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28話 告白3
しおりを挟む自分はエヴァの代理だから、結婚しても1年もすぎれば離婚すると思っていたリアンナは、自分が婚外子だとアルベールに話すつもりはなかった。
大切な2番目の友人に嫌われたくなかったからだ。
でも… アルベールが自分を信頼し、『僕の公爵夫人になってほしい』 …と求婚されては話は別である。
「私は伯爵の… 婚外子なの……」
私はアルが求婚を取りやめても… アルの選択を受け入れるわ。
今まで婚外子だとかくしていた私がいけないのだから!
リアンナのブルブルと震える手に… レースの手袋の上からアルベールはキスを落とす。
「ごめん… 知っていたよ」
「は?!」
「ローンヘッド男爵に聞いたんだ…」
もう1度手にキスをすると… アルベールは困った顔でリアンナを見あげる。
「……うそ!」
アルは私が婚外子だと知っていたの?!
「男爵も… 君の父親に無理やり結婚を押し付けられて、とても腹を立てていたから… つい、ポロリッ… と僕の前で愚痴をこぼしたというか…?」
「それは… ええっとぉ…?」
「僕は君との縁談が出る前から、知っていたんだ… ごめん… 君が話したくないなら、僕から話す必要もないと思って? 口の軽いエヴァには秘密だけどね」
「ああ…… そう言えば、公爵様は最初から私が婚外子だと知っていて、あなたとの結婚を申しこまれたのだったわ…」
「うん… それはたぶん、叔父上もローンヘッド男爵に聞いたからだと思うよ? 男爵とは僕の父の代からいろいろと縁があるから」
「アルは…… それで本当に良いの?」
信じられない! 私にとって、もっとも忌むべき問題なのに?! アルはすごく平気な顔をしているわ?!
「べつに構わないよ? ペルサル伯爵が上手に擬装しているから、叔父上も王国法では何も問題はないと言っていたし? 僕たちが気をつければ良いだけの話だろう?」
「信じられない!」
「だまっていて、ごめん! でも… 最初にすごく気になったのはね…… 実は……」
アルベールはリアンナの手からスルスルとレースの手袋をぬがすと、手のひらを上に向けた。
「アル…?」
「君の手がね… とても苦労をして来た手だと、初めて君とガセボで話した時に気づいたんだ… それで……」
リアンナの手のひらにある、淑女らしからぬ皮があつくなってできたマメを、アルベールは指でなでた後… そっとキスを落とす。
「……っ!」
ああ、そうだったわ! 手だけはどうしても、かくすことができなくて… ずっと人前では指先や手のひらが見えないように気をつけていたのに!
「気にしていたのなら、ごめん… 僕は君が婚外子でも信頼しているし、僕の公爵夫人になってほしいと思う気持ちは、少しも変わらないよ?」
「でも… ウソをついて来たのよ?」
「この場合は、君のウソと言うよりも… 伯爵のウソの尻拭いを君がしているという状態ではないかな? だから、君のウソでは無いと思うけどね?」
「私はニセモノの伯爵令嬢なのよ? アルは本当にそれでも良いの? 小さな村で使用人の娘として生まれた私でも?!」
「君は誰よりも完璧な淑女だよ? 文句なんて何もないさ!」
アルベールは清くすんだ空色の瞳で、リアンナにウソのない明るい笑顔を向けた。
婚外子だと知っている人たちがリアンナに向けてきた、軽蔑の影は微塵もうかんでいない。
「アル……」
本当に私で良いの?
「それで、リア… 僕の公爵夫人になってくれる?」
綺麗な笑顔でアルベールはもう一度、リアンナにたずねた。
「はい… 私で良ければ、あなたの役に立ちたいわ」
夢みたいだわ。 もしかすると夢かも知れない!
「リア… ありがとう!」
アルベールは立ちあがり… リアンナの額にキスをする。
「……」
リアンナは瞳に涙を浮かべて、ぼんやりとアルベールを見あげた。
「……リア」
ほんの少し躊躇した後… アルベールはリアンナの唇にもキスをする。
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