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8日目(菜園)

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 彼女の名はラフィ。
 今日は屋敷の屋上に来ていた。


「トマト、キュウリ、ナス……どれも瑞々しく育ってくれてますね」

「――ほう、家庭菜園ですか」

 ボコボコ。


「あなたは……」
「どうも、僕です」

 そう言って、男はモグラのごとく土中からニコリとほほ笑んだ。


「ただの趣味です。たいしたものではありません」
「そう謙遜せずに。屋上に菜園なんて風情がありますね」
「(……もはやこの人が現れても驚かなくなっている自分が少し恐い)」

「それで、今日は何用です?」
「もちろん、貴女あなたを落としにきました」
「言うと思いました」
「というと、心の準備はできていると?」
「そんなわけないでしょう。それより、せっかくですから味見でもどうです?」
「僕でいいのですか?」
「ええ。では、このトマトをどうぞ」
「おお、新鮮そう」
「そのままカブりついて大丈夫です」
「では遠慮なく。いただきます」

 ガブッ。モグモグ。

「どうですか?」
「とてもおいしいです」
「それはよかったです」
「これはなにかお礼をしませんと。そうだ、実は僕も野菜を育てているんです。ぜひ味見してみてください」
「あら、なんの野菜ですか?」
「ナスビです。今もこの股間に――」

 ゴソゴソ。

「キャア! やめなさい! このバカ!」
「ハハハ。しからば」

 シュバッ。




「…………な、ナスビ///」
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