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その後、優真と俺は駅近くのカフェで軽食をとりながら話すことにした。

少々混んでおり、なんとかカウンター席を二席ゲット。

コーヒーとサンドウィッチをテーブルに運び一息つくと、優真が嬉しそうに鞄の中から書類を取り出した。

「陽斗君、バイトの面接、OK出たよ」

「え、マジ……!?良かったな!で、どこですんの?」

「えっとね、この近くのカフェなんだけど……ここ」

「どれ……あ、駅からもう少し歩いた所のやつ?」

差し出されたパンフレットを見ると、どうやら大学から徒歩圏内のカフェらしい。

確かに、それなら大学からも自宅からも通いやすいだろう。

「すげーいいじゃん。俺、ここオシャレだし行ってみたかったんだよな」

「そうなんだ?じゃあ、今度行こうか。僕もバイトするしね」

「うん!」

優真のバイト先に、誰よりも先に行けるような気がして、俺はついキラキラと瞳を輝かせた。

すると優真が、僅かに頬を赤く染めてコーヒーを啜る。

そしてコホンと小さく咳払いをすると、俺の頭にポンと手を乗せ、ヨシヨシと撫でる。

「……なに?」

「いや……そういう顔は、部屋でしようか」

「そういう顔……って」

もしや、今のお目目キラキラがそれか……?

「……っ」

自覚し、俺も頬を赤く染める。

そうして俯いていると、頭を撫でる手がそっと離された。

優真はパッとモードを切り替えると、サンドウィッチに手を伸ばしながら口を開く。

「さてと、食べようか。お腹が空いたよ」

「あ、うん……!俺、ポテトサラダが挟んであるやつにした」

そう言って、先程買ったサンドウィッチを手に取ると……

「え……あれ!?これ、フルーツサンドじゃね……!?」

「ええ?見せて……わ、ホントだ。もしかして、さっき隣に並んでたから、間違えて取ったのかもね」

「んな……っまじか~~。どうしよ……」

なぜに間違えたのか。

フルーツサンドにはしっかりとイチゴも入っていて目立つのだけれど、なんとなく感じが似ているから間違えたのかもしれない。

店員に頼んで取り替えて貰おうかと悩んでいると、優真がクスッと笑う。

「陽斗、僕のハムサンドと交換しよっか。二つあるから、一つ交換しよう?」

「え、いいのか?」

ハムサンドは、今まさに食べたい味かも。

期待でまた目を輝かせると、優真は愛しげに目を細めて俺を見つめた。

「はぁ、可愛い……もし足りなかったら、僕が追加で買ってきてあげるから、安心して食べるといいよ」

「つ、追加でって……もう、優真は俺に甘過ぎるんだよっ」

唇を尖らせて上目遣いに睨んでみせると、優真は一瞬止まった後、なにやら鞄を漁り始めた。

そしてスマホを取り出すと、こちらに向けて構える。

「陽斗、今の顔もう一回!!」

「ふざけんな」

優真の要求を、俺は一瞬で却下した。
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