破滅エンド後にバグ!?BL乙女ゲームのヒロインポジションが、悪役サブキャラの俺に移ってます!?

きなこもち

文字の大きさ
12 / 39

攻略キャラは男前と決まっている

しおりを挟む
 明日からでもぜひお願いしたい、とのことだったので、俺は翌日、ウキウキしながら学校へ向かった。
 寮に入る前に、試しに絵画モデルの仕事をするように言われた為、二階にある美術室に来ていた。
 (俺が知ってる美術室じゃない!講演会ホール並にでかい!)
 中を覗くと、ホールの中央に円形のステージがあり、そのステージを取り囲むように、百個以上の椅子が並べられている。
 (まさか、あの中央のステージに俺が行くのか!?こんな大人数に取り囲まれると思ってなかった······ヤバい、緊張してきたぞ。)

 少しすると、授業を受ける生徒達がぞろぞろと教室の中へ入っていく。制服は来ておらず、性別も年齢も様々だ。

 美術教師の女性が俺のところへ来て、軽く説明をしてくれた。
「クライン様から聞いてます。イアン君ね?絵画モデルは初めてよね?引き受けてくれてありがとう。ただ楽にしていてくれればいいから、あまり緊張しないでね。この学校は、美術を学びたい民間人向けに作られた学校なの。もちろん貴族もいるけど、性別、年齢、身分は関係ないわ。」
「あの、質問なんですが、例えば顔が痒くなったら、かいたりしていいんでしょうか?くしゃみはしても?」
「あはは!君面白いわね。もちろん大丈夫よ。大きくポーズを変えなければ、リラックスしてもらっていいの。途中眠くなってしまうモデルさんもいるのよ。」
 転生前の授業中であれば、眠くなってあくびを噛み殺しても、うつらうつらして先生が見てるときだけ起きているふりをしてもバレなかったが、ここではきっと大勢にバレてしまうだろう。
 
「それにしても、イアン君は本当に一般人?学生の絵画モデルにしてはあまりにきれいだからビックリしたわ。本当のモデルさんみたい。」
 容姿だけは良くしてくれたゲームの作者に感謝した。人間顔じゃないとはよく言うが、顔が良ければ舞い込んでくる仕事があるのだ。

 俺は、渡された白いシャツに着替え、緊張していると悟られないよう、なるべく堂々として教室に入った。
 学生達が、一斉にこちらを見た。じっと見られているのが伝わってくる。
 何でもない風を装い、ステージの上の椅子に座った。足を組んで、考え込むようなポーズをしてくれと言われたので、その通りにした。
 (今から俺は、『考える人』だ。)
 教師の合図と共に、一斉に学生達がデッサンを始めた。みんな俺を見つめながら、一心不乱に画用紙に鉛筆を走らせている。
 俺を見ているというよりは、俺という物体を見ているんだ、そう考えたら、段々と緊張がほぐれてきた。

 1時間ほどすると、俺はだんだん退屈になってきて、学生一人一人にあだ名をつけるという失礼な暇潰しを始めた。
 (あいつは、太ってて色白だから『魔神グウ』だろ、あの娘は、髪がくるくるだから『トイプードル眼鏡』だ。)
 そして、俺は一人の学生に目が止まった。とんでもない美形のやつがいて、明らかに周りから浮いている。
 俺の記憶が正しければ、アイツは確か······

 攻略対象の一人、ソラの親友、ブライトだ。

 ブライトは平民の幼馴染という設定だったが、この美術学校に通っているという裏設定があったのか·····ということは、ソラの知り合いだ。絶対に関わってはいけない!

 ブライトは、金髪だが、俺のようなプラチナブロンドではなく、茶に近いような落ち着いた色の髪色をしている。肩ほどまである髪を後ろにくくり、目も髪と同じ色をしていた。意思の強そうなキリッとした目と眉が印象的で、美青年というよりは、男前という雰囲気である。

 俺が凝視していたせいか、ブライトは俺と目が合うと、口の端で少し笑ったようにみえた。
 俺はあわてて目線を反らし、時間まで問題なくモデルの初仕事を終えた。

「イアン君お疲れ様!君、学生達から好評だったわよ!書き甲斐があるって。イアン君が出る授業は人気になるかもね~。とにかく、君を寮に案内するように言われてるの。付いてきて!」
 女性教師はそう言うと、俺を連れて学生寮を案内してくれた。

 寮の部屋の中は、俺の知る一般的な寮と同じような雰囲気だった。二人一組の部屋に二段ベッドがある。
「君の他に、既にもう一人この部屋を使ってるから、その子が来たら仲良くしてね。」
 そう言うと教師は出ていった。
 (寮の二段ベッドだ!ちょっと憧れてたんだよなぁ。どんなやつが相部屋なんだろう!)
 俺が期待に胸を膨らませて待っていると、この部屋の先の住人が戻ってきた。
「───あ、今日から転入生?あれ?あんたさっきのモデル·······この部屋の相方だったんだ?」

 そいつは先程絶対に関わりたくないと願った男前の学生だった。

 相方はブライトだったのか───!!
 BLゲームだし、まぁそうなるよな·····

 とりあえず、ここにいる間は仲良くしておくに越したことはない!ソラと知り合いなのは黙っておこうと俺は決めた。
「僕はイアン。今日からよろしくお願いします。」
 俺が握手を求めると快く握手を返してくれた。
「俺はブライト。よろしくなイアン。」
 ブライトは快活そうな笑顔を浮かべていた。なんとなくだがいいやつそうで良かった。
 こうして、俺の美術学校での生活が始まったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

処理中です...