君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん

文字の大きさ
19 / 23

18話 ギリスの思惑 ギリスside

しおりを挟む
 侯爵家の執事にギリスは追い出され… ブツブツと口汚くののしりながら、ガルフェルト侯爵邸の玄関ホールを出た。


「クソッ…! なんでこの私が、執事ごときに追い返されなければ、いけないんだ!! 王立騎士団の執務室へ来いだって?!」

 門へ向かうとちゅうでギリスはピタリッ… と足を止めた。
 
「いや、ここで簡単に帰ってはダメだ! 絶対、団長に会わなければ… 私が会いに来たことを、あの執事が団長に、伝えていないに決まっている!」
 王立騎士団時代、団長は私に口では厳しいことを、言っていたが… 本当は私の実力を認めていて、近衛にまで推薦すいせんしてくれたんだ! 今は会わないだなんて… 団長がそんな薄情はくじょうなことを、言うはずがないだろう?!
 生意気なまいきな執事だ!! あんなやつはクビにするよう、団長に忠告してやろう!

 執事に追い払われたギリスは、あきらめられずに屋敷の裏庭へまわり、こっそりと敷地の奥へ入ってゆく。


「クソッ!」
 せっかく近衛騎士団へ移籍いせきしたのに… あの性悪で我がままな王女のせいで、今までの苦労が全部ムダになったじゃないか!
 だが、私はこんなところで、終わるような人間じゃないからな?!
 もう一度、王立騎士団へ戻って、今度は王立騎士団の騎士団長になってやる! 私の能力なら、絶対に出来るはずだ! 私は他の凡人ぼんじん騎士たちとは違う!! 

 玄関前の大きな庭は、左右対称に整然と花や木を並べた整形庭園だが…
 小さな裏庭は、庭師ガーデナーたちが田舎にあるガルフェルト侯爵領で採取した、草花やハーブを育てて、丁寧ていねい移植いしょくし、マリエルの好みにあわせた、田舎道をイメージして作られている。

 そんな裏庭の道端みちばたで咲く、白や黄色の小さな草花たちを… ギリスは何の躊躇ちゅうちょもなく、乱暴にみつぶして庭の奥へとすすんだ。
 
「とにかく! 副団長…」
 …ではなくて、騎士団長に直接会って、王立騎士団への復帰を認めてもらわないと! それまで私は、何もできないじゃないか?!」



 クスクスと笑う人の声がどこかから聞こえ、ギリスはピタリッ… と足を止めた。
 どこから声が聞こえるか、キョロキョロとまわりを見まわすと…

「あっちか?!」
 道ではない木と木のあいだを、ガサガサと強引にかき分けて抜け、奥に石造りのあずま屋ガセボを見つけた。

 騎士団長のセインは、ギリスに背中を向けて座っていたが、その隣で、ミントグリーンの軽やかなドレスを着た、滅多めったに見ない美しい貴婦人が立っている。

「誰だ…、あの女性は?!」
 確か騎士団長は、私がすてたタムワース男爵家のマリエルと結婚したと聞いたが…? あれは聞き間違いだったのか?!

 ギリスは自分の記憶にある、マリエルを思い出す。


 結婚前のマリエルは、貧乏男爵家を支えるために、自分のことはいつも後回しにして、双子の弟たちを優先していたため……
『お母さまのドレスは、良い生地を使っているから… まだまだステキだわ!』 
 ドレスも亡くなった母親が、若いころ着ていた流行おくれの古い物を、マリエルは自分でつくろい直して着たりと、質素しっそで化粧っけもなかった。

 以前のマリエルはギルスの目に…
『頬や身体もせて、なんて貧相ひんそうな娘なんだろう…?!』
 …という姿に見えていた。

 だが、今ギリスの視線の先にいる貴婦人は、自分を溺愛できあいする夫を喜ばせるために…
『マリエルはそういう色が、似合うなぁ? 綺麗な瞳が、もっと輝いて見えるよ!』    
 愛する夫がめた、淡い色のドレスを着て、薄く化粧をした美しい姿だった。 


 セインと貴婦人がいるあずま屋ガセボまで、ギリスがもう少し近づくと、何を話しているのかが、はっきり聞こえた。

「マリエル、久しぶりに観劇かんげきに行かないか?」
「まぁセイン! 今は、お忙しいのでしょう? 無理はしないでくださいな?」

「いいかい、マリエル…? 君の夫は、子育てに奮闘ふんとうする妻をねぎらうために、観劇へ連れて行けないほど、無能な男ではないよ?」
 夫は、子育てを乳母まかせにしない生真面目きまじめな妻を、疲れはててしまわないかと、心配しているのだ。

「嬉しいわ、セイン!」



「・・・っ?!」
 マリエル?! まさか… あの女なのか?! 本当にあの貧乏な男爵令嬢なのか?!

 ギリスは信じられないと… 目をむいた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたとの縁を切らせてもらいます

しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。 彼と私はどうなるべきか。 彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。 「あなたとの縁を切らせてください」 あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。 新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。 さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ ) 小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。

諦めていた自由を手に入れた令嬢

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢シャーロットは婚約者であるニコルソン王太子殿下に好きな令嬢がいることを知っている。 これまで二度、婚約解消を申し入れても国王夫妻に許してもらえなかったが、王子と隣国の皇女の婚約話を知り、三度目に婚約解消が許された。 実家からも逃げたいシャーロットは平民になりたいと願い、学園を卒業と同時に一人暮らしをするはずが、実家に知られて連れ戻されないよう、結婚することになってしまう。 自由を手に入れて、幸せな結婚まで手にするシャーロットのお話です。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

須木 水夏
恋愛
 大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。 メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。 (そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。) ※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。 ※ヒーローは変わってます。 ※主人公は無意識でざまぁする系です。 ※誤字脱字すみません。

いくつもの、最期の願い

しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。 夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。 そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。 メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。 死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。 「俺はお前を愛することはない!」 初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。 (この家も長くはもたないわね) 貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。 ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。 6話と7話の間が抜けてしまいました… 7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!

白い結婚をご希望ですか? 良いですよ。私はジャガイモと筋肉を育てますので!

松本雀
恋愛
「……いいか、エルゼ。あらかじめ言っておくが、私は君を愛するつもりはない」 「願ったり叶ったりです! 実は私、国境警備隊に幼馴染の恋人がいまして。この結婚が決まった時、二人で『体は売っても心は売らない』って涙ながらに誓い合ったんです。閣下が愛してくださらないなら、私の貞操も守られます! ありがとうございます、公爵閣下!」 「……こいびと?」 ◆ 「君を愛するつもりはない」 冷徹な公爵ギルベルトが新婚初夜に放った非情な宣告。しかし、新妻エルゼの反応は意外なものだった。 「よかった! 実は私、国境警備隊に恋人がいるんです!」 利害が一致したとばかりに秒速で就寝するエルゼ。彼女の目的は、愛なき結婚生活を隠れ蓑に、恋人への想いを込めた「究極のジャガイモ」を育てることだった! 公爵家の庭園を勝手に耕し、プロテインを肥料にするエルゼに、最初は呆れていたギルベルト。だが、彼女のあまりにフリーダムな振る舞いと、恋人への一途(?)な情熱を目の当たりにするうち、冷徹だった彼の心(と筋肉)に異変が起き始めて……!?

処理中です...