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それからは、できる限り声を我慢するようにした。最後まで声を我慢できた日には、途方もない快楽と愛情が与えられた。でも、途中で声を出してしまった日は、ましてや名前を呼んでしまった日には、体内を殴りつけるような突き上げの中で、気を失った。
でも別れることなんて考えられなかった。私は彼のことを愛していたから。
たとえ彼から愛されなくても、別れることなんてできなかった。
そんな私が都合よかったのだろうか。彼は私を何度となく抱いた。
彼に抱かれるたびに、声を殺すのが上手くなった。言葉を飲み込むのが上手くなった。
そして彼から笑顔を向けられることが増えていった。私を通り越して、他の誰かに向けられる笑みを。
何度身体を重ねても、その微笑みが本当の意味で私に向けられることは一度もなかった。
いつだって彼は、ある女性の名前を呟いていた。
声には出さず。
けれど唇が動いていた。
「ジュリア」だろうか「ユリア」だろうか。多分そんな名前。
それを、繰り返し愛しそうに呟いていた。
でも別れることなんて考えられなかった。私は彼のことを愛していたから。
たとえ彼から愛されなくても、別れることなんてできなかった。
そんな私が都合よかったのだろうか。彼は私を何度となく抱いた。
彼に抱かれるたびに、声を殺すのが上手くなった。言葉を飲み込むのが上手くなった。
そして彼から笑顔を向けられることが増えていった。私を通り越して、他の誰かに向けられる笑みを。
何度身体を重ねても、その微笑みが本当の意味で私に向けられることは一度もなかった。
いつだって彼は、ある女性の名前を呟いていた。
声には出さず。
けれど唇が動いていた。
「ジュリア」だろうか「ユリア」だろうか。多分そんな名前。
それを、繰り返し愛しそうに呟いていた。
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