あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢

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櫂さんの悲しい過去

櫂さんの悲しい過去

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類をみない特異な事件だから箝口令が敷かれたのにどこからどう漏れたんだか。暇な連中だな」
蜂谷さんが窓の外をちらっと見るとやれやれとため息をついた。
「格好のネタだ。そりゃあ喜んで飛び付くだろう」
「ふ~~ん」
「ほっとくのが一番だ」
ちらちらと外の様子を伺っていた青空さんに蜂谷さんが歩み寄り声を掛けた。
「ハチ」
「ん?」
「一回いいか?」
「何をだ?」
青空さんが蜂谷さんのネクタイをほどくと、結び直しはじめた。
「一度やりたかった。なかなか難しいな」
青空さんが蜂谷さんの首もとに顔を寄せた。
「青空。顔が近い」
「へぇ~~こんなところにほくろがある」
「ほくろはいいからネクタイを早く結んでくれ」
蜂谷さんが青空さんにネクタイの結び方をいちから教えてあげていると、ヤスさんが入ってきた。
「朝からあの二人はいちゃついているのか?この状況下で、たいしたもんだな」
やれやれとため息をつくと、手にしていた新聞を机の上にぽんと置いた。
「死人に口なしとはよく言ったもんだ。知らぬ存ぜぬ。紘子と千賀のトラブルが殺人事件に発展しただけ。俺は一切悪くないの一点張りだ。死人に責任転嫁し逃げることしか考えていない最低な男だ。こんな男を父親を持った和真と結が不憫でならない」
「子どもは親を選べないからな。和彦は十矢のことは認知していたが、赤ん坊は出生届も認知届も役所に出してなかった。和真の本当の名前は誰も知らない。お、今度は上手に結べたじゃないか」
蜂谷さんに褒めてもらい青空さんが頬を染めた。
「俺、ずっとネクタイは手足を縛るものだと思っていた。脅して首を絞めるものだと思っていた。実際は違ってた」
「青空、昔のことは忘れろ。お前はもう殺し屋じゃないだろう?」
蜂谷さんが青空さんの肩を宥めるようにぽんぽんと撫でると、
「たまにはいいこと言うな。ますます惚れ直した。俺はハチと四季の青空だ。仲良くするぞハチ」
「は?ちょっと待って!」
青空さんが蜂谷さんをひょいと肩に担ぐと、有無言わさずあっという間にどこかに連れていってしまった。
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