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久しぶりのアイツ
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翌日の朝、登校した俺は、教室の窓際に優雅に座っているレインを発見した。
文句の一つでも言ってやろうと思いズンズンと近づいた。
「おい!レイン!昨日はどうしたんだよ?迎えに来なかったじゃないか。」
俺はなるべく目立ちたくないので、かなり小声でレインを糾弾した。
「???昨日?約束の日は別の日にずらすって連絡しただろ?侍従から聞かなかったのか?」
「·······えぇ?聞いてない。」
なんということだろう。レインの屋敷からの使いが俺の屋敷の侍従に言付けたことが、俺に伝わっていなかったというのか。
両親は嫌な奴らだが、俺の屋敷の侍従も、俺を見下しているようなところがあるから、日程変更の言付けなどきっとどうでもいいと思い忘れたか、無視したんだろう。
「おまえまさか昨日待ってたのか?···なんだか悪いことしたな。」
「·········ううん。レインのせいじゃないし。気にすんなよ。」
俺はそれだけ言うと自分のクラスへ戻った。
昨日のことを誰かに相談したい·····いや、相談したいというより、話を聞いて欲しいというのが本音だが、レインやソラは、クラインと仲があまりよろしくないので絶対に無理だ。
(こんなこと相談できるのは、やっぱりアイツしかいない。)
放課後、俺はさっと学校を出て、少し前まで通っていた思い出の美術学校へ向かった。
美術学校は、授業が終わってからも遅くまで教室に残る生徒がおり、俺の親友のアイツも、放課後残って絵を仕上げることが多かった。
久しぶりに学校に足を踏み入れると、たった一ヶ月程しか経っていないのに、なんだか懐かしいような気がした。
すれ違った生徒が何人か俺に気付き、
「あれ!?イアン!!何してるの~?またモデルやってくれるの!?」と聞かれたが、今日は違う用事で来ていたので笑って誤魔化した。
アイツが受けそうな授業は何となく覚えている。心当たりのある教室をいくつか当たると、居残りをして絵を書いているアイツを見つけた。
俺は驚かそうと思い、俺に背を向けてキャンバスに向かって鉛筆を走らせているアイツの背後にそーっと近付いた。絵はまだ色塗り段階ではないので、少々驚かせても平気だろう。
「おい親友!!!」
俺が後ろからアイツの首筋に抱き付くと、ブライトは100パーセントのリアクションで大層驚いていた。
「うわぁ!!!ッッなんだよ───って、イアン!?」
ブライトは俺の顔を見るなり、驚愕の表情を浮かべたが、すぐに満面笑顔になり俺を抱き返した。
「なんだよお前!!久しぶりじゃないか?連絡もせずこの薄情者め!」
ブライトは俺の頭をグリグリしながらひどく嬉しそうにしていた。
「ごめんな!俺も色々と忙しくて。お前に会いたくなって来ちゃったよ!」
「ははっそりゃうれしいな。オレもお前に会いたかったぜ。今日は寮の部屋に泊まるだろ?お前が出ていった後、そのまま空いてるから寂しくてさ。こっそり泊まっていけよ!」
実は俺もそのつもりで来た。本当は既に部外者なので泊まるのはだめだろうが、ブライトと一緒に寮に入ればそこまで厳しくチェックされないだろう。
久しぶりの俺たちの部屋は相変わらずだったが、二段ベッドの上段の俺が寝ていた場所だけがガランとして、確かに寂しい感じがした。
「お前が来るとやっぱり明るくなっていいな!で?学園はどうだ?嫌なことないか····?」
ブライトは、おそらくレインやソラとのことを言っているのだろう。俺が過去に彼らと揉めたことを知っているので、友達なりに心配してくれているのだ。
「うん。驚くことに、実は王子やソラとも和解してさ。今は友達になったんだ。」
「へぇ?お前あんなことされたのによく許せたな?馬鹿って嫌なこともすぐ忘れるところがうらやましいよな。」
「は?なんだとこの!!」
俺が枕をブライトに投げると笑いながらひょいとかわされた。
「でもさ、お前なんかあったんじゃないの?だからここに来たって気がするんだけど。」
さすがは親友。俺のことはすべてお見通しと言うわけか。俺は、ブライトに何をどこまで話そうか悩んでしまった。以前、レインとのことを赤裸々に話してしまった結果、喧嘩のような状態になってしまったことがあるので、全てを白状することは躊躇われた。
「うん。ブライトはさ、例えばなんだけど、お前の命の恩人がいたとするだろ?その人に、すごく失礼で気持ち悪いことをしてしまって、合わす顔もなくなったらどうする?もうその人の目の前に現れないように避ける?それとも、許してもらえるまで謝り続ける?」
「········すごく抽象的な質問だな。それってあの人だろ?お前のこと世話してくれた、第二王子?──すごく失礼で気持ち悪いって、お前何したの?何か聞くのも怖いけど。」
ブライトは呆れたような顔で俺を見た。
「───細かいことは知らなくていいんだよ!とにかく、お前だったらどうする?·····」
「うーん。相手の気持ち次第かな。相手はお前のことどう思ってんの?『もう顔も見せんな!』って感じなんだったら俺は消えるかな。でも、別に許してくれそうなら、あんまり気にしなくていいんじゃねえの?」
「·····その人は怒ってる感じではなかったけど、ひいてるとか呆れてるとか、そんな感じだと思う。俺が年下だし、最後まで面倒見なきゃって思って強く言ってこないだけかも。」
「ふーん。そうなら、避けるまではしなくても、お前からは関わらないようにすればいいんじゃないの?相手も大人なら、分かりやすく態度に出すようなことしないだろ。」
確かにクラインは、俺のことを『クッソ気色悪い迷惑なガキ』だと思っていたとしても、表面上は態度に出さないような気がする。
クラインに対し、淡い気持ちを抱いてしまった俺としては、関わりがなくなるのはひどく寂しいが、今よりももっと嫌われてしまうのは避けたかった。
「だよな·····俺そうする。ブライトありがと。」
何となく落としどころを見つけた俺は、モヤモヤしていた心が少しだけ軽くなった。ブライトに話したおかげだ。
「あんま悩むなよ。お前は能天気に過ごしてるのがいいんだよ。───今日は寝床ないし、俺と一緒に寝るだろ?」
「うん。邪魔していいか?」
そろそろ寝ようということになり、俺はブライトのベッドの中に体を滑り込ませた。ベッドは広くないため、男2人で入るとかなり狭く、密着した状態になった。
近くで見るとブライトはやはりうらやましい程の男前だ。俺が女なら、『ワンナイトでもいいから抱いて!』と懇願したことだろう。
修学旅行の夜のようなおかしなテンションになった俺は、久しぶりに会った友人と恋愛トークがしたくなり、明かりを消した暗闇の中ブライトに話しかけた。
文句の一つでも言ってやろうと思いズンズンと近づいた。
「おい!レイン!昨日はどうしたんだよ?迎えに来なかったじゃないか。」
俺はなるべく目立ちたくないので、かなり小声でレインを糾弾した。
「???昨日?約束の日は別の日にずらすって連絡しただろ?侍従から聞かなかったのか?」
「·······えぇ?聞いてない。」
なんということだろう。レインの屋敷からの使いが俺の屋敷の侍従に言付けたことが、俺に伝わっていなかったというのか。
両親は嫌な奴らだが、俺の屋敷の侍従も、俺を見下しているようなところがあるから、日程変更の言付けなどきっとどうでもいいと思い忘れたか、無視したんだろう。
「おまえまさか昨日待ってたのか?···なんだか悪いことしたな。」
「·········ううん。レインのせいじゃないし。気にすんなよ。」
俺はそれだけ言うと自分のクラスへ戻った。
昨日のことを誰かに相談したい·····いや、相談したいというより、話を聞いて欲しいというのが本音だが、レインやソラは、クラインと仲があまりよろしくないので絶対に無理だ。
(こんなこと相談できるのは、やっぱりアイツしかいない。)
放課後、俺はさっと学校を出て、少し前まで通っていた思い出の美術学校へ向かった。
美術学校は、授業が終わってからも遅くまで教室に残る生徒がおり、俺の親友のアイツも、放課後残って絵を仕上げることが多かった。
久しぶりに学校に足を踏み入れると、たった一ヶ月程しか経っていないのに、なんだか懐かしいような気がした。
すれ違った生徒が何人か俺に気付き、
「あれ!?イアン!!何してるの~?またモデルやってくれるの!?」と聞かれたが、今日は違う用事で来ていたので笑って誤魔化した。
アイツが受けそうな授業は何となく覚えている。心当たりのある教室をいくつか当たると、居残りをして絵を書いているアイツを見つけた。
俺は驚かそうと思い、俺に背を向けてキャンバスに向かって鉛筆を走らせているアイツの背後にそーっと近付いた。絵はまだ色塗り段階ではないので、少々驚かせても平気だろう。
「おい親友!!!」
俺が後ろからアイツの首筋に抱き付くと、ブライトは100パーセントのリアクションで大層驚いていた。
「うわぁ!!!ッッなんだよ───って、イアン!?」
ブライトは俺の顔を見るなり、驚愕の表情を浮かべたが、すぐに満面笑顔になり俺を抱き返した。
「なんだよお前!!久しぶりじゃないか?連絡もせずこの薄情者め!」
ブライトは俺の頭をグリグリしながらひどく嬉しそうにしていた。
「ごめんな!俺も色々と忙しくて。お前に会いたくなって来ちゃったよ!」
「ははっそりゃうれしいな。オレもお前に会いたかったぜ。今日は寮の部屋に泊まるだろ?お前が出ていった後、そのまま空いてるから寂しくてさ。こっそり泊まっていけよ!」
実は俺もそのつもりで来た。本当は既に部外者なので泊まるのはだめだろうが、ブライトと一緒に寮に入ればそこまで厳しくチェックされないだろう。
久しぶりの俺たちの部屋は相変わらずだったが、二段ベッドの上段の俺が寝ていた場所だけがガランとして、確かに寂しい感じがした。
「お前が来るとやっぱり明るくなっていいな!で?学園はどうだ?嫌なことないか····?」
ブライトは、おそらくレインやソラとのことを言っているのだろう。俺が過去に彼らと揉めたことを知っているので、友達なりに心配してくれているのだ。
「うん。驚くことに、実は王子やソラとも和解してさ。今は友達になったんだ。」
「へぇ?お前あんなことされたのによく許せたな?馬鹿って嫌なこともすぐ忘れるところがうらやましいよな。」
「は?なんだとこの!!」
俺が枕をブライトに投げると笑いながらひょいとかわされた。
「でもさ、お前なんかあったんじゃないの?だからここに来たって気がするんだけど。」
さすがは親友。俺のことはすべてお見通しと言うわけか。俺は、ブライトに何をどこまで話そうか悩んでしまった。以前、レインとのことを赤裸々に話してしまった結果、喧嘩のような状態になってしまったことがあるので、全てを白状することは躊躇われた。
「うん。ブライトはさ、例えばなんだけど、お前の命の恩人がいたとするだろ?その人に、すごく失礼で気持ち悪いことをしてしまって、合わす顔もなくなったらどうする?もうその人の目の前に現れないように避ける?それとも、許してもらえるまで謝り続ける?」
「········すごく抽象的な質問だな。それってあの人だろ?お前のこと世話してくれた、第二王子?──すごく失礼で気持ち悪いって、お前何したの?何か聞くのも怖いけど。」
ブライトは呆れたような顔で俺を見た。
「───細かいことは知らなくていいんだよ!とにかく、お前だったらどうする?·····」
「うーん。相手の気持ち次第かな。相手はお前のことどう思ってんの?『もう顔も見せんな!』って感じなんだったら俺は消えるかな。でも、別に許してくれそうなら、あんまり気にしなくていいんじゃねえの?」
「·····その人は怒ってる感じではなかったけど、ひいてるとか呆れてるとか、そんな感じだと思う。俺が年下だし、最後まで面倒見なきゃって思って強く言ってこないだけかも。」
「ふーん。そうなら、避けるまではしなくても、お前からは関わらないようにすればいいんじゃないの?相手も大人なら、分かりやすく態度に出すようなことしないだろ。」
確かにクラインは、俺のことを『クッソ気色悪い迷惑なガキ』だと思っていたとしても、表面上は態度に出さないような気がする。
クラインに対し、淡い気持ちを抱いてしまった俺としては、関わりがなくなるのはひどく寂しいが、今よりももっと嫌われてしまうのは避けたかった。
「だよな·····俺そうする。ブライトありがと。」
何となく落としどころを見つけた俺は、モヤモヤしていた心が少しだけ軽くなった。ブライトに話したおかげだ。
「あんま悩むなよ。お前は能天気に過ごしてるのがいいんだよ。───今日は寝床ないし、俺と一緒に寝るだろ?」
「うん。邪魔していいか?」
そろそろ寝ようということになり、俺はブライトのベッドの中に体を滑り込ませた。ベッドは広くないため、男2人で入るとかなり狭く、密着した状態になった。
近くで見るとブライトはやはりうらやましい程の男前だ。俺が女なら、『ワンナイトでもいいから抱いて!』と懇願したことだろう。
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