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11話 ギリスの移籍

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 ギリスが以前から希望していた近衛騎士団(セインの古巣ふるす)へ移籍いせきできるよう、 セインは推薦状すいせんじょうを出した。
 それが通り、正式にギリスは近衛騎士団への移動が決まる。


「ありがとうございます、副団長!」
「礼を言うのは、まだ早いぞギリス…」 
「いえ、副団長が推薦すいせんしてくれただけでも、ありがたいです!!」

「お前がそうやって、喜んでいられるのも、今のうちだけかもしれない… 本当に良いのか?」

 ギリスはもっと出世できると喜んでいるが… セインはギリスの顔を見るのが嫌で、王立騎士団から追い払うつもりで、近衛騎士団に推薦した。 

「ギリス、何度も言うが… 私が知るかぎり、お前に近衛騎士団は不向ふむきな場所だ! 今までのように、気楽にやれるとは思うなよ? 本当に良いのか?!」
 今まで、可愛がって育ててきたやつだから… 一応、忠告だけはしてやろう。
 だが… 私はこれ以上、お前の面倒を見る気はない。

「当然です! 副団長が推薦してくれるなら、喜んで行きます!」

「お前に、そこまで自信があるのなら、2王立騎士団には戻って来るなよ? お前には戻る場所はないと、覚悟して移籍いせきしろ! 良いな、ギリス?」

 近衛に移籍したら、文字通り2度と王立騎士団では、ギリスを受け入れないという、セインの意志表示だが… どうやらギリスは、自分への𠮟咤激励しったげきれい勘違かんちがいしているらしい。

「もちろんそのつもりです、副団長! 戻る気などありませんし… 戻れと言われても、王立騎士団には戻らないとお約束します!」

「今のその言葉を、忘れるな!」
 これは私の一方的な八つ当たりだと、わかってはいるが… お前はマリエルを傷つけた! それがどうしても許せない。
 お前は目障めざわりなんだよギリス! だから2度とここには、戻ってくるな!!


「王族や外国からの客を警護する… 近衛騎士団は王国の騎士団の中では花形だが、特殊とくしゅな騎士団だ! そうやって目立つぶん、特別な気づかいを要求される」

「はい、理解しています!」

「そうか…? なら私には、言うことは無い! 下がって良いぞ、ギリス!」
 いや、ギリス! お前は何もわかっていないさ! 王族というのはこの王国で、もっとも我がままな人種のことだと… お前はわかっていない。
 私が王国騎士団の騎士団長候補に指名され、近衛騎士団をようやく辞められると思った時は、どれほど喜んだことか! お前はそのことを、知ろうともしない。 
 

「今までお世話になりました、副団長!」

「・・・・・・」
 プライドの高いお前は、あっという間にボロボロにされるはずだ。   
 だが、その道をお前自身が、選んだのだから… まぁ、それでも本望だろう…?


 執務しつむ室を出て行く、ギリスの後ろ姿をながめながら… セインの顔に、意地の悪い笑みが浮かんだ。





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