あなたの隣で初めての恋を知る

みんなありがとう

みんなありがとう

背中に視線を感じ後ろを振り返ると亜優さんと目が合った。
｢遠慮しない……あ、あの……」
声を掛けようとしたら、ささっと物陰に隠れてしまった。
｢亜優、おいで」
痺れを切らした卯月さんが手招きした。
｢亜優は中国から日本にやってきて、俺の息子になった。頑張りやさんで素直で、すごくいい子なんだ。言葉の壁があるが、身振り手振りなんとかなると思う」
亜優さんがそろりそろりと近付いてきた。
｢コンニチワ」
緊張して、ガチガチに震えながら挨拶するとぺこっと頭を下げた。
｢アユ、ヨロシク」
｢四季です。亜優さん宜しくお願いします」
｢亜優ももうじき新婚ホヤホヤの新妻になる予定だ。和真も俺と同じで人妻には焼きもちを妬かないと思うんだが……」
人妻？はじめ聞き間違いだと思ったけど、ヤスさんが言っていたことをふと思い出した。同性婚したオヤジと姐さんの影響なのか、菱沼組では同性のカップルがやたらと多い。あちらこちらにいる。菱沼組ではそれが普通だ。
｢亜優さんも結婚するんですね。おめでとうございます」
笑顔で話し掛けたらぎこちない笑顔で返ってきた。
｢あゆしゃん、どーぞ」
こはるちゃんがウィンナーをフォークで刺し、亜優さんの前にすっと差し出した。
｢シェ シェ」
それまで固かった亜優さんの表情が緩み、たちまちにこにこの笑顔になった。