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「やっと出られたぜ!!」
そう言って、出てきたのは【白いウサギ】
「オレっちをどんだけ閉じこめんだ!このスカポンタン!!」
首をコキコキと鳴らし、肩を回している。
ボクはアングリと口をを開けたまま、それを眺めていた。
ひととおり体のほぐれたらしい彼(?)は
「ナニ、アホ面さらしてんだ?これ以上アホになりたいのか?」
無遠慮にボクをのぞき込む。
「ボクは、アホじゃない!!」
【ヤられた!】叫んだ途端、そう感じた。
まんまと彼のペースにのせられ、声を荒げてしまったボクは『悔しい…クソウサギが!!』キッ!!と彼を睨みつける。が。
ニヤリ…勝ち誇ったようにふんぞり返るウサギ。でも、その毛はもふもふしていて、すごく気持ち良さそうだ。
何気なく彼を見回し、そして、ハタと気づく。
「君って、もしかして…ボクの部屋にいたうさぎのぬいぐるみ?」
ウサギは、ヤレヤレといった素振りで、腰に手をやった。
「そうだよ!やっと気づいたが、バカめ!!いつもほっとくから、ひまで、暇で…。面白そうだから、ついてきてやった」
悪びれもせず言い放つと、当然とばかりに白い胸を張る。
なんか、正体がわかってしまうと、あっけない。ムキになって怒るのも、なんだか虚しくなり、ボクは静かに口を開いた。
「入っていたものは、どうしたの?」
そんなボクの変化に、はじめは首をひねり戸惑いをみせていたウサギだったが。
「オレっちが入るのに邪魔だったから捨てた」
やがて、素直(?)に答える。
「どこに?」
「君の部屋さ。勝手に捨てると怒ると思ったから、キチンと部屋に戻しておいた!だから大丈夫さ。帰ったら、ちゃんと食べられる!!」
えっヘン!! ドヤ顔する姿に
「ナニ勝手に捨ててんだよ!!バカウサギ!!」ブチ切れた。
「それにボクは、もう、あの家には帰らない。帰るつもりは無いんだ!!」
「えっ!マジ!?」
慌てふためく。
「マジで、本当に…帰らないのか?」
頷いて肯定の意を表する。
「母さんたち、心配するぞ」
「しないよ!!…あの人たちがボクの心配なんてするわけない!!」
「メシはどうするんだ?それに…風呂や寝る場所は?」
「それは、これからアオさんと交渉して…」しどろもどろを誤魔化すように
「って…うるさいぞ!バカウサギ!!…ボクに指図するな!!」
声を張り上げる。
「オレはバカウサギって名前じゃない。ピョン太だ。それに、君が帰らないなら、 オレも帰れないじゃないか」
「そんなの、君が勝手についてきたんだろう?また勝手に帰ればいい!!」
言い合いを続けるボク達。
「まぁ、二人とも座れや」
エキサイトして、いつの間にか立ち上がっていたらしい。ボクは言われた通りに、腰を下ろす。
ところが、今まで目に入っていなかったのか?ピョン太は、アオさんを見て、固まる。瞳を大きく見開いたまま、凝視していた。
次の瞬間、よろよろとボクの前に躍り出ると
「やい、鬼!!お前なんが、ちっとも怖くないぞ!!…お前の相手はこのオレだ」怒鳴った。
鍋の上にあった【お玉】片手に意気込んでいるけど、その足は小刻みに震えていた。
「ちょっ…ちょっと、タィム!アオさんはそんな人じゃないよ!!」
ピョン太がしているであろう誤解を解こうと試みる。
一般的に【鬼=人を襲う】と思われている。ある意味、仕方のないことなのかもしれない。
だって、子供の頃に聞かされるお話(代表作は、やはり【〓〓たろう】だろう)は、こぞって鬼は悪役なのだから。げんにボクもさっきまでそう思っていた。
しかし、なんにでも例外はある。
そして、アオさんは確実にその例外なのだ。
ボクの中の第六感的な何かが、【彼は信用できる人だ】と、告げていた。
ボクはあくまで、その感覚に従っただけ。特に、大それたことはしていない。
当たり前だけど、ボクとピョン太は別々の人間なわけで…。
残念だけど、ボクの価値観をピョン太に押しつけるわけにはいかない。
ピョン太にはピョン太の考えがある。
そう頭ではわかっているのだが…。
「そう言ったって、鬼だぞ【鬼!!】信用できるわけナイだろ!!」
目の前で否定されると、反論したくなる。
激昂したボクが、赤い顔で怒声をくりだそうとしていると
「お前も食うか?」
アオさんが割りこむ。
「信じてくれねーかもしれねーが、オラは人間、食わねーよ。獣じゃねーからな。でもお前さんのいいぶんもわかる。確かにオラは鬼だ。簡単に信用できる相手じゃねー。だから、お前さんが自分で見極めたらどうだ?お前さんが、やっぱり信用できねーって判断した時には、オラの寝首をかいたらええ(良い)」
「そんな調子のいいこと言って、寝首かきに近づいた途端、ガブリっ!!ってヤツじゃないのか?」
なおも噛みつくピョン太に対し
「そんなことしねーよ。なんもメリットねーしな!だども、そこは、信じてもらうほかねーなぁ」
弱ったように、ポリポリと頭を掻いた。
..*+☆.**+☆+*..
こうして奇妙な三人の生活が始まる。
そう言って、出てきたのは【白いウサギ】
「オレっちをどんだけ閉じこめんだ!このスカポンタン!!」
首をコキコキと鳴らし、肩を回している。
ボクはアングリと口をを開けたまま、それを眺めていた。
ひととおり体のほぐれたらしい彼(?)は
「ナニ、アホ面さらしてんだ?これ以上アホになりたいのか?」
無遠慮にボクをのぞき込む。
「ボクは、アホじゃない!!」
【ヤられた!】叫んだ途端、そう感じた。
まんまと彼のペースにのせられ、声を荒げてしまったボクは『悔しい…クソウサギが!!』キッ!!と彼を睨みつける。が。
ニヤリ…勝ち誇ったようにふんぞり返るウサギ。でも、その毛はもふもふしていて、すごく気持ち良さそうだ。
何気なく彼を見回し、そして、ハタと気づく。
「君って、もしかして…ボクの部屋にいたうさぎのぬいぐるみ?」
ウサギは、ヤレヤレといった素振りで、腰に手をやった。
「そうだよ!やっと気づいたが、バカめ!!いつもほっとくから、ひまで、暇で…。面白そうだから、ついてきてやった」
悪びれもせず言い放つと、当然とばかりに白い胸を張る。
なんか、正体がわかってしまうと、あっけない。ムキになって怒るのも、なんだか虚しくなり、ボクは静かに口を開いた。
「入っていたものは、どうしたの?」
そんなボクの変化に、はじめは首をひねり戸惑いをみせていたウサギだったが。
「オレっちが入るのに邪魔だったから捨てた」
やがて、素直(?)に答える。
「どこに?」
「君の部屋さ。勝手に捨てると怒ると思ったから、キチンと部屋に戻しておいた!だから大丈夫さ。帰ったら、ちゃんと食べられる!!」
えっヘン!! ドヤ顔する姿に
「ナニ勝手に捨ててんだよ!!バカウサギ!!」ブチ切れた。
「それにボクは、もう、あの家には帰らない。帰るつもりは無いんだ!!」
「えっ!マジ!?」
慌てふためく。
「マジで、本当に…帰らないのか?」
頷いて肯定の意を表する。
「母さんたち、心配するぞ」
「しないよ!!…あの人たちがボクの心配なんてするわけない!!」
「メシはどうするんだ?それに…風呂や寝る場所は?」
「それは、これからアオさんと交渉して…」しどろもどろを誤魔化すように
「って…うるさいぞ!バカウサギ!!…ボクに指図するな!!」
声を張り上げる。
「オレはバカウサギって名前じゃない。ピョン太だ。それに、君が帰らないなら、 オレも帰れないじゃないか」
「そんなの、君が勝手についてきたんだろう?また勝手に帰ればいい!!」
言い合いを続けるボク達。
「まぁ、二人とも座れや」
エキサイトして、いつの間にか立ち上がっていたらしい。ボクは言われた通りに、腰を下ろす。
ところが、今まで目に入っていなかったのか?ピョン太は、アオさんを見て、固まる。瞳を大きく見開いたまま、凝視していた。
次の瞬間、よろよろとボクの前に躍り出ると
「やい、鬼!!お前なんが、ちっとも怖くないぞ!!…お前の相手はこのオレだ」怒鳴った。
鍋の上にあった【お玉】片手に意気込んでいるけど、その足は小刻みに震えていた。
「ちょっ…ちょっと、タィム!アオさんはそんな人じゃないよ!!」
ピョン太がしているであろう誤解を解こうと試みる。
一般的に【鬼=人を襲う】と思われている。ある意味、仕方のないことなのかもしれない。
だって、子供の頃に聞かされるお話(代表作は、やはり【〓〓たろう】だろう)は、こぞって鬼は悪役なのだから。げんにボクもさっきまでそう思っていた。
しかし、なんにでも例外はある。
そして、アオさんは確実にその例外なのだ。
ボクの中の第六感的な何かが、【彼は信用できる人だ】と、告げていた。
ボクはあくまで、その感覚に従っただけ。特に、大それたことはしていない。
当たり前だけど、ボクとピョン太は別々の人間なわけで…。
残念だけど、ボクの価値観をピョン太に押しつけるわけにはいかない。
ピョン太にはピョン太の考えがある。
そう頭ではわかっているのだが…。
「そう言ったって、鬼だぞ【鬼!!】信用できるわけナイだろ!!」
目の前で否定されると、反論したくなる。
激昂したボクが、赤い顔で怒声をくりだそうとしていると
「お前も食うか?」
アオさんが割りこむ。
「信じてくれねーかもしれねーが、オラは人間、食わねーよ。獣じゃねーからな。でもお前さんのいいぶんもわかる。確かにオラは鬼だ。簡単に信用できる相手じゃねー。だから、お前さんが自分で見極めたらどうだ?お前さんが、やっぱり信用できねーって判断した時には、オラの寝首をかいたらええ(良い)」
「そんな調子のいいこと言って、寝首かきに近づいた途端、ガブリっ!!ってヤツじゃないのか?」
なおも噛みつくピョン太に対し
「そんなことしねーよ。なんもメリットねーしな!だども、そこは、信じてもらうほかねーなぁ」
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..*+☆.**+☆+*..
こうして奇妙な三人の生活が始まる。
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