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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~
第七章:澱神無 1
しおりを挟む青空が次第に燃え盛る色に染まっていく。
それに合わせて周囲の木々も炎のような色を映して光を反射している。まるで松林が地獄の業火で焼かれているようだ。
時刻はそろそろ逢魔が時を迎えようとしていた。
そろそろ邪怪が最も凶悪になる時間。ならばその首魁も強化されると考えるのが自然の道理。
ましろとこがねが道を切り開くために抜けた今、戦力が乏しい状態で絶好調な状態のボスとの決戦。まるでプレイヤーに勝たせる気のない、制作者の嫌がらせ大盛りクソゲーのような状況だ。
「……見えてきたな」
松林の向こうに見える黒い塔のような影。
あれが諸悪の根源――澱神無。
遠目から見る限り、その姿は古文書の通り黒い巨体に二つの目玉。
だが実際に現物を見ると、そのおぞましき存在感は全く別物だった。
離れていても肌に纏わり付くように迫ってくる悪しき気配。否、気配というより圧力と表現する方が正しいかもしれない。
気を抜けば心が押し潰されてしまいそうだ。
「駆郎にぃ……」
なながオレの仕事服をぎゅっと掴んできた。
オレだけじゃない、みんな不安なんだ。
誰だって怖い。伝説の化け物と戦うなんて、RPGゲームの勇者じゃあるまいし。
だけど、オレ達がやるしかない。
オレ達がやらなければ、晩出市に明日はないのだから。
車を松林の中に止めて、オレ達は最前線へと向かう。
まだ澱神無との距離はかなりあるはずなのに、濃密な悪しき気配は既にオレ達を蝕もうとしている。圧を通り越し、体内を侵食されている気分だ。
それと、海岸近くなので当然なのだが磯臭い。
ただし、潮の香りなんて生易しい表現に置き換えることが出来ないくらいに不快な臭いだ。あえて喩えるなら、腐りかけの魚を細切れにして箱一杯に詰め込んで、その中に頭を突っ込んだ時に鼻から侵入してくる臭気……だろうか。あり得ない状況過ぎる内容でしか表現のしようがない程、臭さが尋常じゃない。
「うげっ……」
「おい、吐くなよ……」
ななが吐き気を催しているようだ。だが、それも当然だろう。注意しているオレだって今すぐ家に帰って布団を被って寝たい程に気分最悪なのだから。
ミサキちゃん達の恐怖心も最高潮に達しているようだった。それでも因縁の相手を討伐するために、みんな踏ん張って前進している。
「思った以上に大きくない?」
想像を超えた巨大さに、口元をひくつかせている茶々。大体の姿形は知っていたが大きさについてはオレも驚きだ。古文書の絵ではサイズ感まではあてにならないようだ。
―我が戦った時より五割増しの大きさだワン―
最悪の更に下を行く情報、どうもありがとう。畜生。
―代わりに体の形成はやはり不完全だな。完全に固着しきっていないワン―
「つまり?」
―でかいが脆いってことだワン―
それが唯一の救い、か。
弱体化しているならまだ勝機はあるだろう。
「そろそろ林を抜けるぞ」
「準備はいいですか?」
先頭を歩く先輩二人がこちらを振り返る。
オレ達を怖がらせないように平静を装っているが、二人とも表情が凍り付いている。明らかにこの先で待ち受ける存在に恐怖している。
だが、もう腹をくくらないといけない。
林を抜ければ、そこは敵地。
もう、澱神無の姿が目と鼻の先まで近づいていた。
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