すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

みみぢあん

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1話 ジャルダン子爵家

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 2年ほど前。

 長い闘病とうびょう生活の末に、ジャルダン子爵家の長女ソレイユの母親が亡くなり、父親はほとんど間を置かず… 近隣で一番の美人だと評判の未亡人、デゼールと再婚した。

 母親が病気で苦しんでいる時から、父親が当時は愛人だったデゼールの家に、毎日通っていたことも娘のソレイユは知っている。
 だから母親が亡くなる前から、父親の愛人が将来、自分の継母ままははになるだろうと予想していた。


 父親の元愛人で再婚相手のジャルダン子爵夫人となった継母ままははデゼールに呼ばれ… ソレイユは渋々しぶしぶ、家族用の居間に顔を出した。


「何かご用ですか、お義母様?」
 私は忙しいのよ? 用があるなら、さっさと言ってちょうだい?!

 内心ではイライラとしていても、けして表情には出さないよう、ソレイユは淡々たんたんとたずねた。

「ねぇソレイユ? たまには家族全員でお茶をしましょう!」 
 話の内容はなごやかだが、継母デゼールの表情は冷ややかで、自分がソレイユを嫌っていることを隠そうともしない。

「呼ばれたら早く来れば良いのに… お姉様は本当に愚図グズね?」
 ソレイユに対抗心を持っているらしく、義母の連れ子リュンヌは、いつも必ず嫌味を付け加える。

 平民出身の義理の母と妹は… 正真正銘しょうしんしょうめい、ジャルダン子爵家の血筋であるソレイユを嫌っているのだ。

「……」
 何が愚図グズよ?! あなたたちはお茶を飲んで、派手に着飾ることが、貴族の仕事だと思っているようだけど? 私はすご~く、すご~く領地の運営という、重要なお仕事で忙しいのよ?! 

 継母デゼールと義妹のリュンヌは、2人一緒に王都で流行している最新のドレスを着て、優雅にお茶を飲んでいた。

 ソレイユが暮らすジャルダン子爵家の領地は、王都から遠い田舎にある。
 そんな田舎だと義母たちの服装は、あかぬけていて洗練せんれんされていると言えば聞こえは良いが… 近隣の貴族からはいつも場違いで派手だと嘲笑ちょうしょうまとになっていた。
 
 自分をバカにする、近隣でつつましく暮らす由緒ゆいしょ正しい血筋の貴族たちのことを、義母デゼールは田舎貴族とバカにしている。

 だが義母は元々、商家に生まれた平民出身で、ソコソコ淑女しゅくじょの教育は受けているが、あくまでも平民にしてはソコソコという程度で、貴族の令嬢ならば落第点のレベルだった。
 高慢こうまんなデゼールはその自覚がないのだ。

 
 どうやら父親も義母デゼールに呼ばれたらしく、遅れて居間にあらわれたが、ソレイユには見向きもしないで黙って義母の隣に腰を下ろした。
 お茶が注がれたティーカップを、デゼールに手渡され、父親は黙って口を付ける。

「……」
 相変あいかわらず、お父様は私の前では何も言わないのね?
 お義母様と結婚して以来、お父様が私にい目を感じているのは、何となく感じているけれど… 今日も私を無視するのね?

 ハァ――… とソレイユは落胆らくたんのため息をつく。
 当主であるジャルダン子爵は、前子爵夫人が亡くなって、実の娘ソレイユとほとんど口をきかなくなったどころか、目も合わせなくなっていた。


「さぁ、早く座りなさいソレイユ、せっかくのお茶が冷めてしまうわ!」
 ソレイユを嫌う継母のデゼールは父親があらわれたとたん、ニッコリとほほ笑む。

「……っ」 
 コレは何かある!? 嫌な予感しかしないわ? 私を家族だと思っていないくせに、お義母様が私をお茶に誘うなんて?! やっぱり変よ!

 一緒にお茶を飲めば、自分にとって絶対に悪いことが起きるに違いないと、ソレイユは顔を強張こわばらせる。

 ソレイユが顔をしかめて立っていると… めずらしく父親がソレイユに声をかける。

「早くお前も座りなさい」

 父にうながされ、仕方なくソレイユは義母の向かい側に腰を下ろす。

「…はい」
 もちろんお茶を断ることは出来るけれど、断ってもすぐに他の方法で、悪いことが起きるのだから… 結局私は素直にお義母様の言うことを、聞くしかないのよね…? ああ、嫌だ!

 ハァ――… とソレイユはまた、ため息をつく。
 三つ編みにして胸の前にたらした、腰まである赤みがかった茶色の髪にもじもじと触れながら… ソレイユは義母がティーカップにお茶を注ぐのを待った。

 母親が亡くなる前、3年前に買ったドレスの薄汚れたそでを隠し、ソレイユはティーカップを受け取り一口飲んだ。

 普段ソレイユが飲んでいる、町で簡単に手に入る安物とは違い、王都でしか手に入らない高級な茶葉でれたお茶である。


「お姉様はきっと、領地の管理人とおしゃべりをしていて遅れたのよ、お母様!」
 いつものことだが、義妹リュンヌがとうとつに甲高かんだかい声で、意地悪を言い出した。

「……」
 お義母様に良く似たふわふわとした金の髪に青い瞳は、黙っていれば清楚せいそはかなげな心優しい美少女を演出してくれるのに…?
 私の前では意地悪ばかりを言うから、そのせいでリュンヌの美しい容姿が、おろかな見かけだけの娘にしか見えないのよね?


 なんて残念なかしら? …とソレイユはまた、ハァ――… とため息をつく。







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