あなたの隣で初めての恋を知る

2ヶ月後

2ヶ月後

チョロチョロと少量の生あたたいものが漏れていることに気付き慌てて飛び起きた。あたりはまだ薄暗かった。
｢なじょした？」
椅子に座る弓削さんと目が合った。
｢あ、あの………」
どう説明しようかと迷っていたら、
｢和真を起こすか？にしてもヤスも浩太郎も寝相が悪いな。何度も起こされてな。寝られなかった」
ふふっと微かに笑った。
｢破水したのかも知れない。看護師を呼んだほうがいいな」
弓削さんがすぐにナースコールを押してくれた。
｢この緊急時に何で落ち着いてんだおめさんは、だろ？少しはあっぱとっぱしろって、だろ？何せ一太以外全員の出産に立ち合ったからな。男だからややこは産めないがいい経験になった。立ち合わせてくれたオヤジと姐さんに感謝しかない」
二人の看護師さんがすぐに駆け付けてくれた。弓削さんが寝ている彼を起こしてくれた。


｢痛くて死にそうになった。堕ろすことも出来たのに、こんな大変な思いをして母さんは僕を産んでくれた。血が繋がっていない僕を父さんは自分の息子として迎えてくれた。和真さん、僕はひとりでこの世に産まれてきた訳じゃない。それを凛が教えてくれたんだと思うんだ」
ベビーベットですやすやと眠る凛の寝顔を見つめた。
夜中に破水し、それから半日以上かかったけど無事に産まれてくれた。
2789グラムの女の子。寝ずの番で交代で警護をしてくれたヤスお兄ちゃんと弓削さん。そして蜂谷さんと青空さん。ぴりぴりとした重苦しい空気が流れていたけど、凛の元気な産声が一瞬で吹き飛ばしてくれた。