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気まずすぎる空気
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「イアン·····?」
背後から声をかけられ、達した後脱力していた俺は死ぬほどびっくりしてしまった。
俺が何をしていたか気付いただろうか?いや、気付かないわけがない。
「また目を離すのが不安で来たんだ····そしたら君がしゃがんでるのが見えて───」
ああ、クラインは完全に気付いている。気付くも何も、息を荒くし、草むらに明らかな液がとんだ後を見れば、何をしていたかは一目瞭然だ。
俺は羞恥で顔が真っ赤になり、涙目になりながら下を向いた。クラインの顔を見ることができない。きっと、汚物を見るような目で俺を見下ろしていることだろう。
「あ、あの······これは、すみません!俺気持ち悪くて···どうしても収めなきゃって思って──」
「············」
クラインはすぐにその場を立ち去るかと思ったが、しばらくその場を動かず、何も言わずに俺を見ているようだった。
俺は恐る恐るクラインを見上げると、クラインは迷うような表情と、熱のこもった目で俺のことを見ていた。
「あ、あの·······?」
「イアンは何で、そうなったんだ?」
「·····え!?そ、その····クライン様の体が目に入って───それでなんだか邪な想像をしてしまい·····申し訳ありません!!」
俺は紛れもなく変態である。恩を仇で返すとはこのことだ。クラインは、命を助けた少年におかずにされ、その現場を見てしまった気の毒な王子だ。
クラインは俺の前にしゃがみこみ、顔を覗き込んできた。
「俺の体を見て······?イアンどうして?」
「そ、それは····だってクライン様がすごくかっこいいから──!肩を触られた時、色々想像してしまったら反応してしまって·····」
これは尋問だ。変質者に対する王子の尋問なのだ。俺はせめてもの誠意で、嘘偽りなく答えなければならない。
クラインはしばらく黙っていたが、おもむろに俺の顔に手を伸ばした。
(殴られる····!!)
とっさに俺が目をつぶった時、遠くの方から、クラインの屋敷の侍従の声がした。迎えが来たようだ。
「クライン様ー!!いらっしゃいますかー!?」
クラインは小さくため息をついた後、すぐに立ち上がり、侍従の元へ歩いていった。
俺も少し離れて後を付いていき、半渇きになった服を来て、迎えの馬車に乗せてもらった。
馬車の中でクラインと俺は何もしゃべらなかったが、クラインが俺の方をじっと見ていることに気づいていた。
きっと、これからこいつの処遇をどうしてやろうか、と考えているに違いない。レインのように、手首を切り落とすことはさすがにないだろうが、王家に関係する屋敷は間違いなく出禁になるだろう。当たり前の話である。
そしてクラインの屋敷に到着した。
「クライン様、今日は命を助けていただき、本当に感謝いたします····!それと····本当に申し訳ありませんでした!今後は僕はクライン様のご迷惑になるようなことはいたしません──!それでは!!」
あまり俺と話すのも嫌だろうと思い、逃げるようにその場を立ち去ろうとした。
「イ、イアン!ちょっと待ってくれ·····!もうちょっとゆっくりしていかないか?」
俺は耳を疑った。変態で変質者の俺を屋敷に招き入れてどうするというのだ。クラインの目的が分からず、俺は理由を聞くことすら怖くなり、丁重にお断りした。
「い、いえ!結構です·····!!失礼します!」
俺が去ろうとするのを再び呼び止め、それでは俺の屋敷まで送ると言い出した。
結構だと言っているのだ。この王子は、俺の監督責任者か何かなのだろうか。
「いえ!本当に·····僕が勝手に来たので。それでは失礼します!!」
何か言われる前にこの場から消えたかった俺は、それだけ言うとそそくさと走り去った。
後ろから、クラインが俺の名を呼ぶ声がしたが、聞こえないふりをして振り向かなかった。そして乗り合い馬車に揺られ、自分の屋敷に帰った。
自室に帰った俺は頭を抱えベッドに潜り込んだ。
(あああ!!!なんで俺はこんなに馬鹿なんだろう·····!!!せっかくいい兄貴ができてたのに、全部自分でぶち壊してしまった。全部俺のせいだけど!本当に俺のせいだけど····!レインが約束をすっぽかさなければ────)
見当違いのレインに八つ当たりしながらも、自慰の現場をよりにもよってクライン本人に見られてしまうという、この世のものとは思えぬ恥ずかしさに一晩中身悶えした。
背後から声をかけられ、達した後脱力していた俺は死ぬほどびっくりしてしまった。
俺が何をしていたか気付いただろうか?いや、気付かないわけがない。
「また目を離すのが不安で来たんだ····そしたら君がしゃがんでるのが見えて───」
ああ、クラインは完全に気付いている。気付くも何も、息を荒くし、草むらに明らかな液がとんだ後を見れば、何をしていたかは一目瞭然だ。
俺は羞恥で顔が真っ赤になり、涙目になりながら下を向いた。クラインの顔を見ることができない。きっと、汚物を見るような目で俺を見下ろしていることだろう。
「あ、あの······これは、すみません!俺気持ち悪くて···どうしても収めなきゃって思って──」
「············」
クラインはすぐにその場を立ち去るかと思ったが、しばらくその場を動かず、何も言わずに俺を見ているようだった。
俺は恐る恐るクラインを見上げると、クラインは迷うような表情と、熱のこもった目で俺のことを見ていた。
「あ、あの·······?」
「イアンは何で、そうなったんだ?」
「·····え!?そ、その····クライン様の体が目に入って───それでなんだか邪な想像をしてしまい·····申し訳ありません!!」
俺は紛れもなく変態である。恩を仇で返すとはこのことだ。クラインは、命を助けた少年におかずにされ、その現場を見てしまった気の毒な王子だ。
クラインは俺の前にしゃがみこみ、顔を覗き込んできた。
「俺の体を見て······?イアンどうして?」
「そ、それは····だってクライン様がすごくかっこいいから──!肩を触られた時、色々想像してしまったら反応してしまって·····」
これは尋問だ。変質者に対する王子の尋問なのだ。俺はせめてもの誠意で、嘘偽りなく答えなければならない。
クラインはしばらく黙っていたが、おもむろに俺の顔に手を伸ばした。
(殴られる····!!)
とっさに俺が目をつぶった時、遠くの方から、クラインの屋敷の侍従の声がした。迎えが来たようだ。
「クライン様ー!!いらっしゃいますかー!?」
クラインは小さくため息をついた後、すぐに立ち上がり、侍従の元へ歩いていった。
俺も少し離れて後を付いていき、半渇きになった服を来て、迎えの馬車に乗せてもらった。
馬車の中でクラインと俺は何もしゃべらなかったが、クラインが俺の方をじっと見ていることに気づいていた。
きっと、これからこいつの処遇をどうしてやろうか、と考えているに違いない。レインのように、手首を切り落とすことはさすがにないだろうが、王家に関係する屋敷は間違いなく出禁になるだろう。当たり前の話である。
そしてクラインの屋敷に到着した。
「クライン様、今日は命を助けていただき、本当に感謝いたします····!それと····本当に申し訳ありませんでした!今後は僕はクライン様のご迷惑になるようなことはいたしません──!それでは!!」
あまり俺と話すのも嫌だろうと思い、逃げるようにその場を立ち去ろうとした。
「イ、イアン!ちょっと待ってくれ·····!もうちょっとゆっくりしていかないか?」
俺は耳を疑った。変態で変質者の俺を屋敷に招き入れてどうするというのだ。クラインの目的が分からず、俺は理由を聞くことすら怖くなり、丁重にお断りした。
「い、いえ!結構です·····!!失礼します!」
俺が去ろうとするのを再び呼び止め、それでは俺の屋敷まで送ると言い出した。
結構だと言っているのだ。この王子は、俺の監督責任者か何かなのだろうか。
「いえ!本当に·····僕が勝手に来たので。それでは失礼します!!」
何か言われる前にこの場から消えたかった俺は、それだけ言うとそそくさと走り去った。
後ろから、クラインが俺の名を呼ぶ声がしたが、聞こえないふりをして振り向かなかった。そして乗り合い馬車に揺られ、自分の屋敷に帰った。
自室に帰った俺は頭を抱えベッドに潜り込んだ。
(あああ!!!なんで俺はこんなに馬鹿なんだろう·····!!!せっかくいい兄貴ができてたのに、全部自分でぶち壊してしまった。全部俺のせいだけど!本当に俺のせいだけど····!レインが約束をすっぽかさなければ────)
見当違いのレインに八つ当たりしながらも、自慰の現場をよりにもよってクライン本人に見られてしまうという、この世のものとは思えぬ恥ずかしさに一晩中身悶えした。
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