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1話 屈辱の初夜
しおりを挟む「マリエル、私は君を愛す気はないから、君も私に愛情は求めないでくれ!」
結婚初夜に夫のギリス・モリダールは、いきなりそんな非常識なことを、新妻のマリエルに宣言した。
寝室のベッドに座り、ギリスの話を聞いていたマリエルは、眉間に深いしわをつくり非常識な夫をにらんだ。
「旦那様? それならあなたは、何のために私と結婚したのですか?」
この人… まさか愛人でもいるのかしら? 嫌だわ! 私はそんな人と結婚してしまったの?!
マリエルの瞳は冷たく光り… 他人に物静かでおだやかな印象をあたえる姿からは、想像もつかないほど厳しい声音で、非常識な夫ギリスにたずねた。
「騎士団の上司に、“相手を紹介するから、結婚しろ” …と、何度もうるさく言われて…」
「上司? 上司とは… 王立騎士団の副団長、セイン・ガルフェルト侯爵様のことですわね?」
「ああ、そうだ!」
「……っ」
セインさまは… そんなに私を、誰かに嫁がせたかったの?!
マリエルがギリスと結婚したのも… 元騎士だった父親タムワース男爵の元上司、王立騎士団の副団長、セイン・ガルフェルト侯爵に紹介されたからだった。
『伯爵家出身のギリス・モリダールは、私の部下の中でも、とても有能な騎士だが、女性を口説くのが下手な男なんだ… だから、マリエルが結婚してやってくれないか? 年齢もちょうどつりあうし、君ならギリスを上手く扱えるはずだから…』
『でも、セインさま… 私は……』
“あなたを初めて会った時から愛していました“ …とはマリエルもさすがに言えなかった。
『マリエル… 君は亡くなったお母上の代わりに、双子の弟たちを立派に育てあげた! 今度は君が幸せになる番だよ? どうか自分の幸せをあきらめないで欲しい!』
初恋の男性、セイン・ガルフェルト侯爵は、離婚して現在は独身だが、マリエルとは14歳の年齢差があり… 年齢以上に身分の格差が大きく、貧乏な男爵令嬢のマリエルの愛を、実らせるのは絶望的だった。
愛する人にすすめられた縁談を、受け入れるのは自分の運命かもしれないと、マリエルは結婚を承諾したのだ。
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