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六章 父の帰宅
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新が朝目覚めると、リビングの方からほのかに薫る味噌汁の匂いがした。
リビングに顔を出すと、友里は既に起きていて、朝食をキッチンテーブルの上に並べて新を待っていた。
「あ、新おはよう。」
友里は、昨夜何事もなかったように「冷める前に食べよ。」と言った。
「美味そう·····いただきます。」
二人で黙々と箸を進めていたが、いたたまれなくなった新が口を開いた。
「あのさ、友里。昨日はなんかごめん。どうかしてたわ俺·······」
友里は箸を止め、上目遣いで新を見た。
「········ううん。俺、新に感謝してるんだ。」
友里はニコリと微笑むと、それ以上は何も言ってこなかった。
その日を境に、友里は家に帰ってからも、今まで通り男友達として接してはくるが、一切新に触れてくることはしなくなった。
『男と手を繋いで寝るのは気色悪い』と新が言ったせいなのか、寝る時も、友里は新の部屋に来なくなった。
新は、友里との間に今までにはない壁ができてしまったようで焦燥に駆られ、軽率な自分の発言を悔やんだ。
それでも穏やかに日々は過ぎていった。翌日に三者面談を控えた日の朝
、いつものように友里と新が揃って朝食を食べていた時、新のスマートフォンから一本の着信が鳴った。
「?誰だ?こんな朝早く·····親父?」
めったにかけてくることのない新の父からの電話に不審に思いながらも、新は電話に出た。
「久しぶり····うん。うん明日だよ。え?なんで?いやいいよ帰ってこなくて。そんな急に······」
何やら父親と揉めているような雰囲気を察し、友里は様子を見守っていた。
一方的に向こうから切られた形で電話が終わると、新は渋い顔をしたまま大きなため息をついた。
「どうした?新の親父さん、何て?」
「········今日の夜からマンションに戻ってくるって。大きな仕事が終わったから、長期で家にいるって。」
「え、そうなの?じゃあ俺、部屋片付けないと。急いで荷物まとめてくる!」
友里が慌てて椅子から立ち上がろうとすると、新に肩を掴まれ再び椅子に座らされた。
「友里待てよ。親父には話すから、お前はここにいて。あんな家に帰るなよ。」
「ううん。そこまで迷惑かける気ないから。·········大丈夫だよ新、心配しないで。俺もう小学生じゃないし、アイツのいいなりにはならない。元々父さんと俺の家なんだ。そろそろ帰らなきゃ。ありがとな、匿ってくれて。」
「·············なんかあったら絶対連絡しろよ。」
新は納得していないような顔をしていたが、新の両親にまで迷惑をかけるのはごめんだった。
友里の問題に、新は巻き込まれたようなものだ。友里も引き際は心得ていた。
新との生活は名残惜しかったが、友里は覚悟を決め、一ヵ月ぶりに静へラインを送った。
「家に戻ります。」
すぐに既読が付き、「分かりました。」とだけ返信があった。
その日学校が終わり、友里は住み慣れた自分の家の前に立ち竦んでいた。
玄関の扉を開けるのが怖い。
静はどんな言葉を投げつけてくるだろうか。
「この恩知らず」とか、「なんで帰ってきた」とか、もしかしたら刃物でも持っているかもしれない。
最悪のことを想定しながら、友里は玄関の扉を開けた。
扉を開けると、玄関口には静が佇んでおり、友里はビクッと体を震わせた。
「おかえり、ゆうくん」
静の不気味なほど穏やかな声に違和感を感じ、友里は警戒心を緩めなかった。
「ただいま·······」
「帰ってきてくれてありがとう。私、ゆうくんと話したいの。こっち座って。」
友里は恐る恐るリビングの椅子に座った。何を話そうというのか、静の企みが分からなかった。
「私ね、ゆうくんがいなくなってから色々考えたの。ゆうくん、今まで本当にごめんなさい········これはあなたに返す。」
静は、友里のアルバイト代が入った通帳をテーブルの上に置いた。
友里は通帳を凝視し手に取ると、不可解な目で静を見た。
「静さん、なんで·······?」
「だって、あなたのお金だもん。私が母親らしいこと何もしてあげられなかった。だからお金を稼がなきゃいけなかったのよね?ゆうくんが家を出たいって聞いた時、ショックだったけど、それも仕方ないわよね。」
「····················」
友里が黙っていると、なおも静は言葉を続けた。
「私、お父さんと結婚した時期は色々あってね。精神的に参ってたの。そんな時、無垢で純粋で、私を慕ってくれるあなたにすごく癒された。その気持ちが行き過ぎてしまって·····まだ幼いあなたにひどいことしたわ。本当にごめんなさい。」
静は嗚咽しながら泣き出し、ハンカチで顔を覆った。
「でも、お父さんがあんなことになって·······私余計に自分を責めたわ。気持ちの行き場がなくなって、それがすべてあなたに向いた。あなたが愛しくて愛しくて、憎かった。」
泣きじゃくりながら話す静を見ても、友里は共感できなかった。
静は静なりに大変だったのかもしれない。しかし、少なくとも友里の目には、父の死によって、静が何かに苦しんでいるようには見えなかったからだ。
怠惰で、嫉妬深く、若い男の性に固執する異常な女にしか見えなかった。
だが、静が改心をしていて、今後何も起こらないのなら、友里はそれで充分だった。
「そうだったんだ·········俺、静さんとのこともう忘れるよ。だから、卒業まであと少しだけど、ここにいさせてください。」
「ええ!もちろん········ここはゆうくんの家だもん。許してくれてありがとう。」
許したとか許してないとか、友里にはどうでもいいことだった。無事に静と関係が絶てるのであれば何だってする。
そうして友里は再び静と暮らし始めた。静の言葉を信じず、警戒心を解かなかった友里だったが、静は心を入れ替えたように友里に一切干渉してこなくなった。
一週間も経つと、平穏な日常に次第に慣れ、静とは日常会話程度はするようになっていた。
静は頻繁に料理をするようになった。せっかく友里の分まで用意しているのであれば、材料の無駄になってしまう。このところ、朝食や夕食は二人揃って取ることが増えた。
ある時、静が友里に提案してきた。
「ねぇゆうくん、お友達から有名なレストランの招待券もらったの。ゆうくん卒業したら家出ちゃうし·······最後の記念に、たまには外食でもしない?」
静にそのように言われ、気乗りしない友里だったが、そのレストランというのが中々予約が取れないような、高級レストランだった。
友里も人並みにミーハー的な気持ちはあり、美味しいディナーにありつけるならいいかと、静の誘いに乗った。
学校で新にそのことを話すと、新は呆れながら友里の頭を下敷きではたいた。
「友里!ほんとに行くのか?信じられないんだけど。大体、ペドフィリアの変態女が急に心を入れ替えるなんておかしくないか?」
新の声が大きかったので、友里は周囲を気にしながら新の口を押さえた。
「俺もあの女のことは別に信じてないよ。でも、家に戻ってから本当に何も起きないし。高級ディナーが俺を待ってる。食べ物に罪はないだろ?」
新はため息をつくと、ジロっとした目で友里に忠告してきた。
「········でも気を付けろよ。薬入れられたりとか······」
「新!薬入れるなら家でいつでも入れられるだろ?心配しすぎ!」
友里は、新の心配を笑って一蹴した。
そして静との約束の当日。
いつものようにTシャツとジーパンにスニーカーで家を出ようとしていた友里を、静が呼び止めた。
「ゆうくん、今日行くのは高めのレストランだから······普通、皆ドレスコードしてくるのよ。」
「え?そうなの?俺持ってないよ。」
「大丈夫。そうだと思って、私用意しておいた。」
友里は、静が用意したという紺色のジャケットスーツに袖を通した。
鏡で自分の姿を見ると、まるで別人に見えた。言われなければ未成年にも見えない。
「わぁ·····ゆうくん素敵よ。じゃあ、いこっか。」
着いたレストランはビルの高層階にあり、都心の夜景が綺麗に見えた。友里は一緒に来たのが静ということが不満てはあったが、次々と出てくる見たこともないような高級料理はどれも美味しく、友里は気分が良くなった。
デザートを食べ終えた後、友里が用を足そうと少し席を離れた。
戻ってくると、友里の席の前に、きれいなピンク色の液体の入ったグラスが置かれていた。
「少し遅いけど、誕生日祝い。今年は一緒に祝えなかったから。」
「これ········お酒?」
「うん。シャンパンだよ。フルーツの味で飲みやすいの。ゆうくん未成年だけど······少しだけだし、今日くらいいいんじゃない?」
友里はピンク色に染まるグラスを眺めた。炭酸の泡が発泡していて、すごく美味しそうに見えた。
大人が美味しそうに飲む酒とはどんな味がするのか、その瞬間、友里はすごく気になってしまい、目の前のシャンパンを飲みたいという衝動に駆られた。
友里はグラスを持ち、シャンパンを二、三口嚥下した。
喉に流れ込んだアルコールは少し熱く感じ、フルーツの甘さと共に少しの苦味があった。
「初めて飲んだね。どう?おいしい?」
「うーん·····美味しくはない。ちょっと苦いし。」
「苦いかぁ。まぁそうだよね。これがお酒。」
静は柔らかく微笑み、友里の手を握った。
重ねられた手の体温が不快だった。すぐに目を開けていられない程の眠気が襲ってきた。おかしいと思い席を立ったが、足元に力が入らず、ふらついたところを静に支えられた。
「あらぁ······ゆうくんお酒初めてだったから酔っちゃったんだね。」
静は笑いながらそう言った。
静はウェイターを呼び止め何やら話していた。その間も友里は視界がぼやけ、一人では立っていられなくなった。
ウェイターの男性に支えられながら、エレベーターの前まで連れて行かれた。
『気を付けろよ。薬入れられたりとか·····』
ふと新の言葉が脳裏に浮かんだ。
そして思考する間もなく、友里はすぐに意識が途切れた。
リビングに顔を出すと、友里は既に起きていて、朝食をキッチンテーブルの上に並べて新を待っていた。
「あ、新おはよう。」
友里は、昨夜何事もなかったように「冷める前に食べよ。」と言った。
「美味そう·····いただきます。」
二人で黙々と箸を進めていたが、いたたまれなくなった新が口を開いた。
「あのさ、友里。昨日はなんかごめん。どうかしてたわ俺·······」
友里は箸を止め、上目遣いで新を見た。
「········ううん。俺、新に感謝してるんだ。」
友里はニコリと微笑むと、それ以上は何も言ってこなかった。
その日を境に、友里は家に帰ってからも、今まで通り男友達として接してはくるが、一切新に触れてくることはしなくなった。
『男と手を繋いで寝るのは気色悪い』と新が言ったせいなのか、寝る時も、友里は新の部屋に来なくなった。
新は、友里との間に今までにはない壁ができてしまったようで焦燥に駆られ、軽率な自分の発言を悔やんだ。
それでも穏やかに日々は過ぎていった。翌日に三者面談を控えた日の朝
、いつものように友里と新が揃って朝食を食べていた時、新のスマートフォンから一本の着信が鳴った。
「?誰だ?こんな朝早く·····親父?」
めったにかけてくることのない新の父からの電話に不審に思いながらも、新は電話に出た。
「久しぶり····うん。うん明日だよ。え?なんで?いやいいよ帰ってこなくて。そんな急に······」
何やら父親と揉めているような雰囲気を察し、友里は様子を見守っていた。
一方的に向こうから切られた形で電話が終わると、新は渋い顔をしたまま大きなため息をついた。
「どうした?新の親父さん、何て?」
「········今日の夜からマンションに戻ってくるって。大きな仕事が終わったから、長期で家にいるって。」
「え、そうなの?じゃあ俺、部屋片付けないと。急いで荷物まとめてくる!」
友里が慌てて椅子から立ち上がろうとすると、新に肩を掴まれ再び椅子に座らされた。
「友里待てよ。親父には話すから、お前はここにいて。あんな家に帰るなよ。」
「ううん。そこまで迷惑かける気ないから。·········大丈夫だよ新、心配しないで。俺もう小学生じゃないし、アイツのいいなりにはならない。元々父さんと俺の家なんだ。そろそろ帰らなきゃ。ありがとな、匿ってくれて。」
「·············なんかあったら絶対連絡しろよ。」
新は納得していないような顔をしていたが、新の両親にまで迷惑をかけるのはごめんだった。
友里の問題に、新は巻き込まれたようなものだ。友里も引き際は心得ていた。
新との生活は名残惜しかったが、友里は覚悟を決め、一ヵ月ぶりに静へラインを送った。
「家に戻ります。」
すぐに既読が付き、「分かりました。」とだけ返信があった。
その日学校が終わり、友里は住み慣れた自分の家の前に立ち竦んでいた。
玄関の扉を開けるのが怖い。
静はどんな言葉を投げつけてくるだろうか。
「この恩知らず」とか、「なんで帰ってきた」とか、もしかしたら刃物でも持っているかもしれない。
最悪のことを想定しながら、友里は玄関の扉を開けた。
扉を開けると、玄関口には静が佇んでおり、友里はビクッと体を震わせた。
「おかえり、ゆうくん」
静の不気味なほど穏やかな声に違和感を感じ、友里は警戒心を緩めなかった。
「ただいま·······」
「帰ってきてくれてありがとう。私、ゆうくんと話したいの。こっち座って。」
友里は恐る恐るリビングの椅子に座った。何を話そうというのか、静の企みが分からなかった。
「私ね、ゆうくんがいなくなってから色々考えたの。ゆうくん、今まで本当にごめんなさい········これはあなたに返す。」
静は、友里のアルバイト代が入った通帳をテーブルの上に置いた。
友里は通帳を凝視し手に取ると、不可解な目で静を見た。
「静さん、なんで·······?」
「だって、あなたのお金だもん。私が母親らしいこと何もしてあげられなかった。だからお金を稼がなきゃいけなかったのよね?ゆうくんが家を出たいって聞いた時、ショックだったけど、それも仕方ないわよね。」
「····················」
友里が黙っていると、なおも静は言葉を続けた。
「私、お父さんと結婚した時期は色々あってね。精神的に参ってたの。そんな時、無垢で純粋で、私を慕ってくれるあなたにすごく癒された。その気持ちが行き過ぎてしまって·····まだ幼いあなたにひどいことしたわ。本当にごめんなさい。」
静は嗚咽しながら泣き出し、ハンカチで顔を覆った。
「でも、お父さんがあんなことになって·······私余計に自分を責めたわ。気持ちの行き場がなくなって、それがすべてあなたに向いた。あなたが愛しくて愛しくて、憎かった。」
泣きじゃくりながら話す静を見ても、友里は共感できなかった。
静は静なりに大変だったのかもしれない。しかし、少なくとも友里の目には、父の死によって、静が何かに苦しんでいるようには見えなかったからだ。
怠惰で、嫉妬深く、若い男の性に固執する異常な女にしか見えなかった。
だが、静が改心をしていて、今後何も起こらないのなら、友里はそれで充分だった。
「そうだったんだ·········俺、静さんとのこともう忘れるよ。だから、卒業まであと少しだけど、ここにいさせてください。」
「ええ!もちろん········ここはゆうくんの家だもん。許してくれてありがとう。」
許したとか許してないとか、友里にはどうでもいいことだった。無事に静と関係が絶てるのであれば何だってする。
そうして友里は再び静と暮らし始めた。静の言葉を信じず、警戒心を解かなかった友里だったが、静は心を入れ替えたように友里に一切干渉してこなくなった。
一週間も経つと、平穏な日常に次第に慣れ、静とは日常会話程度はするようになっていた。
静は頻繁に料理をするようになった。せっかく友里の分まで用意しているのであれば、材料の無駄になってしまう。このところ、朝食や夕食は二人揃って取ることが増えた。
ある時、静が友里に提案してきた。
「ねぇゆうくん、お友達から有名なレストランの招待券もらったの。ゆうくん卒業したら家出ちゃうし·······最後の記念に、たまには外食でもしない?」
静にそのように言われ、気乗りしない友里だったが、そのレストランというのが中々予約が取れないような、高級レストランだった。
友里も人並みにミーハー的な気持ちはあり、美味しいディナーにありつけるならいいかと、静の誘いに乗った。
学校で新にそのことを話すと、新は呆れながら友里の頭を下敷きではたいた。
「友里!ほんとに行くのか?信じられないんだけど。大体、ペドフィリアの変態女が急に心を入れ替えるなんておかしくないか?」
新の声が大きかったので、友里は周囲を気にしながら新の口を押さえた。
「俺もあの女のことは別に信じてないよ。でも、家に戻ってから本当に何も起きないし。高級ディナーが俺を待ってる。食べ物に罪はないだろ?」
新はため息をつくと、ジロっとした目で友里に忠告してきた。
「········でも気を付けろよ。薬入れられたりとか······」
「新!薬入れるなら家でいつでも入れられるだろ?心配しすぎ!」
友里は、新の心配を笑って一蹴した。
そして静との約束の当日。
いつものようにTシャツとジーパンにスニーカーで家を出ようとしていた友里を、静が呼び止めた。
「ゆうくん、今日行くのは高めのレストランだから······普通、皆ドレスコードしてくるのよ。」
「え?そうなの?俺持ってないよ。」
「大丈夫。そうだと思って、私用意しておいた。」
友里は、静が用意したという紺色のジャケットスーツに袖を通した。
鏡で自分の姿を見ると、まるで別人に見えた。言われなければ未成年にも見えない。
「わぁ·····ゆうくん素敵よ。じゃあ、いこっか。」
着いたレストランはビルの高層階にあり、都心の夜景が綺麗に見えた。友里は一緒に来たのが静ということが不満てはあったが、次々と出てくる見たこともないような高級料理はどれも美味しく、友里は気分が良くなった。
デザートを食べ終えた後、友里が用を足そうと少し席を離れた。
戻ってくると、友里の席の前に、きれいなピンク色の液体の入ったグラスが置かれていた。
「少し遅いけど、誕生日祝い。今年は一緒に祝えなかったから。」
「これ········お酒?」
「うん。シャンパンだよ。フルーツの味で飲みやすいの。ゆうくん未成年だけど······少しだけだし、今日くらいいいんじゃない?」
友里はピンク色に染まるグラスを眺めた。炭酸の泡が発泡していて、すごく美味しそうに見えた。
大人が美味しそうに飲む酒とはどんな味がするのか、その瞬間、友里はすごく気になってしまい、目の前のシャンパンを飲みたいという衝動に駆られた。
友里はグラスを持ち、シャンパンを二、三口嚥下した。
喉に流れ込んだアルコールは少し熱く感じ、フルーツの甘さと共に少しの苦味があった。
「初めて飲んだね。どう?おいしい?」
「うーん·····美味しくはない。ちょっと苦いし。」
「苦いかぁ。まぁそうだよね。これがお酒。」
静は柔らかく微笑み、友里の手を握った。
重ねられた手の体温が不快だった。すぐに目を開けていられない程の眠気が襲ってきた。おかしいと思い席を立ったが、足元に力が入らず、ふらついたところを静に支えられた。
「あらぁ······ゆうくんお酒初めてだったから酔っちゃったんだね。」
静は笑いながらそう言った。
静はウェイターを呼び止め何やら話していた。その間も友里は視界がぼやけ、一人では立っていられなくなった。
ウェイターの男性に支えられながら、エレベーターの前まで連れて行かれた。
『気を付けろよ。薬入れられたりとか·····』
ふと新の言葉が脳裏に浮かんだ。
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