ?」

 前言撤回。
 貧相な体で色仕掛けみたいな動きしてきたぞ。
 くねくねダンスにしか見えないけど。

「興味ないから、そんなもん」
「何よ。ななには魅力がないって言うの?ロリコンのくせに」
「だからロリコンじゃねーよ。行くならさっさと行け」

 二ヶ月近くロリコン呼ばわりされて感覚が粉砕されてしまったのか、全然イラっとしなくなってしまった。プライドと名誉を賭けて否定した方がいいんだろうけど、ななに言われる分にはもうどうでもいい。好きに呼んでくれ。

「よいしょっと……うん?あれ?」

 ななは白いワンピースを脱ごうとしている。霊体から染み出た汗が張り付いていたようでなかなか脱げないようだが――

「こらこらこら!ナチュラルに全裸になろうとするな!」

 ――人前で、しかも男子高校生の前でとんでもない暴挙に出ようとしていやがった。危うく普通の光景だと誤認するところだったぞ、オイ。












「ふっふ~ん。やっぱり気になるんだ?」
「そういうことじゃねーだろ!お前本当に小学生!?」
「だって駆郎にぃの読んでる漫画にあったよ?濡れTシャツとか服脱ぐところとかに男の子はドキドキしちゃうって」

 不覚だった。封印した秘蔵本以外にもきわどい本はいくらでもあった。それを読んだということか。余計なことを覚えやがって。女の子は精神的な成長も早いと言うが、霊になってからも成長するなよ。
 というか、つい最近まで(見えていないとはいえ)父さんと一緒に風呂入っていた子が自分の素肌を武器にするようになるとは。末恐ろしい。

「だが残念だったな。何度でも言うが、オレはロリコンじゃないからドキドキすることはない」

 ずばっとびしっと、これ以上変なことをしないようオレは言い放った。
 するとななは一瞬ショックを受けたように固まり、すぐに渋そうな顔になった。

「はいはい、そーですか。ふ~んだ」

 つまらなそうにツーンとそっぽを向き、ごろんと横になってしまった。
 さっきから何なんだ。人のことをロリコンとさげすみ煽ったと思ったら今度は色仕掛けって……、やっていることがちぐはぐじゃないか?
 女心はよく分からない。
 泣いたり怒ったり笑ったり、感情の起伏は激しいしころころ話が変わるし。
 こういう場合、ななに何て言ってあげれば良いのだろうか?

 その一、「でも、君を一人の女性として魅力を感じているよ」
 その二、「オレとお前の仲だろ。これ以上ドキドキしたら心臓がもたないさ」

 恋愛シミュレーションゲームかよ。そしてどっちの選択肢も酷い。もう少しまともな台詞は思いつかないのか。絶対言えない。
 まぁ、ここは素直に謝っておこうか。

「……あの、さ。別にななのことがどうでもいいってことじゃないんだ。ただ……」

 ただ。
 ただの……何なのだろう。
 結局、先々週の悪霊封印の時もななとの関係を言い表せなかった。仕事の相棒なのは確かだけど浄霊させてあげないといけない依頼者だし。
 駄目だ。答えなんかすぐ出てこない。
 もうその辺はうやむやにして、謝罪の言葉だけ言ってこの場を切り抜けよう。

 あれ……?
 さっきからすーすーって音がするんだけど。
 そっぽ向いて寝転がってから、ななの声が全然聞こえないんだけど。
 もしかして。

「……………寝てやがる」

 人が苦悩している間に、ななは熟睡モードに入っていた。
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