single tear drop

彩矢

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穏やかで愛おしい日々

穏やかで愛おしい日々

(鷲崎さん、病人じゃないので歩けますから、下ろしてください)

「暴れんな、落とすだろう」

惣一郎さんが借りてきてくれた車椅子に乗り、一太と遥香に押してもらい鏡ヶ池まで散歩に出掛けたのはいいけれど・・・・
着くなり鷲崎さんにお姫様抱っこされてかなり慌てた。だって七海さんがすぐ側にいるのに。

「昨日も言ったはずだ。七海は未知だけには焼きもちを妬かないってな」

身の置き場に困り目を逸らすと笑われてしまった。

「寒くないか?」

うん、と大きく頷くと安心したかのように表情が和らいだ。
晴れているとはいえ頬を撫でる風はひんやりと冷たい。

「未知、こうしている間も、お前のために命を掛けて闘っている男達がいることを決して忘れるな」

遠くに見える景色をじっと見据えていた鷲崎さんがふとそんなことを口にした。

(その人ってもしかして、この腕輪を贈ってくれた人かな?)

腕輪が見えるように高く掲げた。

「みんな未知のことになると暴走するからな。血の気が多い連中ばかりで困ったもんだ。なぁ、七海」

「そういう貴方もでしょう」

クスクスと七海さんが苦笑いしていた。

「記憶がないのは分かる。分かるが、柚原に鞠家、鳥飼。それに地竜この名前だけはしっかり頭に叩き込んでおけ。いいな」

ゆずはらさんに、まりやさん。
とりかいさんに、ディノンさん。

はじめて聞く名前なのに、すごく懐かしく感じる。
胸がほんわりと温かくなるのを感じ、腕輪をもう片方の手でそっと静かに握り締めた。

「よし、池の回りを一周したら帰るぞ。しっかり掴まってろ」

鷲崎さんの首にしがみつき頷くと、ゆっくりと歩き出した。


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