契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん

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9話 リアンナの縁談3

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 普段はリアンナを見ても、見ないふりをする女子学園生たちが珍しく声をかけてきた。


「リアンナ様、婚約が決まったそうですね? おめでとうございます」

「おめでとうございます… お相手はローンヘッド男爵様だとお聞きしましたが…?」
 ニコニコと無邪気むじゃきそうにほほ笑んでいるが、令嬢たちはリアンナから話を聞きだす気満々まんまんで話しかけてきているのが、見え見えだった。


「まだ、正式に婚約したわけではありませんが、ありがとうございます… エリザベス様、ジョアン様… 確かにお相手はローンヘッド男爵様ですけれど、私もまだお話をいただいたばかりなので… 皆様がこのお話をご存知なのが驚きですわ…?」
 信じられない! ほんの3日前にローンヘッド男爵様にお会いして、私自身もお父様に話を聞いたばかりなのに?! この話が学園内でもう広がっているの?! きっとお義母様の仕業しわざね。
 お義母様は昨日のお茶会で、貴婦人たちにおしゃべりしたのだわ! ああ… 嫌だ!

 ローンヘッド男爵の軽蔑けいべつこもった冷たい視線を思い出して、リアンナは内心で震えあがっていたが… 淑女のほほえみを顔にはりつけて令嬢たちの相手をする。


「それではリアンナ様は、ローンヘッド男爵様のことをあまりご存知ではないのではありませんか? たとえば、私たちよりも年上の後継者がいらっしゃるお話とか…?」
 エリザベス嬢はとんでもない情報をリアンナにさっそくぶつけ… ニコニコと笑いながら、リアンナの反応をうかがっている。

「そうなのですね?」
 この令嬢… 私が困る顔が見たくて、こんな意地悪な話を口に出しているのかしら? それにしても… 私の結婚相手にはすでに後継者がいるの?! まぁ、ローンヘッド男爵様なら私よりも年上の息子がいても、おかしくない年齢だったわね?

 リアンナはいつものように、必要最小限の言葉しかかわさず… あとは静かにほほ笑んでやりすごす。

「確か… ローンヘッド男爵様には長年お付き合いをしている、愛人がいると聞いたことがありますわよ? リアンナ様は心配ではありませんか?」
 ジョアン嬢がさらに刺激的な情報を追加した。

殿方とのがたには良くあることですから… 私はありのままを受け入れるつもりですわ」
 長く付き合った愛人? ローンヘッド男爵様がその女性を愛しているのだとしたら… 私の存在は邪魔でしかたないでしょうね? 嫌われても仕方ないのだわ。
 とにかく私は男爵様が衣食住さえ確保してくれれば、何も文句は言わないし、贅沢ぜいたくも言わない。 

 リアンナはすきの無い、鉄壁のほほえみをうかべて2人の令嬢をジッ… と見つめる。

「まぁ、リアンナ様はお強いのですね!」

「本当に、私なら耐えられないわ…」
 リアンナの模範もはん解答に、わざとらしく驚いて見せるエリザベスとジョアン。

「そう言われるということは… エリザベス様とジョアン様は恋愛結婚をお望みですか? お気を付け下さいね? 恋愛の熱が冷めた後の結婚生活は、冷たい地獄が待っていると聞いたことがありますから… お2人はそんな危険を犯してまで、恋愛結婚を望まれるなんて… 本当に勇気がありますこと」

 令嬢たちの期待を裏切り、リアンナは動揺することも怒り狂うこともなく… 静かにほほ笑みながら穏やかに反撃した。

「まぁ…!」

「…っ?!」
 令嬢2人はリアンナの返答に、言葉を失う。

「私は運良く、政略結婚で嫁ぐことになりそうですから… そういうわずらわしい問題が無いと、安心しておりますのよ?」 
 私が伯爵家に引き取られた日から、そんな甘い考えはすてたから… 今さらだわ。 
 愛なんて、最初からなければ求めなくて済むことだし… 昔はお父様に、親子の愛情を求めたことがあったけれど。
 腹違いの兄や姉と、私に対する態度の違いを見れば… そんな幻想は抱かないほうが幸せだと知っている。


「……」
「……」

 だまったまま何も言わなくなった令嬢2人に、リアンナは『図書室へ行くから』と、その場をさった。




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