女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

第二章:共同戦線 3

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 一夜明けて。
 オレとななはバスに揺られて本日の依頼主の元へと向かっていた。

「ねぇねぇ、駆郎にぃ」
「何だよ」
「さすがにバスの中で仕事服はちょっと……」
「悪いかよ」
「別に悪くはないけど……浮いてるね」
「うるさい」

 依頼があった現場が遠かったので今回はバス移動。あと現場に着いてから着替えるのが面倒だったので、仕事服を着たまんまバスに乗車した。
 ななは周囲と比べてオレの姿が場違い過ぎることを懸念しているようだったが、オレは気にしていないし乗客も対霊処の人なんだなー、としか思っていないだろう。

「オレなんてまだマシだろ。ましろとか昨日の茶々なんてもっと凄い格好してるんだから……ってましろはあの格好で電車に乗ってたんだよな」

 今更になって気付いたわ。
 よくあんな露出度の高い格好で公共交通機関を利用出来たな。

「あー……確かに言われてみれば」
「だよな」

 ななも共感してくれたようで良かった。
 どうやらオレもまだまだ正常な感覚を持った人間のようだ。

「ところでさ、今日のお仕事は何なの?」
「そんなに大したことじゃなさそうだぞ。最近霊が家の近くをうろうろするようになったから何とかしてくれって。浄霊の条件とかは特になしだ」
「へー、そうなんだ」
「だからすぐ終わると思うんだけど……移動距離がなぁ」

 仕事の内容は至って簡単だし、自由度も高い。
 問題なのはその遠さ。依頼主の住む地域が晩出市の端の方、ギリギリ“あまみや”の管轄地域ということだ。多分、仕事をする時間より移動時間の方が長いパターンだ。おかげでまったりバスの中でななとおしゃべりタイム、という始末である。

折角せっかくだし、お勉強でもしたら?」
「乗り物酔いって知ってるか?」
「吐くの?」
「吐かねぇよ。でも車の中で文字を読むと気持ち悪くなる」
「うわー、駆郎にぃ弱過ぎ」
「お前が言うな」

 邪怪を見る度に嘔吐寸前みたいに真っ青な顔になったり変態野郎の奇行を見てエクトプラズマーしちゃったりしただろ、とチョップ込みでツッコミを入れてやりたいぞ。
 ……そう言えばあの女児の小便大好き変態おじさんこと滑田なめた明斗あきと(無職)はどうなったのだろうか。全然ニュースで報道されないあたり、もう誰も興味がなくなってしまったのだろう。切ない話だ。
 なんて、思った時だった。

 ――ズドンッ!

 何かが爆発したような衝撃と共に、視界が激しく揺さぶられる。
 続けて乗客達の悲鳴。転がり落ちる人々の手荷物。

「えっ!?え、何何何っ!?」
「お、おおお落ち着け、なな!」
「駆郎にぃもだよ!?」
「大丈夫、半分冷静だ」

 バスが急停車する。
 悲鳴やうめき声が車内に充満している。よく見れば怪我人もおり、シートや床には血痕けっこんもあった。
 どうやら大きな物がバスの横っ腹にぶつかったようで、バスの真ん中あたりの被害が一番大きい。粉々になったガラスにひしゃげた手すり、酷い有様だ。
 とんだ交通事故だ。
 オレは何がぶつかったのか事態の把握をするため、割れた窓ガラスから外の様子を見た。

「あー、マジか。またかよ……」
「またって……うわぁ」

 オレとななの視界の先にいるのは――完全体の邪怪だった。
 てるてる坊主の体、その脳天には包丁がめり込んでいる。更にその胴体からは生ゴミがこぼれ落ちていて、見るからに臭そうだ。それを裏付けるかのようにてるてる坊主の下にはケンタウロスよろしくゴキブリがくっついている。
 そして晩出市の邪怪名物、必ず融合している海洋生物はさめだ。しかしただの鮫ではない。目玉は増殖して六個、しかも捕食器官として発達した口の中にはスクリュー状になった舌があった。
 見るからにおぞましい造形。
 だが、一番最悪なのはその捕食器官にべっとりとついた血液。
 この邪怪はすでに人を喰らっている――犠牲者が出てしまっているのだ。












「皆さん、早く逃げて下さい!時間はオレが稼ぎます!」

 まずは乗客の安全が第一だ。
オレは運転手に先導を任せて、避難を指示。ななには怪我をして動けない人をポルターガイストで運ぶことと念のため“りばやし”に連絡することを伝えた。
 そしてオレは、グロテスク極まりない邪怪と対峙。
 不本意の戦闘態勢に入った。
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