破滅エンド後にバグ!?BL乙女ゲームのヒロインポジションが、悪役サブキャラの俺に移ってます!?

きなこもち

文字の大きさ
11 / 39

捨てる神あれば拾う神あり

しおりを挟む
 俺が目を覚ますとそれはそれは暖かいベッドの上だった。
 (あぁ、俺生きてる。ソラに罠に嵌められ、レインからは無残に捨てられ、馬車にひかれそうになったんだった····)
 俺の側にいた侍女が、俺が目覚めたことに気付き、「大丈夫ですか?ご主人様をお呼びいたします。」と言い部屋を出ていった。

 部屋に入ってきたのは、気を失う直前に一瞬見えた男、第二王子クラインだった。

 確かクラインは、側室の子どもで、年齢は二十歳を越えていたかと思う。

 ソラとは、王宮の中で王子とは知らずに出会い、ゆっくりと恋心を育むという設定だっただろうか。

 黒髪の長身に、爽やかな目元、目鼻口のパーツ配置が完璧で、歯並びが良く、まるで俳優かのようなイケメン野郎だった。

「気がついたかい?身体中泥だらけ、アザだらけでビックリしたよ!君、あのひどい雨の中歩いてた?何か理由があったのかもしれないけど、良ければ聞くよ。」
 なんて気遣いができる男なんだ!俺を助けてくれた上に、事情まで聞いてくれるなんて·····それにこの低音ボイスが妙に心地いい。
「助けていただいて感謝します。あなたは僕の命の恩人です!実は·····僕は侍従でして、近くの別荘に来ていたんですが、主人の怒りを買ってしまい───解雇され、馬車を降ろされ、あげく道に迷ってるところをあなた様から助けていただきました。」
「何だって?あそこの近くの別荘って······まさか王子のレインか?」
「······御存じなのですか?」
「俺の腹違いの弟だ。俺の名はクライン。アイツ、頭に血が上りやすいとは思っていたがここまでとはな。君みたいな少年の侍従を捨て置いていくなんて······」
「いえ····不出来な僕が悪いんです。」
 最大限かわいそうに見えるように、俺は涙を堪えたような表情をし俯いた。こういう時は、できる限りの同情を買っていた方が何かと都合がいいのだ。

「君、弟がすまないことをした。俺からお詫びするよ。家はどこだい?送っていくよ。」
「実は·······家はないのです。両親はいません。学校も行かず、レイン様のお屋敷に住まわせてもらっていました。」
「えぇ!?そんな君を捨てたっていうのか!?なんて無責任な······では、君は今住む家も、仕事もない状態ということか?」
「はい、その通りです。あの·····クライン様、助けていただいた上に失礼なのですが──どんな仕事でもやります!僕に何か仕事をいただけませんか!?死ぬ気で頑張りますから!!」
 俺は涙を流しながら、ベッドから飛び降り、安い土下座で頼み込んだ。
 頼む!!俺の命はあんたにかかってるんだ!!
 クラインは、俺の肩に手を置き、慈悲深い声で話しかけた。
「───頭をあげてくれ。君、名前は?」
「イアンです。」
「イアン、弟の不始末だ。俺は事業をいくつかやっていてね、仕事や住む家は探してあげられそうだ。とにかく、今日はゆっくり休んで。明日また話そう。」
 神!!この男はまさに神のようだ!!
「うぅ····ありがとうございます!」
 俺が泣きながら喜ぶとクラインはよしよしと俺の背中を撫で、部屋を出ていった。

 ◇

 翌日やってきたクラインは、早速住む場所と仕事の話を持ちかけてきた。
「今、国内で芸術分野を伸ばそうという試みがあるんだ。俺は、芸術家を育てるために、美術専門学校の運営に携わってる。それで、ちょっと困ってることがあって·····」
「困ってることですか?」
「絵画モデルが足りてないんだよ。学生はもちろんやりたがらないし、大人数にじっと見られて絵を描かれるなんて、一般の人は抵抗があるみたいなんだ。今は、高い報酬を払って娼婦のような仕事をあまり選ばない人にお願いをしている状態だ。」
 転生前の世界だったら、絵画モデルは割と普通に聞く言葉ではあったが、この世界はまだ目新しいことなんだろう。
「良かったら····君にお願いできないか?あと、学生寮が空いててね。君は絵を描く学生ではないけど、絵画モデルとして学校に通うんだから、寮を使っても構わないし、学校の施設も好きに使っていいよ。·········どうかな?」
「絵画モデルというのは、動かずにじっとしていればいいということですか?」
「そうだ。ポーズは指示があると思うけど、一回につき、二時間くらいじっとしてくれればいい。嫌だと思うことは断ってくれていいよ。賃金はきちんと払う。」
 な、なんてイージーな仕事なんだ!いや、モデルをしている人からしたら簡単ではない!と怒られるだろうが、今まで馬車馬のように働き、レインの機嫌を取っていた俺からすると、お金をもらうのも申し訳ないような仕事だ。おまけに、学校の施設も使えるんだから、図書館も食堂も使えるのか!?寮なら友達もできるかも!つまりは学校に通えるようなもんじゃないか!
「もちろん、やらせていただきます!!」
「本当か?良かった!君はきれいだし、男子のモデルはいなかったから、きっと書き甲斐があるよ。重宝されるさ。」
 そうだといいな、と俺は頬を蒸気させながら、美術学校へ行ける日を今か今かと待ちわびた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...