女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

第三章:棒がなくても犬に当たる 6

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「……つまり、元の姿に戻る程の力がなかった、と」
―そういうことだ―

 この柴犬は伝説の霊獣、狼慈丸らしい。
 晩出市の異変――かつて倒した澱神無の復活を察知して大急ぎで使命を終わらせて帰ってきてくれたようだが、その過程で霊力を大幅に消耗してしまい柴犬姿になってしまったそうだ。
 いや、どうして柴犬なんだよ……と、ツッコミを入れたかったが本人もいまいち理解していないようなので諦めた。

―それで、駆郎。お前がこの街の念導者でいいんだな?―
「霊相手専門なんだけどな」

 本来であれば霊獣と手を組んで戦うのに相応しいのは、晩出市の対邪処“りばやし”の人間なのだ。あくまでもオレの管轄外、なのだが今回は特例だ。

―ではそちらの霊はお前の仲間ということか―
「こっちの小さいのが相棒のななで、荒っぽそうなのが依頼主のミサキちゃんだ」
「小さいって言うなーっ!」
「もっとまともな紹介の仕方はねーのかっ!?」

 二人からぶん殴られた。特にミサキちゃんは本気で拳を振るうからかなり痛かった。さすが、鍛えていただけはあるぜ。ぐふぅ。

―お前がミサキ、という名なのか?―
「……そうだけど、何だよ」
―いや、千年前のことを思い出していただけだ―

 何故か狼慈丸は渋そうな表情。柴犬の可愛い顔がしわくちゃになっていた。それはそれで愛らしいけど。
 しかし……先程からずっと威厳あるしゃべり方をしているが、小さな柴犬姿のせいでアンバランスさが気になる。そのギャップが可愛さを引き立てていて、一部の動物マニアには大ウケしそうだ。多分本人が一番気にしていそうだから、あえて言わないが。

「狼慈丸も一緒に戦ってくれるのはいいんだけどさ、元の姿に戻ることは出来るんだよな?」

 最大の問題はそこだ。
 澱神無の復活が確定したことにより、大規模な戦いになることは必至。そのためには大幅な戦力増強、つまり霊獣の真の力が必要になるということ。
 だが現在の狼慈丸の姿はご覧の通り柴犬状態。とてもじゃないが戦える体ではない。精一杯のタックルだってそこまで強くはなかったことからもそれは明らかだ。
 だからこそ、狼慈丸には何が何でも元の姿になるまで回復してもらわないと困る。

―……多分な―
「多分って、オイ」

 だが、その返答は大変曖昧あいまいだった。

「あんた一応霊獣なんだよな?凄く強いんだよな?」
―その通り、我は強いぞ。万全ならな―
「だから霊力満タンになるのかが勝てるかどうかにかかっているんだよ!?」
―我が知るか!そのうち戻るだろうからその時を待て!―

 霊獣本人でも霊力を急速回復する方法は分からないらしい。それこそ晩出市民の正の感情を地道に集めていくしかないのだろうか。
 そんなペースで澱神無の復活までに間に合うのだろうか、はなはだ疑問である。

「しょうがない、とりあえず今は間に合うって信じて待つことにするよ」

 ここで言い争っても何一つ解決しないし、犬と喧嘩しても虚しいだけだ。この辺で打ち切って母さんに報告しに帰ろう。

―犬扱いはやめろ―
「でも柴犬じゃん」
―これでも霊獣だからな。少しは敬え―


 と、偉そうに言っていたが。

「きゃーっ!この子が伝説の狼慈丸ちゃん!?かーわーいーいー♪」
―きゃう~ん♪―

 母さんがもふもふとじゃれついてきて遊ばれているのに、まんざらでもない様子。
 霊獣のことを敬えとか言っていた雰囲気はどこへやら。
 ただの可愛い犬に成り下がっていた。

「狼慈丸……」
―……はっ!我は何を……―
「そ~れ、こちょこちょこちょ~♪」
―きゃうきゃう、きゃう~ん♪―

 あ、もういいです。
 勝手に子犬ライフを送っていて下さい。








おまけ


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