103 / 149
女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~
第二章:共同戦線 3
しおりを挟む一夜明けて。
オレとななはバスに揺られて本日の依頼主の元へと向かっていた。
「ねぇねぇ、駆郎にぃ」
「何だよ」
「さすがにバスの中で仕事服はちょっと……」
「悪いかよ」
「別に悪くはないけど……浮いてるね」
「うるさい」
依頼があった現場が遠かったので今回はバス移動。あと現場に着いてから着替えるのが面倒だったので、仕事服を着たまんまバスに乗車した。
ななは周囲と比べてオレの姿が場違い過ぎることを懸念しているようだったが、オレは気にしていないし乗客も対霊処の人なんだなー、としか思っていないだろう。
「オレなんてまだマシだろ。ましろとか昨日の茶々なんてもっと凄い格好してるんだから……ってましろはあの格好で電車に乗ってたんだよな」
今更になって気付いたわ。
よくあんな露出度の高い格好で公共交通機関を利用出来たな。
「あー……確かに言われてみれば」
「だよな」
ななも共感してくれたようで良かった。
どうやらオレもまだまだ正常な感覚を持った人間のようだ。
「ところでさ、今日のお仕事は何なの?」
「そんなに大したことじゃなさそうだぞ。最近霊が家の近くをうろうろするようになったから何とかしてくれって。浄霊の条件とかは特になしだ」
「へー、そうなんだ」
「だからすぐ終わると思うんだけど……移動距離がなぁ」
仕事の内容は至って簡単だし、自由度も高い。
問題なのはその遠さ。依頼主の住む地域が晩出市の端の方、ギリギリ“あまみや”の管轄地域ということだ。多分、仕事をする時間より移動時間の方が長いパターンだ。おかげでまったりバスの中でななとおしゃべりタイム、という始末である。
「折角だし、お勉強でもしたら?」
「乗り物酔いって知ってるか?」
「吐くの?」
「吐かねぇよ。でも車の中で文字を読むと気持ち悪くなる」
「うわー、駆郎にぃ弱過ぎ」
「お前が言うな」
邪怪を見る度に嘔吐寸前みたいに真っ青な顔になったり変態野郎の奇行を見てエクトプラズマーしちゃったりしただろ、とチョップ込みでツッコミを入れてやりたいぞ。
……そう言えばあの女児の小便大好き変態おじさんこと滑田明斗(無職)はどうなったのだろうか。全然ニュースで報道されないあたり、もう誰も興味がなくなってしまったのだろう。切ない話だ。
なんて、思った時だった。
――ズドンッ!
何かが爆発したような衝撃と共に、視界が激しく揺さぶられる。
続けて乗客達の悲鳴。転がり落ちる人々の手荷物。
「えっ!?え、何何何っ!?」
「お、おおお落ち着け、なな!」
「駆郎にぃもだよ!?」
「大丈夫、半分冷静だ」
バスが急停車する。
悲鳴や呻き声が車内に充満している。よく見れば怪我人もおり、シートや床には血痕もあった。
どうやら大きな物がバスの横っ腹にぶつかったようで、バスの真ん中あたりの被害が一番大きい。粉々になったガラスにひしゃげた手すり、酷い有様だ。
とんだ交通事故だ。
オレは何がぶつかったのか事態の把握をするため、割れた窓ガラスから外の様子を見た。
「あー、マジか。またかよ……」
「またって……うわぁ」
オレとななの視界の先にいるのは――完全体の邪怪だった。
てるてる坊主の体、その脳天には包丁がめり込んでいる。更にその胴体からは生ゴミがこぼれ落ちていて、見るからに臭そうだ。それを裏付けるかのようにてるてる坊主の下にはケンタウロスよろしくゴキブリがくっついている。
そして晩出市の邪怪名物、必ず融合している海洋生物は鮫だ。しかしただの鮫ではない。目玉は増殖して六個、しかも捕食器官として発達した口の中にはスクリュー状になった舌があった。
見るからにおぞましい造形。
だが、一番最悪なのはその捕食器官にべっとりとついた血液。
この邪怪はすでに人を喰らっている――犠牲者が出てしまっているのだ。
「皆さん、早く逃げて下さい!時間はオレが稼ぎます!」
まずは乗客の安全が第一だ。
オレは運転手に先導を任せて、避難を指示。ななには怪我をして動けない人をポルターガイストで運ぶことと念のため“りばやし”に連絡することを伝えた。
そしてオレは、グロテスク極まりない邪怪と対峙。
不本意の戦闘態勢に入った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
島猫たちのエピソード2025
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
日本酒バー「はなやぎ」のおみちびき
山いい奈
ライト文芸
★お知らせ
3月末の非公開は無しになりました。
お騒がせしてしまい、申し訳ありません。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
小柳世都が切り盛りする大阪の日本酒バー「はなやぎ」。
世都はときおり、サービスでタロットカードでお客さまを占い、悩みを聞いたり、ほんの少し背中を押したりする。
恋愛体質のお客さま、未来の姑と巧く行かないお客さま、辞令が出て転職を悩むお客さま、などなど。
店員の坂道龍平、そしてご常連の高階さんに見守られ、世都は今日も奮闘する。
世都と龍平の関係は。
高階さんの思惑は。
そして家族とは。
優しく、暖かく、そして少し切ない物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
