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4話 リベルテの手紙
しおりを挟む義母デゼールと義妹リュンヌの話が信じられず、ソレイユが頑なに心を閉ざしていると… リベルテからの手紙1通と、ここ何ヶ月間にソレイユが送り続けた未開封の手紙を、紐でくくってまとめた束をポンッ… と投げるように、義母がテーブルの上に置いた。
「ふふふ… あなたは素直に信じないと思っていたわ! 王都でリベルテ様から手紙をあずかって来たから、自分の目で確かめなさい」
ソレイユを傷つけることが、楽しくて堪らないと言いたげに、義母は綺麗な顔で微笑んだ。
「……っ!」
私が送った未開封の手紙がこんなにあるの?! 彼はいつから私の手紙を読んでいないの?! 王都へ行ったばかりの頃は、リベルテからも頻繁に返事が来たけれど… この1年は一度も返事が来ていないわ…?!
それでも子供の頃から知っているリベルテは、無責任な人では無かったと… ソレイユは大きな不安を抱えていても、信じて待っていた。
「ねぇ、早く読んでみてよ、お姉様! リベルテ様が何を書いたのか私に教えて?!」
はしゃいだ声でリュンヌはせがんだ。
ソレイユはリュンヌを無視して、リベルテからの手紙を手に取り開いた。
「……」
ああ、間違いなくリベルテの字だわ? 彼の手紙を何度も読み返しているからわかる。
身体の内側から、ソレイユは氷のように冷たくなってゆく。
"親愛なるソレイユ、僕のことはいい加減あきらめてくれ。
子供の頃の婚約話は、僕たちの母親が自分たちの友情を、証明するためにした戯れなのだから。
君もそろそろ大人になって、他の男性に目を向けることをすすめるよ。
僕はリュンヌを心から愛しているから、僕たちの愛を邪魔しないで、君も祝福してほしい。
君の友人リベルテより"
小刻みに震える手でソレイユは手紙を元通りに折り畳み、リベルテの手紙が入っていた封筒に戻した。
「明日、リベルテの実家に… ブルイヤール家に行ってきます」
リベルテの両親にも話を聞いて、手紙の内容が本当かどうか、しっかりと確かめなければ!
ソレイユが腰を上げると、義母が嫌味ったらしく引き留めようとする。
「待ちなさいソレイユ、まだ話は終ってないわ! あなたの結婚のお話があると言ったでしょう?」
「そんなお話、聞きたくありません!」
「傷モノのお前が、結婚できるかもしれない機会を、お前はすてるつもりか?!」
義母の話を無視しようとするソレイユを、父が諭した。
「……」
ジロリッ… と父をにらみつけ、ソレイユは黙って腰を下ろす。
「本当に良いお話なのよ、ソレイユ? その方は、元魔法騎士団の団長様で、少し前に魔獣退治でケガを負って騎士は辞められたの… それで花嫁探しをされているらしくて…」
手のひらをこすり合わせて、義母は嬉々として話し出す。
「……」
この話には、どんな落とし穴があるのかしら?
どれだけ辛くても、ソレイユは慎重に考えた。
リベルテとの婚約が本当に無効なら… このまま一生、義母に嫌がらせを受けながら、ドレス代を稼ぐ道具にされてしまうからだ。
自分のそんな未来を想像し、ソレイユは心底ゾッ… とする。
「騎士団長を辞めたと言っても伯爵様よ?! ペイサージュ伯爵、アンバレ様!」
「お義母様… その人はお父様よりも、ずっと年上の老人ではないの?」
トゲトゲしくソレイユがたずねると… 義母は面白い冗談を聞いたとコロコロと笑った。
もちろんソレイユは冗談などではなく、本気でたずねたのだ。
ソレイユの質問を聞き、義母の隣で父親が、ゲホッ… ゲホッ… と頬を赤くして咳き込む。
「いいえ、伯爵様はあなたより一回り年上だけど、まだとてもお若くて素敵な殿方よ? ふふふっ…」
義母はニコニコと胡散臭い笑顔をふりまき… その隣で義妹が義母とよく似た綺麗な笑みを浮かべた。
「……」
絶対にオカシイ! そんな好条件の相手を、お義母様が私にすすめるはずないわ?! 絶対に何かある!
ソレイユは疑心暗鬼になった。
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