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留守番していたアバドン
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出来立てのハム!?
勢いよく首を回して、白い半球体と化している一角に目を向ける。結界のすぐ側まで来たアバドンが、白い煙の中からぬッと出て来た。だが、結界を壊すこともなく、結界の側で立ち止まっていた。結界を壊して出て来ると思っていたが、壊す気配は見えない。手には相変わらずトングを持っている。そんなアバドンは俺を見て笑顔を向けた後、視線を俺から少しずらした。その顔は一瞬にして真顔に変わる。どうした?
アバドンの視線の先に顔を向けると、そこにいたのはズィーリオスしかいない。ズィーリオスの顔も真顔で、その視線はアバドンを向いていた。お互いを合わせているが、どちらも真顔なのが面白い。ズィーリオスとアバドンの顔を交互に見ながら、微動だにしない2人に困り一度ユヴェーレンに顔を向ける。ユヴェーレンにもアバドンの声が聞こえていたはずなので反応したのだろうが、このよく分からない空気にユヴェーレンの表情が抜け落ちていた。すると、俺の視線に気付いたようでユヴェーレンと目が合う。
『ハムが出来たって・・・』
何を言えば良いか分からず、取り敢えず頭に浮かんだことを伝える。
『・・・ええ。らしいわねぇ』
ユヴェーレンもなんと言えば良いか分からなかったようだ。当人のアバドンが説明しないとどうしようもない。
『いやいや!そんなことはどうでも良いだろうっ!?今はそんな話をしているところではない!!』
突如脳内で響いた大声に顔を顰める。咄嗟に両耳を塞いだが、念話だと意味はないことに気付き腕を下ろした。続けて世界樹がテンション高くツッコミを入れる。
『そもそも先ほどからそこの悪魔は何をしているのだ!?』
世界樹は話を聞いていなかったのか?ハムを作っていると言っていたではないか。念話だから耳が遠いという現象は起きないはずだが・・・。世界樹にも難聴という症状が出ることがあるのか?先ほど状態異常の解除はしても、難聴とかは状態異常には扱われないのか・・・。
『おい!そこの人間!今、物凄く失礼なことを考えていただろう!?』
「・・・気のせいだ」
『その間は何だ!?』
めんどくさいなこの人。あ、人じゃないや。
『あ、今めんどくさいって顔をしたな!?』
何だよ本当にこの木。やれやれ。首を左右に振って溜息を吐くと、さらにぎゃんぎゃんと騒ぐ声が脳内に響く。
『結界を解除してやらないのか?』
逸らした顔をズィーリオスに向け、俺はチラリとアバドンを確認する。アバドンの手の位置が先ほどよりも腰のあたりまで下がっており、相変わらず無表情でズィーリオスを見ていた。2人の間で一体どんな念話が繰り広げられているんだ?本当に無言の可能性もあるけど。
『なんか、結界を解除するのが癪なんだよなー』
ズィーリオスが心底ダルそうに答えた。
『それに、自力で出て来れるくせに出て来ないってのもウザイ』
・・・ただいまのズィーリオスはご機嫌斜めのようだ。ハムが嫌いなのだろうか?
「ハム嫌い?」
ただ疑問を聞いただけなのに、返答はなく、ズィーリオスが溜息を吐いてアバドンから視線を逸らした。え、酷い。やっぱりズィーリオスは今機嫌が悪いに違いない!先ほどはそうでもなかったのに・・・。これはアバドンのせいだな。
『アバドン!さっさと自分で出て来いよ!』
だから、つい非難めいた声音になってしまったのは仕方ない。だが、アバドンは俺の言葉を字面のまま受け取ったらしい。なんともなさげに状況を説明しだした。
『いや、結界を壊したいのはやまやまなんだが、そうすると結界の・・・。まあ、いいや。分かった』
・・・マジでアバドンは何がしたかったんだろう?何かを言おうとしていたが、何故か取りやめて結界を自力で出て来ることにしたようだった。結界の側を離れて再び白い煙の中へ姿が消えていく。後片付けでもいているのか?終わったら勝手に出て来るだろう。
アバドンに向けていた顔をユヴェーレンの方角に戻す。さて、なんの話をしていたんだっけ?
『なあ、闇の王の契約者は私の扱いが酷くないか?世界樹ぞ?世界樹と話しができる人は、エルフの巫女と呼ばれる者だけで、とても名誉なことなのに淡泊過ぎやしないか!?』
なんともまあ、お喋りな木である。そんなにお喋りが大好きなら、巫女の人はとても大変だろうな・・・。遠い目をして、長話に付き合う巫女の苦労に同情していると、ズィーリオスが欠伸混じりに話を変えて来た。
『もう十分元気になったようだし、俺たちもそろそろ行かないか?』
「そうだな」
ズィーリオスはきちんと空気を読んでくれたな。ズィーリオスにもスルーされた世界樹が「なっ、なっ、なっ!」しか言わないボットと化したが、俺たちが去った後には元通りになっていることだろう。
周囲の気配を探ってみると、エルフの国がある方角から複数の人の気配がこちらに向かっているのが分かった。距離があるためすぐには到着しないが、世界樹のすぐ側でアバドンが燻製をしていたことだけはバレてはいけない。ただの感だが、こちらに向かっている一行の中にあの王子がいる気がするのだ。
「そういう訳だから俺たちは行く。ここにエルフが来るだろうけど、アバドンの正体については黙っておいてくれよ?」
『・・・・何なのだ、全く・・・。そんなことは分かっておる。この地の者達に悪魔の存在を知らせたところで混乱を引き起こすだけだ』
世界樹に向かって告げると、溜息を吐きながらも了承の返事が返って来た。これで、エルフたちにアバドンのことがバレる可能性はなくなった。そして、タイミングよく結界が割れる音が響き渡る。
立ち上がりながら振り返ると、白い煙が半球の形を失いながら広がって行った。発生源が片付けられたおかげで、白い煙は広がる度に薄く消えていく。後は風が拡散していってくれることだろう。首をズィーリオスに向けようとした時、アバドンが思い出したという声を上げた。
まだ何かあるだろうか?アバドンに振り返ると、丁度次元収納から何かを取り出したところであった。
「これ。お前らがいない間に見つけたんだけど」
そう言って見せられた物は、まるでお香の入れ物のようであった。見たことはないなー。使用目的が分からない。
『それ・・・!?』
しかし、そのお香を見た途端、ズィーリオスが驚愕の声を上げた。ズィーリオスは何かを知っているようだ。森の中に不釣り合いなお香は、明らかに人工物である。エルフたちが使っているものだろうか?
『以前、ハーデル王国の王城の敷地内で見たことがある』
「ッ!?」
ハーデル王国の王城だと!?そんな高価なものが何故ここに?
『その時、リュゼの弟が“人払いの香”だと言っていた。裏社会では極々一般的で簡単に手に入る代物だと。特に、裏ギルドが連中が良く使う道具らしい・・・』
裏ギルド。
ここでその名が出て来るか。ユヴェーレンに牽制して出て来ないようにしたというのに。これでは、裏ギルドの可能性が一段と増したじゃないか。本当に裏ギルドなのだろうか。こんな遠くまで勢力を展開しているなんて考えてもいなかった。世界樹にまで手を出していたなんて。
「他にもあるぞ?森にあるのは違和感があったからな。一応回収しておいた」
そう言ってアバドンが見せて来たのは、太さが5センチメートルほどもあるCの形の腕輪だった。厚さは1センチメートルもないぐらいであるが、金属で出来ており、とても存在感がある。更に、腕輪にはこれ見よがしに罅の入った魔石が埋め込まれており、これが使用済みの魔道具であることが分かったのであった。
勢いよく首を回して、白い半球体と化している一角に目を向ける。結界のすぐ側まで来たアバドンが、白い煙の中からぬッと出て来た。だが、結界を壊すこともなく、結界の側で立ち止まっていた。結界を壊して出て来ると思っていたが、壊す気配は見えない。手には相変わらずトングを持っている。そんなアバドンは俺を見て笑顔を向けた後、視線を俺から少しずらした。その顔は一瞬にして真顔に変わる。どうした?
アバドンの視線の先に顔を向けると、そこにいたのはズィーリオスしかいない。ズィーリオスの顔も真顔で、その視線はアバドンを向いていた。お互いを合わせているが、どちらも真顔なのが面白い。ズィーリオスとアバドンの顔を交互に見ながら、微動だにしない2人に困り一度ユヴェーレンに顔を向ける。ユヴェーレンにもアバドンの声が聞こえていたはずなので反応したのだろうが、このよく分からない空気にユヴェーレンの表情が抜け落ちていた。すると、俺の視線に気付いたようでユヴェーレンと目が合う。
『ハムが出来たって・・・』
何を言えば良いか分からず、取り敢えず頭に浮かんだことを伝える。
『・・・ええ。らしいわねぇ』
ユヴェーレンもなんと言えば良いか分からなかったようだ。当人のアバドンが説明しないとどうしようもない。
『いやいや!そんなことはどうでも良いだろうっ!?今はそんな話をしているところではない!!』
突如脳内で響いた大声に顔を顰める。咄嗟に両耳を塞いだが、念話だと意味はないことに気付き腕を下ろした。続けて世界樹がテンション高くツッコミを入れる。
『そもそも先ほどからそこの悪魔は何をしているのだ!?』
世界樹は話を聞いていなかったのか?ハムを作っていると言っていたではないか。念話だから耳が遠いという現象は起きないはずだが・・・。世界樹にも難聴という症状が出ることがあるのか?先ほど状態異常の解除はしても、難聴とかは状態異常には扱われないのか・・・。
『おい!そこの人間!今、物凄く失礼なことを考えていただろう!?』
「・・・気のせいだ」
『その間は何だ!?』
めんどくさいなこの人。あ、人じゃないや。
『あ、今めんどくさいって顔をしたな!?』
何だよ本当にこの木。やれやれ。首を左右に振って溜息を吐くと、さらにぎゃんぎゃんと騒ぐ声が脳内に響く。
『結界を解除してやらないのか?』
逸らした顔をズィーリオスに向け、俺はチラリとアバドンを確認する。アバドンの手の位置が先ほどよりも腰のあたりまで下がっており、相変わらず無表情でズィーリオスを見ていた。2人の間で一体どんな念話が繰り広げられているんだ?本当に無言の可能性もあるけど。
『なんか、結界を解除するのが癪なんだよなー』
ズィーリオスが心底ダルそうに答えた。
『それに、自力で出て来れるくせに出て来ないってのもウザイ』
・・・ただいまのズィーリオスはご機嫌斜めのようだ。ハムが嫌いなのだろうか?
「ハム嫌い?」
ただ疑問を聞いただけなのに、返答はなく、ズィーリオスが溜息を吐いてアバドンから視線を逸らした。え、酷い。やっぱりズィーリオスは今機嫌が悪いに違いない!先ほどはそうでもなかったのに・・・。これはアバドンのせいだな。
『アバドン!さっさと自分で出て来いよ!』
だから、つい非難めいた声音になってしまったのは仕方ない。だが、アバドンは俺の言葉を字面のまま受け取ったらしい。なんともなさげに状況を説明しだした。
『いや、結界を壊したいのはやまやまなんだが、そうすると結界の・・・。まあ、いいや。分かった』
・・・マジでアバドンは何がしたかったんだろう?何かを言おうとしていたが、何故か取りやめて結界を自力で出て来ることにしたようだった。結界の側を離れて再び白い煙の中へ姿が消えていく。後片付けでもいているのか?終わったら勝手に出て来るだろう。
アバドンに向けていた顔をユヴェーレンの方角に戻す。さて、なんの話をしていたんだっけ?
『なあ、闇の王の契約者は私の扱いが酷くないか?世界樹ぞ?世界樹と話しができる人は、エルフの巫女と呼ばれる者だけで、とても名誉なことなのに淡泊過ぎやしないか!?』
なんともまあ、お喋りな木である。そんなにお喋りが大好きなら、巫女の人はとても大変だろうな・・・。遠い目をして、長話に付き合う巫女の苦労に同情していると、ズィーリオスが欠伸混じりに話を変えて来た。
『もう十分元気になったようだし、俺たちもそろそろ行かないか?』
「そうだな」
ズィーリオスはきちんと空気を読んでくれたな。ズィーリオスにもスルーされた世界樹が「なっ、なっ、なっ!」しか言わないボットと化したが、俺たちが去った後には元通りになっていることだろう。
周囲の気配を探ってみると、エルフの国がある方角から複数の人の気配がこちらに向かっているのが分かった。距離があるためすぐには到着しないが、世界樹のすぐ側でアバドンが燻製をしていたことだけはバレてはいけない。ただの感だが、こちらに向かっている一行の中にあの王子がいる気がするのだ。
「そういう訳だから俺たちは行く。ここにエルフが来るだろうけど、アバドンの正体については黙っておいてくれよ?」
『・・・・何なのだ、全く・・・。そんなことは分かっておる。この地の者達に悪魔の存在を知らせたところで混乱を引き起こすだけだ』
世界樹に向かって告げると、溜息を吐きながらも了承の返事が返って来た。これで、エルフたちにアバドンのことがバレる可能性はなくなった。そして、タイミングよく結界が割れる音が響き渡る。
立ち上がりながら振り返ると、白い煙が半球の形を失いながら広がって行った。発生源が片付けられたおかげで、白い煙は広がる度に薄く消えていく。後は風が拡散していってくれることだろう。首をズィーリオスに向けようとした時、アバドンが思い出したという声を上げた。
まだ何かあるだろうか?アバドンに振り返ると、丁度次元収納から何かを取り出したところであった。
「これ。お前らがいない間に見つけたんだけど」
そう言って見せられた物は、まるでお香の入れ物のようであった。見たことはないなー。使用目的が分からない。
『それ・・・!?』
しかし、そのお香を見た途端、ズィーリオスが驚愕の声を上げた。ズィーリオスは何かを知っているようだ。森の中に不釣り合いなお香は、明らかに人工物である。エルフたちが使っているものだろうか?
『以前、ハーデル王国の王城の敷地内で見たことがある』
「ッ!?」
ハーデル王国の王城だと!?そんな高価なものが何故ここに?
『その時、リュゼの弟が“人払いの香”だと言っていた。裏社会では極々一般的で簡単に手に入る代物だと。特に、裏ギルドが連中が良く使う道具らしい・・・』
裏ギルド。
ここでその名が出て来るか。ユヴェーレンに牽制して出て来ないようにしたというのに。これでは、裏ギルドの可能性が一段と増したじゃないか。本当に裏ギルドなのだろうか。こんな遠くまで勢力を展開しているなんて考えてもいなかった。世界樹にまで手を出していたなんて。
「他にもあるぞ?森にあるのは違和感があったからな。一応回収しておいた」
そう言ってアバドンが見せて来たのは、太さが5センチメートルほどもあるCの形の腕輪だった。厚さは1センチメートルもないぐらいであるが、金属で出来ており、とても存在感がある。更に、腕輪にはこれ見よがしに罅の入った魔石が埋め込まれており、これが使用済みの魔道具であることが分かったのであった。
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