女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

第一章:迷える霊が、そこにいた 4

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「うろちょろしてて困っちゃうから、ここにいてもらうことにしたのよ」

 案内されたのは三年生の階にある物置部屋、かつてつぼみちゃんが化けていた日本人形が放置されている部屋だ。

「でも勝手にふらつくこともあって、その度にこの部屋に連れ戻してて……ホント嫌になっちゃう」

 夢遊病むゆうびょう何処どこかに行ってしまう人を寝室に戻すような感覚だろうか。

「しかも三人もいるのよ?何度も往復させられることもあるんだから」

 道中つぼみちゃんから愚痴ぐちを聞かせられて、ようやく物置部屋に到着。
 確かに、三名ほどの霊気を感じる……が、微弱だ。悪霊ではないが、善良な霊と判断出来ないほど弱々しい、吹けば飛んでしまいそうな霊気。たとえるなら未練を果たして浄化される直前のような、水で薄めまくったジュースみたいだ。

「それじゃ、この霊達を何とかしてもらえるかしら?」

 がらっ、と引き戸が開けられた先。
 そこにいたのは白装束を着た女性達。
 一人は長髪でナイスバディな大人の女性。
 一人は天然パーマでずぼらそうな少女。
 一人は布のリボンでポニーテールを作った少女。
 その全員がうつろな瞳で、口元からよだれを垂らしながら室内を徘徊はいかいしていた。
 何の目的もなく、あてもなく、ただふらふらと。












「うわぁ。どうしたの、この人達?」
「知らないわよ。気付いたら勝手に集まってきたのよ、この学校に」

 晩出小学校の性質……晩出市内の怪異が集まりやすいという特性上、学校と関係のない霊までやってきてしまうことはよくあることだ。ここにいる三人の女性霊達もその悪霊ホイホイと同じ性質に引っ張られた結果、この地に縛り付けられているのだろう。
 だが、不自然なことが多過ぎる。

「この人達は別々に来たんだよな?」
「そうよ。最初はそこの巨乳さん。次はポニーテールで、最後に天然パーマ」

 まず彼女達の服装だ。
 何故か全員白装束。ということは何かしらの宗教か風習で、統一された衣類を着る必要があった可能性が考えられる。単にそれが制服なのかはたまた修行のためか。だが、それならどうしてバラバラに行動していたのかが謎になる。服で統一感を出しておいて自由行動って、中学生の修学旅行かよ。
 次に彼女達の意識だ。
 霊の存在を確立させているのは自身の思い、主に未練だ。果たせなかった思いが強ければ強いほど霊力は強力になり、長期間浄霊されずに形を保っていられる。しかし彼女達のほうけた表情からは未練どころか、感情さえあるかどうかさえ読み取れない。言い方は悪いが、精神疾患しっかんの類いか薬物中毒による精神崩壊を連想させる状態だ。おそらく個々に自由行動だった謎は、これによる徘徊だろうか。
 以上を整理して考えると精神が狂った状態で死んだが未練がある霊で、白装束を着た複数人が犠牲になる儀式的な行為があったということだ。
 オレのガバガバ推理だが、この霊達は多分不本意で心を破壊された末に殺された、カルト的宗教の犠牲者ではないだろうか。そう考えれば異常な精神状態や統一感のある衣装で死亡していることにもある程度合点がいく。
 もっとも、そんな危険な宗教団体が晩出市にあると思いたくないが。

「それで、この霊を早く何とかしてくれない?」
「あー、悪い。ちょっと無理だわ」
「はぁっ!?」

 つぼみちゃんには悪いが、こんな状態の霊を強制浄霊するなんてオレの主義に反する。どう見ても記憶喪失霊のななよりも厄介な案件にしか思えないのだが、それでも彼女達をこんな目にあわせた何かが分からないまま浄霊してはいけない。微弱ながらも残る未練があるのなら、そのために出来る限りを尽くしてやりたい。
 それに――

「これはオレの推測だけど、まだ似たような霊が来ると思うぞ」
「えぇ……やだなぁ」

 ――まだ、犠牲者の霊はいるだろう。そして彼女達はその原因を探るための鍵なのだから、失う訳にはいかない。

「というわけでしばらくこの部屋に結界を張っておくから、また似たような霊が来たらこの部屋に連れてきてやってくれ」

 オレは部屋の四隅に聖結セイケツの札をぺたぺたと貼り付けながら、つぼみちゃんにお願いをする。

「え、嘘でしょ?」
「大丈夫。結界に押し込めば出られないから、逃げ出される心配はないよ」
「いや、私も閉じ込められるじゃない」
「そこは、うん。結界に触れないように気をつけてね」
「危険過ぎるわ!」
「ぐぇっ」

 つぼみちゃんの跳び蹴りが背中に直撃。さすが生前は運動神経抜群だっただけあって、仕事服越しでもかなり効いたぜ。

「も~、つぼみちゃん!駆郎にぃを蹴っていいのはななだけだよ!」
「いいじゃない、少しくらい」

 良くねえよ、どっちも。

「ったく、冗談だよ。ホレ」

 オレは布の切れ端にしか見えない物体をつぼみちゃんに渡す。

「何コレ?ゴミ?」
「ちげぇよ。これはこの服と同じ材質の布だ。それがあれば霊に効果のある念……つまり結界をすり抜けることが出来る」

 仕事服を着ていれば霊に物理的干渉が出来るように、霊が持てば念導者に対抗できるという仕組みだ。だがそれはつまり対霊においてのアドバンテージ差が広がるということ。普通はやってはいけない危険なことだ。

「へ~、じゃあこれを持っていれば私は無敵ってことね」
「悪いこと考えているなら今すぐ浄霊するぞコラ」

 つまり、そういうこと。
 つぼみちゃんは口は悪いが、本当の悪事に手を染められるような子ではない。これでも一応信頼しているのだ。

「え~、ずーるーいー。ななも欲しい~」

 ぷんすか怒っているなな。膨れっ面でずいずい迫ってきて猛抗議中だ。

「ダメに決まってるだろ」
「何でよ~」
「絶対悪用するから」
「しないよ!」
「じゃあ何に使うんだよ」
「持っていれば駆郎にぃに悪戯し放題になるじゃん」
「まず悪戯をするな」
「よかったら私のコレを貸すけど」
「わ~い、ありがとうつぼみちゃん!」
「お前らまとめて浄霊したろか」


 という漫才はさておき。
 謎の女性霊達はつぼみちゃんに任せることになったのだった。
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