【完結】好きな人に身代わりとして抱かれています

黄昏睡

文字の大きさ
2 / 4

2

しおりを挟む
それからは、できる限り声を我慢するようにした。最後まで声を我慢できた日には、途方もない快楽と愛情が与えられた。でも、途中で声を出してしまった日は、ましてや名前を呼んでしまった日には、体内を殴りつけるような突き上げの中で、気を失った。

でも別れることなんて考えられなかった。私は彼のことを愛していたから。
たとえ彼から愛されなくても、別れることなんてできなかった。


そんな私が都合よかったのだろうか。彼は私を何度となく抱いた。
彼に抱かれるたびに、声を殺すのが上手くなった。言葉を飲み込むのが上手くなった。
そして彼から笑顔を向けられることが増えていった。私を通り越して、他の誰かに向けられる笑みを。

何度身体を重ねても、その微笑みが本当の意味で私に向けられることは一度もなかった。
いつだって彼は、ある女性の名前を呟いていた。
声には出さず。
けれど唇が動いていた。
「ジュリア」だろうか「ユリア」だろうか。多分そんな名前。
それを、繰り返し愛しそうに呟いていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

【完結】その約束は果たされる事はなく

かずきりり
恋愛
貴方を愛していました。 森の中で倒れていた青年を献身的に看病をした。 私は貴方を愛してしまいました。 貴方は迎えに来ると言っていたのに…叶わないだろうと思いながらも期待してしまって… 貴方を諦めることは出来そうもありません。 …さようなら… ------- ※ハッピーエンドではありません ※3話完結となります ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

私の孤独と愛と未来

緑谷めい
恋愛
 15歳の私は今、王都に向かう寄合い馬車に乗っている。同じく15歳のカイと一緒に……。  私はリーゼ。15年前、産まれたての赤子だった私は地方都市にある孤児院の前に捨てられた。底冷えのする真冬の早朝だったそうだ。孤児院の院長が泣き声に気付くのが、あと少し遅ければ私は凍死していた。  15歳になり成人した私は孤児院を出て自立しなくてはならない。私は思い切って王都に行って仕事を探すことにした。そして「兵士になる」と言う同い年のカイも王都に行くことになった。喧嘩っ早くてぶっきらぼうなカイは、皆に敬遠されて孤児院の中で浮いた存在だった。私も、いつも仏頂面であまり喋らないカイが苦手だった。

彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった

みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。 この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。 けれど、運命になんて屈しない。 “選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。 ……そう決めたのに。 彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」 涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。

貴方のいない世界では

緑谷めい
恋愛
 決して愛してはいけない男性を愛してしまった、罪深いレティシア。  その男性はレティシアの姉ポーラの婚約者だった。  ※ 全5話完結予定

[完]僕の前から、君が消えた

小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』 余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。 残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。  そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて…… *ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約してました~

marumi
恋愛
大国、セレスティア帝国に生まれた皇女エリシアは、争いも悲しみも知らぬまま、穏やかな日々を送っていた。 しかしある日、帝都を揺るがす暗殺事件が起こる。 紅蓮に染まる夜、失われた家族。 “死んだ皇女”として歴史から名を消した少女は、 身分を隠し、名前を変え、生き延びることを選んだ。 彼女を支えるのは、代々皇族を護る宿命を背負う アルヴェイン公爵家の若き公子、ノアリウス・アルヴェイン。 そして、神を祀る隣国《エルダール》で出会った、 冷たい金の瞳をした神子。 ふたつの光のあいだで揺れながら、 エリシアは“誰かのための存在”ではなく、 “自分として生きる”ことの意味を知っていく。 これは、名前を捨てた少女が、 もう一度「名前」を取り戻すまでの物語。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。

処理中です...