1 / 4
1
しおりを挟む
彼に抱かれ始めて数回後に気づいた。
彼は、別の誰かを想いながら私を抱いている
気づいたきっかけは声だった。
彼は、最中に私が声を出すことを酷く嫌った。
喘ぎ声はまだいい。
けれど、明確な言葉を発したり、ましてや彼の名前を呼んだりすると、途端に不機嫌になり行為が乱暴になった。
…言葉をしゃべれなくなるくらいに。
たとえ、その直前までとても優しくしてくれていたとしても。柔らかく微笑んでいたとしても。
途端に不機嫌になって、痛めつけるように酷くされた。幸せな夢から覚めてしまった怒りをぶつけるかのように。
最初は気のせいだと思った。
たまたま、タイミングが重なっただけだ。何か他のことが気に障ったのだ。
私がどこか嫌なところに触れてしまったか、全然関係ない昼間の不愉快な出来事を思い出したのだろうと。
そう思おうとした。
けれど、似たようなことが何度も繰り返されて自分を誤魔化しきれなくなった。
彼は、私の声を聞きたくないのだ
他の人を想いながら私を抱いているから、私の声は邪魔なのだ。彼の頭の中に響く想い人の声をかき消す私の声など、不要なのだ。
だから不機嫌になるのだ。
こんなこと認めたくなかった。けれど、認めるしかなかった。
だって試しに最後まで声を我慢してみたら、とても優しくしてくれたから。最後まで、とても大事に触れてくれたから。
…いつもと、全然違った…
その日、彼が帰った後でひたすら泣いた。
悲しかった。
恋人だと思っていたのは私だけだった。
彼にとって私は…。
彼は、別の誰かを想いながら私を抱いている
気づいたきっかけは声だった。
彼は、最中に私が声を出すことを酷く嫌った。
喘ぎ声はまだいい。
けれど、明確な言葉を発したり、ましてや彼の名前を呼んだりすると、途端に不機嫌になり行為が乱暴になった。
…言葉をしゃべれなくなるくらいに。
たとえ、その直前までとても優しくしてくれていたとしても。柔らかく微笑んでいたとしても。
途端に不機嫌になって、痛めつけるように酷くされた。幸せな夢から覚めてしまった怒りをぶつけるかのように。
最初は気のせいだと思った。
たまたま、タイミングが重なっただけだ。何か他のことが気に障ったのだ。
私がどこか嫌なところに触れてしまったか、全然関係ない昼間の不愉快な出来事を思い出したのだろうと。
そう思おうとした。
けれど、似たようなことが何度も繰り返されて自分を誤魔化しきれなくなった。
彼は、私の声を聞きたくないのだ
他の人を想いながら私を抱いているから、私の声は邪魔なのだ。彼の頭の中に響く想い人の声をかき消す私の声など、不要なのだ。
だから不機嫌になるのだ。
こんなこと認めたくなかった。けれど、認めるしかなかった。
だって試しに最後まで声を我慢してみたら、とても優しくしてくれたから。最後まで、とても大事に触れてくれたから。
…いつもと、全然違った…
その日、彼が帰った後でひたすら泣いた。
悲しかった。
恋人だと思っていたのは私だけだった。
彼にとって私は…。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
94
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる