すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

みみぢあん

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63話 イフリート

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 コカトリスは魔力をすべてイフリートに奪いつくされたのだろう。
 カルムたちの前で、コカトリスの巨体はボロボロとくずれ落ち、焚火たきびの後の燃えカスのようなものが、大地に小さな山を作った。

 ガアァァァァァ――――――ッ…!!!!
 野蛮やばん雄叫おたけびとともに、イフリートが起こした炎混じりの風で… コカトリスだったものは飛び散り、跡形も無く消え去る。

 イフリートを中心に、暗く青い獰猛どうもうな炎が広がり大地を焼きつくし、コカトリスが放った猛毒で枯れた植物さえも、青い炎につつまれちりと化す。
 カルムたちが見渡す限り、地面と青い炎以外はすべて燃えつき、雪のような灰が舞う。

「…こんなやつをどうやったら、倒せると言うのだ?!」
 騎士たちは魔法で作った防御のたてで、辛うじて青い炎を防いだが… 攻撃どころか、身を守るだけでせいいっぱいだった。

「フロア、攻撃を!!」

「クソッ!!」
 それでもカルムのたてに守られながら、フロアが渾身こんしんの一撃で、水の矢を放ったが… イフリートに届く前に青い炎ではばまれ、水の矢はジュッ… と音を立てて蒸発した。


「うあぁ―――っ…! 殺される!! 殺される…!!」

「ひぃぃぃ―――っ!! 嫌だ、死にたくない!!」
 騎士団の中でも腕きのフロアが、イフリートが相手ではまったく対抗できないとわかると… リベルテの新米部下たちは、なさけないさけび声をあげ、持ち場を離れて逃げ出した。

「おい! バカ野郎!! 逃げるな―――っ…!! クソッ…!!」
 リベルテは部下たちを呼び戻そうとするが… バタバタと逃げ出した新米騎士たちの動きが、イフリートの目を引き、青い炎をき散らしながら飛び立ち、魔力を奪おうと新米騎士たちの前に下り立った。

「嫌だ! 死にたくない――っ!!」

「ひいぃぃ―――っ… 助けて! 助けてぇ!」
 イフリートを前にして、新米2人は尻もちをつき、ズルズルといずり、泣きさけびながら逃げまどう。

「クソッ!! 腰抜けどもめ!!」
 リベルテが2人を助けようと、炎の矢でイフリートを攻撃するが… イフリートの青い炎がリベルテの炎をアッ… という間に同化してしまう。

 炎の攻撃に反応したイフリートは、新米部下たちよりも魔力の強いリベルテに、ねらいを変える。

「攻撃しろ―――っ!!」
 カルムたちも一斉に、イフリートへ攻撃を仕掛けるが、獰猛どうもうな青い炎の風が吹き荒れ… 騎士たちが放った攻撃魔法は全て、青い炎に焼かれ一瞬で消え去った。

「ダメだ!! まるで手応てごたえが無い!! いったい、奴には何がきくのだ?!」
 ギリギリと歯ぎしりをしながら、フロアが水の盾を作り青い炎を防ぐ。

「クソッ!! 攻撃の手をゆるめるなぁ―――っ!!!」
 騎士たちはイフリートが相手でも一歩も引かず、カルムの掛け声に応え、攻撃魔法を放ち続ける。


「ウオオオオォォォ―――ッ!!!!!!」
 自分をねらうイフリートに、リベルテは大剣を振り上げるが、青い炎の熱でグニャリとまがり… リベルテは剣をイフリートに向かって投げつけた。

 死に物狂いでリベルテは攻撃魔法で応戦するが、イフリートの敵ではなかった。
 

左翼さよくはイフリートの背後に回り攻撃を!!」
 カルムも、他の騎士たちも、リベルテを救おうと必死に攻撃を仕掛けるが、まるで相手にならない。

 仲間の騎士たちの前で、鋭いつめが生えた青い手で、リベルテは首をつかまれイフリートに捕まった。

「この… クソ野郎!! お前なんかに…っ…!! グッ… ううぅ!!」 
 コカトリスと同様にみるみる魔力を奪い取られ、仲間の騎士たちの前で、リベルテの身体がボロボロとくずれ落ちて行く。

「リベルテ―――ッ!! クソッ止めろ!! 止めろ!!!」

「カルム!! 兄さんっ…!! う゛あ゛あぁぁぁぁぁ―――っ…」

 力の限り、カルムと仲間の騎士たちは、攻撃を放った。
 だが、ギリギリと首をめられ、魔力を奪い取られながらリベルテは、断末魔だんまつまのさけび声をあげた。

「リベルテ―――ッ!!!」
「ダメです、副団長!! 副団長!! 押さえて下さい!!」
「放せフロア! クソッ… リベルテが! リベルテが――ッ!」

「耐えて下さい、副団長! 耐えて下さい!!」
 イフリートに突撃とつげきしようとするカルムを、フロアと近くにいた騎士が押さえ付けて止めた。


 リベルテだったものはちりと化し… 青い炎が混じる熱風に乗り霧散むさんした。


「クソオオォォォ―――ッ!!!!」
 自分を押さえつけていたフロアの腕を振り払い、カルムはひざまずき… 傷ついたこぶしで、焼けただれた大地をなぐりつける。






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