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86話 奇跡を求めて2
しおりを挟む落ち込むジャンティエスを慰めた数日後に、王太子クリストフから『聖なる試み』をためして欲しいと要請され、ソレイユはアンバレとともに王宮の霊廟を訪れた。
歴代の聖女たちの棺に1人、1人触れてゆき、ソレイユは『聖なる試み』を順番にためしてみるが…
「ダメです… 聖女リュフュゼ様からも、聖なるお力をお貸しいただけないようです」
予想通りだわ… エクレラージュ様の時のように、力を受け入れることが出来ない。
やはり、今の私にはオルドナンスの神殿を訪れた時のように、必死さが足りないのかもしれない。
聖女リュフュゼ様のお力は、私に反発するようにチクチクとするばかりで、ふわりと包み込む穏やかな感触がまるでないわ。
「奇跡は2度も起きないということか…?!」
王太子クリストフは落胆を隠しきれないようすだ。
「仕方ありません、殿下… 気軽に人の手で起こせるのなら、奇跡とは呼ばれませんよ」
アンバレはソレイユの『聖なる試み』が失敗したことで、安堵したらしく、微笑みを浮かべ落ち込む王太子を慰めた。
「それもそうか… 有能な騎士たちを何人も救えただけでも、良しとするべきだな…」
ソレイユは聖女リュフュゼの棺の横でひざまずき、軽く祈りを捧げると、王太子を見あげ謝罪した。
「お期待にそえず、申し訳ありません殿下…」
改めて聖女様がたの偉大さが心にひびくわ…
「いや、こちらこそ伯爵夫人の協力に感謝する! あなたのおかげで、ブリュイも真面目に聖女の務めを果たすようになった… ある意味、そっちの方が奇跡と言えるしな」
「殿下、ブリュイ殿を今後も上手くあつかうためにも、ソレイユの『聖なる試み』が失敗したことは、私たちだけの秘密にしておきましょう…」
聖女ブリュイは、アンバレの独占欲から『力があっても妻のソレイユは聖女にしない』…という話をすり込まれている。
だがそれも王太子の気分次第で、将来はどうなるかわからないと… 自分の立場を守るため、ブリュイは真面目に聖女の務めを果たすようになった。
王太子はソレイユをチラリッ… と見て、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「確かにブリュイ対策は、その方が良いだろうな伯爵」
表向きではブリュイに浄化をこばまれた騎士たちは、ソレイユと神官ジャンティエスが聖水を使い、騎士たちを浄化したことになっていた。
浄化を受けたアンバレの部下たちにも、口止めをしている。
『聖なる試み』で得られた浄化の魔法は、聖女の遺体から離れると使えなくなる。
生まれながらの聖女に比べて万能ではないことをブリュイに隠し通すには… 『聖なる試み』で力がえられること自体を、ブリュイと世間に明かさない方がいいと、王太子もアンバレも同じ考えにいたった。
「……」
この件に関しては、私も気を付けないと! 本当に大変だわ! アンバレ様はいつも王太子殿下と、こんな面倒で複雑な話をしているのかしら?! すごいわ!
以前は聖女ブリュイがアンバレに恋心を抱いていたせいで、王太子クリストフとの関係は険悪なものだったが… 今では一緒に悪巧みをするほど、良い信頼関係を築いていた。
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