好きだと先に言ったのはあなたなのに?

みみぢあん

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5話 キツネ狩り

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 すべての講義が終わった後。
  ケインのことで怒り狂っていたリルベルは、ニーナの手を引っ張り、ケインがいる学舎へ行こうとする。
(男女で学ぶ内容が異なるため、講義をおこなう学舎も違う)

「泣いていたが言っていたことが、本当のことか… 直接、ケインに聞きに行きましょう! ね、ニーナ?!」
 目をりあげて怒るリルベルに… ニーナは首を横にふり、ケインとの対面をこばんだ。

「今は嫌っ… ケインに、会いたくない! お願いリルベル… 本当に嫌なの!」
 ニーナの瞳からポロリッ… と涙がこぼれた。
 
「ニ… ニーナ?! ああ… ごめんなさい、あなたの気持ちを考えずに、私ったら…」

「そんなことないわ、リルベル… 私の代わりに考えてくれて嬉しいわ… でも、私… 彼の顔を見たら、泣いてしまいそうなの!」
 すでにニーナの瞳から涙は流れつづけ、簡単には止まりそうにはない。

「あっ!! だったら、私の婚約者!! マーカスに聞きに行きましょう? ケインの従兄弟いとこの彼なら、何か知っているかも知れないわ?! ねぇニーナ、それなら、どうかしら…?」
「そ… そうね… マーカスなら良いわ…」




  ◆   ◆   ◆   ◆




 その日、スタッドリー男爵家のニーナの部屋で、マーカスにケインの話をたずねた。


「“キツネり”…がどういうものか、ニーナは知っているかい?」
 泣きらした赤い目のニーナに、マーカスは慎重に言葉を選びながら、そんな話から始めた。

「“キツネ狩り”…? とても、残酷ざんこくで私は聞いただけで嫌になるけれど… マーカス、それがどうしたの?」
 私のお父様が若い頃、何度か友人に誘われたことがあると聞いたことがあるわ? でもお母さまが嫌がるから、お父さまは、参加したことは無いと言っていたけれど…? 

 普通の狩りは、獲物えものの動物をつかまえて食べるのが目的だが… 
 人間が食べることのない、キツネを獲物として追いかける“キツネ狩り”は、貴族の紳士たちがたしなむスポーツの一種だ。
 
 “キツネ狩り”の目的は、馬に乗ってりょう犬を使い、キツネを追い回して殺すまでのスリルと興奮を楽しむ娯楽ごらくである。


「いいかい、ニーナ…? ケインはね、その“キツネ狩り”が好きなんだ…」
「ケインが?!」

「マーカス… それって、つまり……」
 リルベルは嫌そうに、ニーナの手をにぎってマーカスを見た。

「ああ……… マーカス、あなたが言いたいことが、わかった気がするわ…」
 “キツネ狩り”のキツネように… ケインは私自身を、本当に欲しかったわけではなくて… 私が彼に狩られて“秘密の恋人”になるまでの過程かていを…… ケインは楽しみたかったのね?

「ごめんよニーナ… ケインは君のことを、最初は本当に好きだと思っていたんだ… でも… あいつは……」
 苦しそうに言葉を詰まらせるマーカス。

「他にもケインに狩られた女の子たちがいるのね?」
「うん」

「・・・・・・」
 マーカスが残酷な“キツネ狩り”に例えて、教えてくれたせいかも知れないけれど… ケインのことが好きだった気持ちが、いっきに冷めてしまったわ… 
 私はそんな人を本気で好きだったなんて、なんだか気持ち悪い…!


 ケインは両親にすすめられて始めた“キツネ狩り”が、実際に得意だった。





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