側妃が欲しいのですか? 言い訳は聞きたくありません

みみぢあん

文字の大きさ
16 / 23

15話 苦い薬湯茶3

 夫のマクシミリアンはベアトリスの前で… まるで子供が悪戯いたずらをするように、部下のファゼリー伯爵に苦い薬湯茶やくとうちゃを飲ませた。
 このようなお遊びが出来るのも、2人の間にしっかりと信頼関係が築かれている証拠である。


「……」
 やれやれ… 時々、マクシミリアン様は側近たちに意地悪をして揶揄からかうのよね… 今日のファゼリー伯爵は、運が悪かったわ。ちょうどマクシミリアン様が、薬湯茶やくとうちゃを飲んだ後にあらわれたから。

 ベアトリスが苦笑を浮かべていると… 薬湯茶を一口飲んだファゼリー伯爵が何やら考え込みながら、ジッ… と薬湯茶を見つめている。

「エドガー、遠慮するな! 全部飲みせ! このお茶はくのだそうだ」
 追い打ちをかけるように、マクシミリアンが苦い薬湯茶をもっと飲めと、ファゼリー伯爵にすすめた。

 ファゼリー伯爵はマクシミリアンの言葉を軽く聞き流して……
「殿下… 実は緊急の案件がもう一つありまして、人払ひとばらいをしていただけますか?」

「んん?」
「お願いします、殿下!」 

「皆、下がって良い!」
 マクシミリアンは伯爵に深く理由は聞かず、使用人たちを退出させる。

 使用人たちを下がらせてまでする話なら、きっと深刻しんこくな話し合いになるだろうと… ベアトリスは気をきかせて、自分も使用人たちと一緒に退出しようと席を立った。

「では殿下、私も失礼します…」
 私がそばにいると、2人の邪魔になりそうだから… 

「出来れば妃殿下にも、ご相談したいのですが…?」
 退出しようとしたベアトリスは、意外にもファゼリー伯爵に引き止められる。

「私もですか…?」
「はい、妃殿下」

「わかりました」
 何かしら…? ファゼリー伯爵とは、普段から親しくお話ししたことが無いから、どんなお話を聞かされるのか… まったくわからないわ。

 ファゼリー伯爵はまじめで冷静沈着れいせいちんちゃく無駄口むだぐちも少なく、マクシミリアンへの忠誠心も厚い。
 だが、伯爵に鋭い視線を向けられると、心の内側まで見透みすかされてしまいそうな、居心地いごこちの悪さを感じさせられる人物である。
 そんな印象を持っているため… ベアトリスはファゼリー伯爵のことが少し苦手なのだ。

 伯爵の要望にこたえるため、ベアトリスは黙って腰を下ろす。



 朝食室から使用人たちが退出し、3人だけになると… ファゼリー伯爵が口を開いた。


「殿下、妃殿下… 恐れながらこのお茶は、私の記憶が正しければ避妊ひにん用の薬湯茶です」

「……っ?!」
 薬湯茶が避妊ひにん用ですって…? 今のは聞き間違いかしら?!



 に効くお茶のはずが、に効くお茶だと聞かされ… ベアトリスは自分の耳を疑った。





あなたにおすすめの小説

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。 けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。 それでも旦那様は優しかった。 冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。 だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。 そんなある日、彼女は知ってしまう。 旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。 彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。 都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る 静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。 すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。 感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

【完結】探さないでください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。 貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。 あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。 冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。 複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。 無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。 風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。 だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。 今、私は幸せを感じている。 貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。 だから、、、 もう、、、 私を、、、 探さないでください。

【完結】婚約破棄される前に察して距離を置いていたら、幼なじみの第三王子が本気になっていました〜義妹と元婚約者? もう過去の人です〜

井上 佳
恋愛
婚約者に裏切られた侯爵令嬢は、 嘆くことも、復讐に走ることもなかった。 彼女が選んだのは、沈黙と誇り。 だがその姿は、 密かに彼女を想い続けていた第三王子の心を動かす。 「私は、国よりも君を選ぶ」 婚約破棄、王位継承、外交圧力―― すべてを越えて選び取る、正統な幸福。 これは、 強く、静かな恋の物語。 2026/02/23 完結

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)