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捨てる神あれば拾う神あり
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俺が目を覚ますとそれはそれは暖かいベッドの上だった。
(あぁ、俺生きてる。ソラに罠に嵌められ、レインからは無残に捨てられ、馬車にひかれそうになったんだった····)
俺の側にいた侍女が、俺が目覚めたことに気付き、「大丈夫ですか?ご主人様をお呼びいたします。」と言い部屋を出ていった。
部屋に入ってきたのは、気を失う直前に一瞬見えた男、第二王子クラインだった。
確かクラインは、側室の子どもで、年齢は二十歳を越えていたかと思う。
ソラとは、王宮の中で王子とは知らずに出会い、ゆっくりと恋心を育むという設定だっただろうか。
黒髪の長身に、爽やかな目元、目鼻口のパーツ配置が完璧で、歯並びが良く、まるで俳優かのようなイケメン野郎だった。
「気がついたかい?身体中泥だらけ、アザだらけでビックリしたよ!君、あのひどい雨の中歩いてた?何か理由があったのかもしれないけど、良ければ聞くよ。」
なんて気遣いができる男なんだ!俺を助けてくれた上に、事情まで聞いてくれるなんて·····それにこの低音ボイスが妙に心地いい。
「助けていただいて感謝します。あなたは僕の命の恩人です!実は·····僕は侍従でして、近くの別荘に来ていたんですが、主人の怒りを買ってしまい───解雇され、馬車を降ろされ、あげく道に迷ってるところをあなた様から助けていただきました。」
「何だって?あそこの近くの別荘って······まさか王子のレインか?」
「······御存じなのですか?」
「俺の腹違いの弟だ。俺の名はクライン。アイツ、頭に血が上りやすいとは思っていたがここまでとはな。君みたいな少年の侍従を捨て置いていくなんて······」
「いえ····不出来な僕が悪いんです。」
最大限かわいそうに見えるように、俺は涙を堪えたような表情をし俯いた。こういう時は、できる限りの同情を買っていた方が何かと都合がいいのだ。
「君、弟がすまないことをした。俺からお詫びするよ。家はどこだい?送っていくよ。」
「実は·······家はないのです。両親はいません。学校も行かず、レイン様のお屋敷に住まわせてもらっていました。」
「えぇ!?そんな君を捨てたっていうのか!?なんて無責任な······では、君は今住む家も、仕事もない状態ということか?」
「はい、その通りです。あの·····クライン様、助けていただいた上に失礼なのですが──どんな仕事でもやります!僕に何か仕事をいただけませんか!?死ぬ気で頑張りますから!!」
俺は涙を流しながら、ベッドから飛び降り、安い土下座で頼み込んだ。
頼む!!俺の命はあんたにかかってるんだ!!
クラインは、俺の肩に手を置き、慈悲深い声で話しかけた。
「───頭をあげてくれ。君、名前は?」
「イアンです。」
「イアン、弟の不始末だ。俺は事業をいくつかやっていてね、仕事や住む家は探してあげられそうだ。とにかく、今日はゆっくり休んで。明日また話そう。」
神!!この男はまさに神のようだ!!
「うぅ····ありがとうございます!」
俺が泣きながら喜ぶとクラインはよしよしと俺の背中を撫で、部屋を出ていった。
◇
翌日やってきたクラインは、早速住む場所と仕事の話を持ちかけてきた。
「今、国内で芸術分野を伸ばそうという試みがあるんだ。俺は、芸術家を育てるために、美術専門学校の運営に携わってる。それで、ちょっと困ってることがあって·····」
「困ってることですか?」
「絵画モデルが足りてないんだよ。学生はもちろんやりたがらないし、大人数にじっと見られて絵を描かれるなんて、一般の人は抵抗があるみたいなんだ。今は、高い報酬を払って娼婦のような仕事をあまり選ばない人にお願いをしている状態だ。」
転生前の世界だったら、絵画モデルは割と普通に聞く言葉ではあったが、この世界はまだ目新しいことなんだろう。
「良かったら····君にお願いできないか?あと、学生寮が空いててね。君は絵を描く学生ではないけど、絵画モデルとして学校に通うんだから、寮を使っても構わないし、学校の施設も好きに使っていいよ。·········どうかな?」
「絵画モデルというのは、動かずにじっとしていればいいということですか?」
「そうだ。ポーズは指示があると思うけど、一回につき、二時間くらいじっとしてくれればいい。嫌だと思うことは断ってくれていいよ。賃金はきちんと払う。」
な、なんてイージーな仕事なんだ!いや、モデルをしている人からしたら簡単ではない!と怒られるだろうが、今まで馬車馬のように働き、レインの機嫌を取っていた俺からすると、お金をもらうのも申し訳ないような仕事だ。おまけに、学校の施設も使えるんだから、図書館も食堂も使えるのか!?寮なら友達もできるかも!つまりは学校に通えるようなもんじゃないか!
「もちろん、やらせていただきます!!」
「本当か?良かった!君はきれいだし、男子のモデルはいなかったから、きっと書き甲斐があるよ。重宝されるさ。」
そうだといいな、と俺は頬を蒸気させながら、美術学校へ行ける日を今か今かと待ちわびた。
(あぁ、俺生きてる。ソラに罠に嵌められ、レインからは無残に捨てられ、馬車にひかれそうになったんだった····)
俺の側にいた侍女が、俺が目覚めたことに気付き、「大丈夫ですか?ご主人様をお呼びいたします。」と言い部屋を出ていった。
部屋に入ってきたのは、気を失う直前に一瞬見えた男、第二王子クラインだった。
確かクラインは、側室の子どもで、年齢は二十歳を越えていたかと思う。
ソラとは、王宮の中で王子とは知らずに出会い、ゆっくりと恋心を育むという設定だっただろうか。
黒髪の長身に、爽やかな目元、目鼻口のパーツ配置が完璧で、歯並びが良く、まるで俳優かのようなイケメン野郎だった。
「気がついたかい?身体中泥だらけ、アザだらけでビックリしたよ!君、あのひどい雨の中歩いてた?何か理由があったのかもしれないけど、良ければ聞くよ。」
なんて気遣いができる男なんだ!俺を助けてくれた上に、事情まで聞いてくれるなんて·····それにこの低音ボイスが妙に心地いい。
「助けていただいて感謝します。あなたは僕の命の恩人です!実は·····僕は侍従でして、近くの別荘に来ていたんですが、主人の怒りを買ってしまい───解雇され、馬車を降ろされ、あげく道に迷ってるところをあなた様から助けていただきました。」
「何だって?あそこの近くの別荘って······まさか王子のレインか?」
「······御存じなのですか?」
「俺の腹違いの弟だ。俺の名はクライン。アイツ、頭に血が上りやすいとは思っていたがここまでとはな。君みたいな少年の侍従を捨て置いていくなんて······」
「いえ····不出来な僕が悪いんです。」
最大限かわいそうに見えるように、俺は涙を堪えたような表情をし俯いた。こういう時は、できる限りの同情を買っていた方が何かと都合がいいのだ。
「君、弟がすまないことをした。俺からお詫びするよ。家はどこだい?送っていくよ。」
「実は·······家はないのです。両親はいません。学校も行かず、レイン様のお屋敷に住まわせてもらっていました。」
「えぇ!?そんな君を捨てたっていうのか!?なんて無責任な······では、君は今住む家も、仕事もない状態ということか?」
「はい、その通りです。あの·····クライン様、助けていただいた上に失礼なのですが──どんな仕事でもやります!僕に何か仕事をいただけませんか!?死ぬ気で頑張りますから!!」
俺は涙を流しながら、ベッドから飛び降り、安い土下座で頼み込んだ。
頼む!!俺の命はあんたにかかってるんだ!!
クラインは、俺の肩に手を置き、慈悲深い声で話しかけた。
「───頭をあげてくれ。君、名前は?」
「イアンです。」
「イアン、弟の不始末だ。俺は事業をいくつかやっていてね、仕事や住む家は探してあげられそうだ。とにかく、今日はゆっくり休んで。明日また話そう。」
神!!この男はまさに神のようだ!!
「うぅ····ありがとうございます!」
俺が泣きながら喜ぶとクラインはよしよしと俺の背中を撫で、部屋を出ていった。
◇
翌日やってきたクラインは、早速住む場所と仕事の話を持ちかけてきた。
「今、国内で芸術分野を伸ばそうという試みがあるんだ。俺は、芸術家を育てるために、美術専門学校の運営に携わってる。それで、ちょっと困ってることがあって·····」
「困ってることですか?」
「絵画モデルが足りてないんだよ。学生はもちろんやりたがらないし、大人数にじっと見られて絵を描かれるなんて、一般の人は抵抗があるみたいなんだ。今は、高い報酬を払って娼婦のような仕事をあまり選ばない人にお願いをしている状態だ。」
転生前の世界だったら、絵画モデルは割と普通に聞く言葉ではあったが、この世界はまだ目新しいことなんだろう。
「良かったら····君にお願いできないか?あと、学生寮が空いててね。君は絵を描く学生ではないけど、絵画モデルとして学校に通うんだから、寮を使っても構わないし、学校の施設も好きに使っていいよ。·········どうかな?」
「絵画モデルというのは、動かずにじっとしていればいいということですか?」
「そうだ。ポーズは指示があると思うけど、一回につき、二時間くらいじっとしてくれればいい。嫌だと思うことは断ってくれていいよ。賃金はきちんと払う。」
な、なんてイージーな仕事なんだ!いや、モデルをしている人からしたら簡単ではない!と怒られるだろうが、今まで馬車馬のように働き、レインの機嫌を取っていた俺からすると、お金をもらうのも申し訳ないような仕事だ。おまけに、学校の施設も使えるんだから、図書館も食堂も使えるのか!?寮なら友達もできるかも!つまりは学校に通えるようなもんじゃないか!
「もちろん、やらせていただきます!!」
「本当か?良かった!君はきれいだし、男子のモデルはいなかったから、きっと書き甲斐があるよ。重宝されるさ。」
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