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知らない親友
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最愛の夫と、親友の決定的な浮気現場を目の当たりにしてしまった奈緒子は、この場で見て見ぬふりをして帰ることなどできなかった。
2人とも、奈緒子には内緒で、お互いにそ知らぬふりをしていたのだから、やましいことがある証拠だろう。
奈緒子が2人にゆっくりと近付いていくと、先にこちら側を向いていたはるかが気付いた。
「·····奈緒子?」
親友は、突然の奈緒子の出現に驚いたのか、幽霊でも見るような表情で奈緒子を見ている。
すぐに弘人も振り返り、奈緒子を見た
「奈緒子!?どうしてここに······!!」
奈緒子は怒りに震えながらも、冷静さを装って2人に話しかけた。
「こんにちは。ごめんね、弘人。最近様子がおかしいから、後をつけさせてもらったの。そしたらビックリしちゃった!浮気相手ってはるかだったんだね!」
奈緒子は笑っていたが、泣いていた。自分でも、自信の感情がコントロールできない。怒りと、悲しみと、情けなさが押し寄せてきた。
「奈緒子·····!本当にごめん!!これは違うんだ。山内さんは俺のジムの会員さんだったんだけど、途中まで本当に奈緒子の友達って知らなくて····!」
「へぇ。浮気してたって認めるんだ。ひろくんって変なとこだけ善人ぶるよね。友達じゃなかったら堂々と浮気してたってこと?まぁ、友達って分かってても続けてるんだから、同じことだけどね。」
奈緒子が淡々と弘人を非難すると、弘人はひどく悲しそうな顔になった。
「泣きそうな顔しないでくれる?泣きたいのはこっちなんだから。」
侮蔑を込めた目で、奈緒子は弘人を睨んだ。
それまで黙って2人のやりとりを見ていたはるかが口を開いた。
「奈緒子、弘人君だけ責めるのはやめてくれない?」
はるかの言葉に、奈緒子はピクッと反応した。
「何ですって?」
「奈緒子はさぁ、弘人君みたいな人と付き合えて、結婚までできたことに感謝しなきゃ!もともと釣り合ってなかったじゃん。それなのに、自分に魅力がないのを棚にあげて、女性として磨くこともしないし、弘人君を支えてあげることもしなかったから私と浮気しちゃったんでしょ?」
「弘人君言ってたよ?奈緒子はかわいいけど、女性としてはドキドキしないし、どうしても会いたいって思わないって。」
この女は本当に私の知るはるかなんだろうか?何かに乗っ取られて、人格が変わってしまっているのだろうか?奈緒子は、頭の片隅でそう考えていた。
「はるか、何で····?私のこと嫌いだったの?」
「まさか!奈緒子のこと、今でも大好きよ。お人好しで、間抜けで、世間知らずなあなたが大好き。」
何を思ったのか、はるかは奈緒子を抱き締めてきた。
「泣いていいのよ奈緒子。昔から、あなたが傷ついた時はよくこうしてあげたでしょ。」
奈緒子はもう分からなかった。抱き締められた感覚が、昔のままのはるかだったからだ。裏切られたのに、2人を心底憎みきれない自分が嫌で、涙が止まらなかった。
奈緒子がしゃくりあげていると、陰で隠れていた寅がおどおどしながら奈緒子とはるかを引き離した。
「あのー···奈緒子さん、一旦帰りましょう。2人とも浮気したって認めたところも含めて動画もとりました。このままここにいれば、この人に言いくるめられます。」
嗚咽している奈緒子の背中をさすりながら、寅が帰ろうとすると、弘人に呼び止められた。
「·····待って!君は誰?なぜ奈緒子と一緒にいるんだ?」
この期に及んで、妻に近づく男への嫉妬心を感じ取った寅は、不機嫌そうに答えた。
「ただの奈緒子さんの職場に通っている学生です。あなた方のような乱れた関係ではありません。それでは、失礼します。」
弘人は奈緒子を追いかけようとしたが、はるかに腕を掴まれ、引き留められていた。
2人とも、奈緒子には内緒で、お互いにそ知らぬふりをしていたのだから、やましいことがある証拠だろう。
奈緒子が2人にゆっくりと近付いていくと、先にこちら側を向いていたはるかが気付いた。
「·····奈緒子?」
親友は、突然の奈緒子の出現に驚いたのか、幽霊でも見るような表情で奈緒子を見ている。
すぐに弘人も振り返り、奈緒子を見た
「奈緒子!?どうしてここに······!!」
奈緒子は怒りに震えながらも、冷静さを装って2人に話しかけた。
「こんにちは。ごめんね、弘人。最近様子がおかしいから、後をつけさせてもらったの。そしたらビックリしちゃった!浮気相手ってはるかだったんだね!」
奈緒子は笑っていたが、泣いていた。自分でも、自信の感情がコントロールできない。怒りと、悲しみと、情けなさが押し寄せてきた。
「奈緒子·····!本当にごめん!!これは違うんだ。山内さんは俺のジムの会員さんだったんだけど、途中まで本当に奈緒子の友達って知らなくて····!」
「へぇ。浮気してたって認めるんだ。ひろくんって変なとこだけ善人ぶるよね。友達じゃなかったら堂々と浮気してたってこと?まぁ、友達って分かってても続けてるんだから、同じことだけどね。」
奈緒子が淡々と弘人を非難すると、弘人はひどく悲しそうな顔になった。
「泣きそうな顔しないでくれる?泣きたいのはこっちなんだから。」
侮蔑を込めた目で、奈緒子は弘人を睨んだ。
それまで黙って2人のやりとりを見ていたはるかが口を開いた。
「奈緒子、弘人君だけ責めるのはやめてくれない?」
はるかの言葉に、奈緒子はピクッと反応した。
「何ですって?」
「奈緒子はさぁ、弘人君みたいな人と付き合えて、結婚までできたことに感謝しなきゃ!もともと釣り合ってなかったじゃん。それなのに、自分に魅力がないのを棚にあげて、女性として磨くこともしないし、弘人君を支えてあげることもしなかったから私と浮気しちゃったんでしょ?」
「弘人君言ってたよ?奈緒子はかわいいけど、女性としてはドキドキしないし、どうしても会いたいって思わないって。」
この女は本当に私の知るはるかなんだろうか?何かに乗っ取られて、人格が変わってしまっているのだろうか?奈緒子は、頭の片隅でそう考えていた。
「はるか、何で····?私のこと嫌いだったの?」
「まさか!奈緒子のこと、今でも大好きよ。お人好しで、間抜けで、世間知らずなあなたが大好き。」
何を思ったのか、はるかは奈緒子を抱き締めてきた。
「泣いていいのよ奈緒子。昔から、あなたが傷ついた時はよくこうしてあげたでしょ。」
奈緒子はもう分からなかった。抱き締められた感覚が、昔のままのはるかだったからだ。裏切られたのに、2人を心底憎みきれない自分が嫌で、涙が止まらなかった。
奈緒子がしゃくりあげていると、陰で隠れていた寅がおどおどしながら奈緒子とはるかを引き離した。
「あのー···奈緒子さん、一旦帰りましょう。2人とも浮気したって認めたところも含めて動画もとりました。このままここにいれば、この人に言いくるめられます。」
嗚咽している奈緒子の背中をさすりながら、寅が帰ろうとすると、弘人に呼び止められた。
「·····待って!君は誰?なぜ奈緒子と一緒にいるんだ?」
この期に及んで、妻に近づく男への嫉妬心を感じ取った寅は、不機嫌そうに答えた。
「ただの奈緒子さんの職場に通っている学生です。あなた方のような乱れた関係ではありません。それでは、失礼します。」
弘人は奈緒子を追いかけようとしたが、はるかに腕を掴まれ、引き留められていた。
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◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
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