730 / 984
728
しおりを挟む
「止めるには、私は遅すぎた。せめて帰してさしあげたいと、ここに。私は多くを知らない。けれどきっと、弥生殿の側が彼にとっての故郷ではないかと」
ただ、そう思った。その言葉にお付きの者達がそっと木箱――棺の蓋を開く。そこに横たわるのは、戦って散ったのだと思わせることのない紫呉だった。血糊も泥も綺麗に拭われ、まるでそこにただ眠っているかのよう。
穏やかで、けれど血の気のない、常に傍らにあった男の顔。彼を見た瞬間に弥生は耐えるように瞼を閉じ、唇を噛んだ。
「……謝って、それで何が変わるわけでもない。どれほどの詫びを繰り返したとて、あなたにとって何の意味も成さないだろう。けれど、もはや詫びることしかできない。私が、光明を止められなかった。あなたは私を信じ、願いを、想いを、隠すことも偽ることもなく打ち明けてくれたというのに、私は約束したのに、結局あなたに報いることができなかった。本当に、申し訳ない」
深く、深く杜環は頭を垂れる。口を開けば嗚咽がこぼれそうになるからか、弥生は刹那の沈黙の後、ただ杜環の肩にそっと手を添えて顔を上げるよう促した。
ただ、そう思った。その言葉にお付きの者達がそっと木箱――棺の蓋を開く。そこに横たわるのは、戦って散ったのだと思わせることのない紫呉だった。血糊も泥も綺麗に拭われ、まるでそこにただ眠っているかのよう。
穏やかで、けれど血の気のない、常に傍らにあった男の顔。彼を見た瞬間に弥生は耐えるように瞼を閉じ、唇を噛んだ。
「……謝って、それで何が変わるわけでもない。どれほどの詫びを繰り返したとて、あなたにとって何の意味も成さないだろう。けれど、もはや詫びることしかできない。私が、光明を止められなかった。あなたは私を信じ、願いを、想いを、隠すことも偽ることもなく打ち明けてくれたというのに、私は約束したのに、結局あなたに報いることができなかった。本当に、申し訳ない」
深く、深く杜環は頭を垂れる。口を開けば嗚咽がこぼれそうになるからか、弥生は刹那の沈黙の後、ただ杜環の肩にそっと手を添えて顔を上げるよう促した。
12
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
家族にも見捨てられ、学校で孤独を感じていた静。
毎日が辛くて生きる意味を失いかけた彼の前に現れたのは、眩しい太陽のような青年天輝玲。
玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
しかしある日、玲の口から聞いたある言葉で、信頼から憎悪へと変わった。
それから十年。
玲と再会を果たした静は復讐を果たそうとする。
目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる