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7話 見送り

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 見送りに来たキルデリク・ブルイヤールきょうは、心強い言葉をソレイユに贈ってくれた。

「ソレイユ… もしも嫁ぎ先で困ったことが起きたら、私達に遠慮えんりょ無く連絡を寄こしなさい、私たちは君を、養女にしたいぐらいなのだから…」
 ブルイヤール夫妻には、ソレイユを養女にしたくても、できない理由があった。 
  
 ただでさえ、ジャルダン子爵の実子ではないリュンヌを社交界デビューさせたのに、実子のソレイユをデビューさせないのはおかしいと… 近隣の貴族たちはそれが変だと思っているのだ。
 本当は『長女が実子ではなく、次女は婚外子で子爵の実子ではないか?』 …と悪いうわさまで立っている。
(義母以外の貴族たちから見れば、婚約者がいてもデビューさせないのは、常識外れなのだ)


「おじ様… 本当に心強いわ!」
 もしも私がブルイヤール夫妻の養子になったら… 私は亡くなったお母さまが不倫して生まれた『つみの子』だから、父親に冷遇れいぐうされているのではないか? …という悪いうわさに、真実味をあたえてしまうわ?
 それに意地悪な人たちは、おじ様が私の実父だと、言い出すかもしれない。

 亡くなった母親の名誉めいよを守るためにも… そして、昔から変わらず優しくしてくれるブレイヤール夫妻を、ソレイユはそんな愚かな醜聞しゅうぶんに巻き込みたくなかった。
 
 ハァ――… とソレイユから大きなため息がもれる。

「まぁ!! ダメよ、ソレイユ!! そんなに大きなため息をついたら、幸せが一緒に逃げてしまうわよ?!」
「そうよ? これから花嫁になるのにいけないわ、お姉様!」

 意外なことに、義母と義妹がソレイユの旅立ちを祝福し見送りに玄関前まで出て来た。

「ええ、わかっています、お義母様、リュンヌ… 私は急に故郷を離れるのが、さびしいのよ…」
 この地に残れば、一生地獄を見ることになりそうだから… 出ていかなければいけないことはわかっているわ!

「さびしいだなんて… ソレイユ、そんな我がままを言ってはいけませんよ!」
「そうよお姉様! お母様の言うとおり、結婚してくれる伯爵様に感謝して、もっと喜んで旅立つべきだわ?!」

 心配そうにソレイユを気づかうふりをしているが… どう見ても2人の顔は嬉しそうに笑っている。


「お父様は……」
 と義母にたずねかけて、ソレイユはすぐに口を閉じた。

 ブルイヤール夫妻は実の親のように心配して来てくれたのに… ソレイユの父親は実の娘が嫁ぐというのに、見送りにさえ顔を出さない。

 どうやら父親は、ソレイユの母が亡くなった時、一緒に死んでしまったようだ。



 ソレイユの中に残っていた、父親への愛情が綺麗サッパリ消えさった。




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