必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 光明から少し離れた場所で木に凭れかかっている男に近づく。髪も顔も、袴にまで赤黒いもので濡らした男は静かに瞼を閉ざしている。しっかりと握りしめられた槍もまた赤く染まっていて、彼が一人で戦い続けたことを物語っていた。そっと彼の前に膝をつき、その口元に手を近づける。何も感じない。そのまま赤く濡れた首筋に触れ、杜環は瞼を閉じた。
 あぁ、なんて冷たいのだろう。
「こんなになるまで戦われたのか」
 視線を向ければ、腹や腕、足といたるところに弾痕が刻まれていた。周りに倒れている兵を見るに、彼は銃弾を受けてなお戦ったのだろう。そしてこんなに冷たくなってもまだ、強く強く槍を握って離さない。
「夏川殿。私の記憶にある限り、あなたはずっと弥生殿の側におられた。その主を逃がすためとはいえ、このような結果になってあなたも、弥生殿もさぞ無念だったことだろう」
 幾千万の民を助けるため、今は亡き主君の願いを守るため、弥生も紫呉も切り捨てなければならなかった。全部を掌に留めておきたいと切に願いながら、それはできないのだと理解するがゆえに。
「本来であれば光明を止めるが私の役目。ですが、それは叶わなかった。せめて、あなたを武衛にお連れしよう」
 弥生はずっと待っていることだろう。腹心の――友の帰りを、ずっと。
 それは願った通りの帰還ではないだろうが、それでも織戸築や峰藤に連れるより、ましてここに放置して野晒しにするよりよほど良い。
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