女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

第七章:澱神無 3

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 最前線から後退。
 これで一息つけるだろう。
 そう思ったが、現実はそう甘くはなかった。
 オレ達が逃げた先に、今度は澱神無の体から放たれた巨大な海洋生物が刺客として立ちはだかる。
 パンチ力に定評のあるモンハナシャコ。
 流氷の妖精という呼び名で有名なクリオネ。
 生きた化石で名前に反して蜘蛛くもやサソリに近いらしいカブトガニ。
 少々マイナーな人選である。いや、海選……海鮮?













「ゆっくりする暇もないみたいですなぁ……」

 カブトガニの突進を、ヒノエさんがポルターガイストではねのける――が、続けてモンハナシャコのパンチが繰り出される!
 相馬さんが咄嗟とっさに聖結の結界で盾を作るが一撃で砕け散ってしまう。さすが、元の大きさでもびん水槽すいそうを割る生き物だ。パンチ力は異次元レベルだ。

「きゃあっ!?」

 ナルカちゃんの悲鳴。妖精のような姿をしたクリオネの真の姿――頭部を開きバッカルコーンと呼ばれる器官を伸ばすところを見てしまったからだ。可愛げのある姿から悪魔のような見た目に変貌する様を見たのだから当然の反応だろう。
 この器官を伸ばしているということは餌を捕食するつもりということだ。そして狙われているのは――牛来さんだ。

「ぬぅっ!?」

 筋骨隆々きんこつりゅうりゅう屈強な腕に、バッカルコーンが絡みつく。一瞬狼狽うろたえたが、牛来さんは即座に戦斧を振り下ろしてバッカルコーンを切断、妖精という名の悪魔を引き離す。

「よくも私の相方に触手プレイをしましたね!」

 相馬さんがクリオネに向けてナイフの刃を射出、正確に中心部を貫く。その一撃でクリオネは浄怪されて消えていった。
 澱神無の分身のような存在であるこいつらは、核を持っていないらしい。つまり一定の量を浄怪出来れば消せる。

「ならば、オレ様もお返ししてやる!」

 牛来さんがまき割りのようにモンハナシャコを叩き割る。パンチで応戦しようとしていたが磁轟刃もとい分厚い鉄板の前では無力だったようだ。

「そ~れっ!」

 そして茶々はカブトガニを蹴り上げて裏返して、細い足が蠢く中へスラッシャーの先端をざくざくと何度も突き立てて浄怪。

「これでやっと刺客を倒しきったな……って」

 三匹を浄怪し、再び澱神無へと攻撃をしようとしたが。
 砂の中から飛び出す太い管。その先には鋭い歯のついた顎――オニイソメだ。

―駆郎、避けろ!―

 どん、とオレの体が押し倒される。
 狼慈丸だ。
 鋭い顎の狙う対象が、オレから狼慈丸へと移る。
 オレを庇ってしまったせいで、そのひ弱な体はオニイソメに切断されてしまった。
 ぼとり。
 柴犬と同程度の大きさの頭部が、オレの目の前に落ちてきた。

「ろ、狼慈丸ぅうっ!?」
―顔面セーフだ、問題ないワン―
「って、生きてるんかい」
―だって我、一応霊獣だものワン―

 首ちょんぱしたら死んだかと思うじゃないか。
 心臓に悪いじゃねーか、この野郎。

―あと悪いんだが、頭を拾ってくれ。動けないワン―
「あんまり気分は良くないな、犬の生首って」

 狼慈丸の首を拾い上げて、胴体の断面にぴったりとくっつけてあげると無事復活。霊獣の生態は未知な点が多いな。

「しっかし、まだ出てきますか……」

 オニイソメ意外にも新たな刺客がぞろぞろと海より現れ始めた。
 毒針を持つ巻き貝、アンボイナ。
 金槌かなづちのような頭部の鮫、シュモクザメ。
 猛毒殺人クラゲ、キロネックス。
 丸呑み上等の魚、フウセンウナギ。
 他にもいっぱい……。
 どいつもこいつも何で人間並みに大きいんだよ。

「こりゃ、キリがないなぁ……どうしよっかな~……」

 茶々の言う通り、刺客を相手にしているだけで相当な消耗戦。大方澱神無に辿り着く前にこっちが力尽きてしまうだろう。

「こいつらはオレが引き受ける」

 ならば、戦力を二手に分ける方がまだ効果がある。

「オレとななが刺客と戦う。その間に他のみんなは澱神無討伐に専念してくれ」
「駆郎とななの二人でやれるの?これ、ゲームオーバーになるまで終わらない、無限に湧き続けるゾンビゲームみたいなものだけど?」
「お前を含めて対邪の皆さんがやっつけてくれたらクリア出来るだろ?」
「なるべくライフがゼロになる前に終わらせるようにしてあげるよ」

 にひ、と微笑むと茶々、そして牛馬コンビは再度攻撃を開始。ポルターガイストで宙に浮き、澱神無の周囲を跳び回って浄怪していた。

「安請け合いしちゃったけど、大丈夫なの~?」
「ぶっちゃけ、ヤバイ」

 毒タイプの貝とクラゲが迫る。
 ヴェルデアローの矢で貫き、毒を打ち込まれるより先に浄怪。

「ホント、駆郎にぃって馬鹿」
「悪かったな」

 砂浜に落ちて刺さった矢を、ななが回収。
 オレは装填し直して鮫とうなぎを貫く。

「お人好し過ぎってこと。少しは自分のことも考えてよ」
「なんだそれ。体は大事にしているぜ」

 背後から迫るオニイソメの顎。
 その腔内に、ななは矢を放って内部から破壊した。

「心配させないでってことだよ」
「この仕事をする限り、無理な相談だな」

 まだ刺客は現れる。
 オニヒトデ、コウイカ、ヤマトメリベ、アカエイ、トビウオ、ガンガゼ、ミズダコ、エチゼンクラゲ、チョウチンアンコウ、ウバザメ、グソクムシ、アオミノウミウシ、ハリセンボン、フナクイムシ、オウムガイ、タラバガニ、マンボウ、アメフラシ、メガマウス、ウミヘビ、ユメナマコ、シオマネキ、イセエビ、リュウグウノツカイ……。
 海の生き物オンパレードだ。
 下手な図鑑よりも種類が豊富な気がする。

「駆郎にぃ、一言いいかな?」
「死亡フラグじゃなければいいぞ」
「なんか、生き物に詳しすぎてキモイ」

 ありがとう、フラグクラッシャー。
 戦いが終わったらみっちりお説教、それから生き物大好き教の布教活動をするからな。
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