破滅エンド後にバグ!?BL乙女ゲームのヒロインポジションが、悪役サブキャラの俺に移ってます!?

きなこもち

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目覚めたら悪役

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「ねー!このゲームやってみて!はまるよ!」

 俺のモテない喪女姉が、突然部屋にやってきてとあるBLゲームを手渡してきた。
「げっなんだよこれ!BLじゃん。男がするわけないだろ。こんなのばっかやってるからお前モテないんだよ。」
 俺がそういうと、姉はグーパンチで俺の頭を殴った。
「いってぇ!何すんだよ!」
「一言多いんだよあんたは!!BLだけどストーリーが面白いの!いいから騙されたと思ってやってみな。」
 そう言い残し、姉は部屋から出ていった。

 やらなかったら姉からまた文句を言われるだろうと思い、やれやれ最初だけでも試しにやってみるかとプレイし始めた。

 すると、姉のいう通り思いの外面白く、夢中で夜中までゲームに没頭してしまった。

 ヒロインはソラという美少年で、攻略キャラは、『第一王子のレイン』、『第二王子のクライン』、ソラの親友のブライトだった。

 学園の小物悪役キャラ、『イアン』が、嫉妬からヒロインのソラを陥れようとしたが悪事を断罪され、第一王子レインから手首を切り落とされそうになる、というところまでプレイし寝ることにした。


 ◇


 朝目覚めた俺は、見知らぬ天井が目に飛び込んできて、しばらく頭が働かなかった。
 (ん?ここはどこだ?俺は夢でも見ているのか?)

 俺の部屋とは全く違う光景だった。

 豪華な天蓋付きベッドはフワフワで、部屋の中は中世ヨーロッパの貴族ような趣のある家具が並んでいる。

 そしてしばらくすると俺の頭も冴えてきた。

 俺の名前はイアン。中等部を卒業し、今年から貴族ばかりが通う高等部の学園に入学することになっている。

 (これは、巷でよく聞く異世界転生ってやつか───?しかもまさか、寝る前にプレイしたBL小説とは·········それにしても、よりにもよって、小悪党イアンって!)

 俺は絶望的な気持ちのまま鏡の前に立ち、イアンの姿をじっくりと眺めた。

 金髪の巻き毛と、同じく奥深い金色の瞳。見た目が美しいことを鼻にかける、鼻持ちにならない意地悪なキャラクターがイアンだ。
 嫉妬深く、平民出身のヒロイン、ソラを目の敵にしている。第一王子、レインに近づこうと画策するが、全く相手にされないしょうもないキャラだ。
 転生前の俺の容姿と比べると、容姿ガチャは当たりも当たり、大当たりだ。
 しばらく自分の美しさに見とれ、色んなポーズや表情を取りモデル気分を味わった。

 そんなことをしているうちにハッとした。今日は学園の入学式である。

 転生したと分かったからには、手首を切り落とされる破滅ルートは是が非でも回避しなければならない!!

 意気込んで登園した俺だったのだが····

 重大な選択を迫られる場面では、ことごとく自分の意思とは反した行動を取ってしまうのだ。

 俺の願いは虚しく物語通りに進んでいた。

 数ヵ月後、いよいよ俺は、第一王子、レインに断罪される局面を迎えていた。
 大勢での前での断罪後、人目の付かない森の中に連れてこられ、レインから乱暴に地面に転がされた。
「お前の数々の悪事、見逃すことはできない。命だけは助けてやる。しかし、もう二度と悪さができないように、お前の両手首をもらうぞ。」

 イアンは、この場面を知っている。レインに手首を切り落とされた後、家からも勘当されたイアンは、道端でひっそりと息絶えるのだ。

 このストーリーも変えることはできないと分かっていたが、イアンはこの世界に転生してしまった運命を呪い、涙を流しながら懇願した。
「レイン王子····!どうか、お助けください。自分ではどうしようもなかったんです!!ソラに悪事を働きたくはないのに、体が言うことをきかず──何でもしますから、どうか手を切り落とさないでください!!」
 いつもなら、ストーリーと違うセリフは言えないはずなのだが、今日は何故だか自分が思った通りの言葉が出た。

 だか、そんなことはこの状況において全く関係はない。レインは恐ろしい程整った目元を細くし、俺を冷たく見下ろした。
 俺は、手首を切り落とされる時の痛みが想像できず恐れおののいた。

「·····悪事を働きたくなかっただと!?それではなぜ、あのようなことを───!!本当に後悔しているのか!?」
「───はい!心から後悔しています。神に誓って、2度と同じ過ちを繰り返しません!!!」
 ·········ん???レインはこのようなセリフは言わないはずだ。システムのバグなのか!?

 俺は最後のあがきだとは分かっていたが、大袈裟に涙を流しながらレインの足にしがみついた。
「レイン様······!!どうかお助けを!助けていただけるなら何でもいたします!!!」
 レインは情けをかけてくれているのか、若干戸惑った表情をし、何と構えていた剣を鞘にしまったではないか。
「·······クソッ!!二度はないと思え!」
「!?!?·······助けてくださるのですか?レイン様ありがとうございます!!」

 俺は泣いて喜んだ。どういうわけか分からないが、ここにきて初めてストーリーから外れたことが起こっている。
「········ただし、俺にはお前を監視する責任がある。」
「─────は、はい。」
「しばらくは、俺の屋敷で働け。お前は勘当されたからな。もう貴族令息ではなく、ただの平民の侍従だ。特別扱いはしないからな。覚悟しとけよ。」
「───はい!!レイン様!!誠心誠意、仕えさせていただきます!!!」

 嘘みたいだが、なんとか土壇場で破滅ルートを回避できた。手首さえ切り落とされないのであれば、勘当されようがレインの侍従でこき使われようがあろうが、全てがマシである。

 この日から、俺の破滅ルートから外れた新たなルートが幕を明けた。
     
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