【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、元婚約者を諦められない

きなこもち

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セリーナの嫉妬

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 その日の食堂には、イオとクロエは来なかった。

 クロエは、リナリーに今日は食堂には行かず、イオと2人っきりで話したいと相談した。

「うん!イオに伝えておくね。邪魔されずにすゆっくり話しておいでよ。」

 リナリーは快く送り出してくれた。

 食堂に来たセリーナは、イオとクロエがいないことに気付き、

「あれ?2人は?」

 と聞いた。

 気を利かせたリナリーが、

「2人は、それぞれ係の活動があるから今日は別で食べるって。」

 とセリーナに伝えた。その時ラリーが、

「実はね、セリーナは知らないかもしれないんだけど、2人はいい感じなんだよ!僕の読みではもうすぐ付き合うね。イオの家にも招待してたし。」

 ラリーの空気を読まない発言に、リナリーはイラっとし、机の下でラリーの足を思いっきり踏んだ。

「いった!!リナリーいきなりなんだよ!?」

「ごめん、足踏んじゃったの気付かなかった!」

 とワーワー騒いでいた。

 セリーナは、イオとクロエが付き合いそうだというラリーの言葉が、非常に面白くなかった。

 またクロエを家に招待したというのも、余計に腹が立った。

 クロエにとって、セリーナは目の上のたんこぶのような存在だったが、セリーナにとっても、クロエはいつも先回りして邪魔をしてくる女でしかなかった。

 アリオンから好意を向けられておいて、イオに思わせ振りな行動をしているのか。

 イオにクロエは似合わない。イオはもっと、庶民的で、友達でも恋人でもあるような、自然な関係性を築ける女の子の方がいいはずだ。

 例えば、セリーナのような。

 セリーナは、イオとクロエが付き合う前に、何か手を打たなければならないと、考えを巡らせていた。

 ◇

 クロエとイオは、2人の秘密の丘に来ていた。

 いつものように、木の根もとに腰を下ろすと、イオが少し顔を赤くしながら、話しかけてきた。

「クロエに構ってもらうの、久しぶりだな。」

「構ってもらうって何?」

 クロエが笑いながら聞いた。

「・・・カッコ悪いんだけど、俺、実は少し拗ねてた。」

「え?」

「クロエ、元婚約者のアイツを庇って怪我しちゃうし、まだ好きなのかなって。」

 イオの本音を初めて聞いたクロエは、少し驚いた。イオは、嫉妬のような感情とは無縁だと思っていた。

「そんなこと思ってたの?確かに昔は好きだったけど、今は私も彼も変わったわ。助けなきゃ!って思ったのは本当だけど、それは幼馴染みとして大切だから。イオだって、リナリーが襲われそうになったら、助けるでしょ?」

 イオは少し考えて、

「うーん。。。確かに。」

 と呟いた。

「それにさ、怪我した後も、俺は『クロエお嬢様を心配する友人B』って感じで、あんまり力になれなかったから。このまま、俺はクロエにとって存在感なくなっちゃうのかなって、ちょっと心配だった。」

「どうしてよ?今日イオを呼び出したのは、私なのに?特別じゃないと呼ばないわよ。」

 クロエは自分でいった後に恥ずかしくなった。

 自分が、イオのことを好きだと言っているようなものではないか。

「いえ、えっと、今のはその。。。」

 イオは、しどろもどろになるクロエをしばらくじっと見ていた。そして、

「あークロエ!それ以上は言わないで。もう少しだけ待ってて欲しい。準備ができたら、俺から言うよ。」

 イオは、クロエの両手を握って照れながらそのように言ってきた。

 俺から言うとは、何のことだろうか?とにかく、私は待ってればいいのよね、と理解したクロエだった。

 イオの両手をそっと握り返した。
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