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21話 衝撃2
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晩餐の席から自室にもどり、アルフレッド様が用意させた温かいお茶を飲みながら、私は心を落ち着けようとした。
…だが、どうしても私の弟ティエリーが『お父様の子ではない』 …という衝撃的な事実を受け止めきれずにいた。
「ティエリーは… 天使だわ。 可愛くて素直で… あの子といるだけで心が癒されて… 私の弟ではないなんて、信じられない」
「マリオンは愛していたんだな」
「ええ… だって、スリンドン子爵家であの子だけが、私を愛してくれたから」
「…そうか」
「こんなに大切なことを… なぜ教えてくれなかったの?! 私に配慮してくれたのはわかります。 でも、私のことを知らないうちに決められるのは、嫌だわ!」
2人っきりになった気安さから、私は癇癪を爆発させた。
アルフレッド様はハッ… と息をのみ、後悔の表情を浮かべる。
10年前、一方的に婚約を解消したことを思い出したのだろう。
「すまない、オレも今はそう思う。 もっと早く言うべきだった」
「もう2度としないで下さい」
「約束する」
アルフレッド様は私の手を取りキスを落とし… 私の顔をジッ… と見つめた。
「実はマリオン… まだ君に話していないことがある」
「…何ですか?」
「スリンドン子爵は君をつれもどして、婿養子をとらせようと考えているらしい」
「あの人は、そんなバカなこと考えていたの?!」
私がお父様のせいで、醜聞まみれになっていたことを忘れているのね。
「それと… 君の弟ティエリーは母親のローザ嬢に引き取りを拒否されて… スリンドン子爵は怒りのままに孤児院に入れたそうだ」
私は言葉を失った。
「……っ!」
いくら血がつながっていなくても… お父様がそこまで恥知らずだとは思わなかった。 あんなに溺愛していたティエリーを、お父様はすてたの?! 何の罪もない小さな子を!!
自分の父親がそこまで薄情な人間だったと知り… 涙が出た。
「マリオン」
「…アルフレッド様… 私は…っ…」
「弟をむかえに行くか?」
「…え?!」
アルフレッド様… それは?
「ティエリーを引き取ってオレたちの養子にすればいい」
「本当に…?」
「ああ、ティエリーは君の家族だろう? だったらオレの家族だ」
何も心配はいらないとアルフレッド様は笑う。 …私は立ちあがり、アルフレッド様の前でひざまずき手を取った。
「アルフレッド様…… アルフレッド様、心から感謝します。 ありがとうございます!」
「やめてくれ、マリオン! オレの前にひざまずくなんて…」
あわてたアルフレッド様はひざまずく私を抱きあげ、自分の膝にのせて、そのまま絨毯の上に座る。
「でも本当に… 本当に… 嬉しくて… 私… 何てお礼を言えば良いかわからないわ」
「マリオンはオレの妻になるから… 君が喜ぶことをするのは当然だよ」
「アルフレッド様…!」
感謝の気持ちを込めて、私は何度もアルフレッド様の男らしい頬や額にキスをした。
顔をうっすらと染めたアルフレッド様は、嬉しそうに笑いながら私の唇にキスを返してくれる。
「ああああ―――… 本当にオレはバカだったよ。 君と婚約を解消するなんて… 10年前のオレの尻を蹴り飛ばしてやりたい」
「……ふふっ…」
10年も放置されたすえに、私の前に突然あらわれたアルフレッド様に… 心のどこかでモヤモヤと不信感を持っていた。
…でも、ようやく私の心は綺麗に晴れた気がする。
※次回で最終話です。
…だが、どうしても私の弟ティエリーが『お父様の子ではない』 …という衝撃的な事実を受け止めきれずにいた。
「ティエリーは… 天使だわ。 可愛くて素直で… あの子といるだけで心が癒されて… 私の弟ではないなんて、信じられない」
「マリオンは愛していたんだな」
「ええ… だって、スリンドン子爵家であの子だけが、私を愛してくれたから」
「…そうか」
「こんなに大切なことを… なぜ教えてくれなかったの?! 私に配慮してくれたのはわかります。 でも、私のことを知らないうちに決められるのは、嫌だわ!」
2人っきりになった気安さから、私は癇癪を爆発させた。
アルフレッド様はハッ… と息をのみ、後悔の表情を浮かべる。
10年前、一方的に婚約を解消したことを思い出したのだろう。
「すまない、オレも今はそう思う。 もっと早く言うべきだった」
「もう2度としないで下さい」
「約束する」
アルフレッド様は私の手を取りキスを落とし… 私の顔をジッ… と見つめた。
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「…何ですか?」
「スリンドン子爵は君をつれもどして、婿養子をとらせようと考えているらしい」
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私がお父様のせいで、醜聞まみれになっていたことを忘れているのね。
「それと… 君の弟ティエリーは母親のローザ嬢に引き取りを拒否されて… スリンドン子爵は怒りのままに孤児院に入れたそうだ」
私は言葉を失った。
「……っ!」
いくら血がつながっていなくても… お父様がそこまで恥知らずだとは思わなかった。 あんなに溺愛していたティエリーを、お父様はすてたの?! 何の罪もない小さな子を!!
自分の父親がそこまで薄情な人間だったと知り… 涙が出た。
「マリオン」
「…アルフレッド様… 私は…っ…」
「弟をむかえに行くか?」
「…え?!」
アルフレッド様… それは?
「ティエリーを引き取ってオレたちの養子にすればいい」
「本当に…?」
「ああ、ティエリーは君の家族だろう? だったらオレの家族だ」
何も心配はいらないとアルフレッド様は笑う。 …私は立ちあがり、アルフレッド様の前でひざまずき手を取った。
「アルフレッド様…… アルフレッド様、心から感謝します。 ありがとうございます!」
「やめてくれ、マリオン! オレの前にひざまずくなんて…」
あわてたアルフレッド様はひざまずく私を抱きあげ、自分の膝にのせて、そのまま絨毯の上に座る。
「でも本当に… 本当に… 嬉しくて… 私… 何てお礼を言えば良いかわからないわ」
「マリオンはオレの妻になるから… 君が喜ぶことをするのは当然だよ」
「アルフレッド様…!」
感謝の気持ちを込めて、私は何度もアルフレッド様の男らしい頬や額にキスをした。
顔をうっすらと染めたアルフレッド様は、嬉しそうに笑いながら私の唇にキスを返してくれる。
「ああああ―――… 本当にオレはバカだったよ。 君と婚約を解消するなんて… 10年前のオレの尻を蹴り飛ばしてやりたい」
「……ふふっ…」
10年も放置されたすえに、私の前に突然あらわれたアルフレッド様に… 心のどこかでモヤモヤと不信感を持っていた。
…でも、ようやく私の心は綺麗に晴れた気がする。
※次回で最終話です。
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