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第二章
トラビス王の回想
しおりを挟むこんな雪混じりの夜更けには、叔父君の事を思い出させる。
叔父と会ったのは あれが最後であった。
荒れた天気の中、馬を飛ばしてコーネリアに逢いに来た叔父。
衰弱しても尚も輝くように美しい叔父アーサー
父王に挨拶をしてすぐさま神殿に帰ってしまった。
「父上、叔父君をこのままお返ししてもよいのでしょうか?」あの弱り様では危険だと思い進言した。
「あれが、アーサーの選択なのだ! 私達は送り出すしかないのだ。私はそれしか出来ないのだよ••••」
王となってみて、今なら少しは理解出来る。
自分の選択の重みを、、、
「叔父君•••」
叔父の為に今日は祈ろう。
(一部の救いはあります。幸せな終わりが、、、、)
誰だかが呟く。誰だったか、
はっ、と目が覚めた。
フレディだ!フレディがキーワードだ!
そうだ!ケイ様は[マリアベルがフレディと良好な交友関係を築く事が何が別の選択に進む可能性がある]と、亡くなる前におっしゃっていた!
何故、忘れていたのか?
もう、絶対に忘れてはいけない、と紙に書き留めた。
今回の呪いには二つの道があるの。
一つは不幸になる終わり。
一つは幸福になる終わり。
私は不幸になる終わりしか 知らないの。
幸福ルートを探しているうちに生を終わらせてしまったから•••
でも、確かに幸福になる道は存在する。
それにハワードの長子が、フレディが関係するらしいの。
全て、推測だけど、暗い未来だけでは無い。
お願い、あの子を、私の孫を、幸せに導いて•••
そうだ!ケイ様は死に際にそうおっしゃったではないか!!!
こんな重要な事を何故忘れいたのだ!
そして、それをこの時期に思い出すとは•••
やはりこれは、神の介入なのか••••
コーネリアは傾国だった。
関わった男は彼女を欲してしまう。
あの美貌、あの風情、あの声、
父王とケイ様が隠したのも当然だと思う。
あれが社交界に出たなら、至る所で騒ぎが起き、国が乱れてしまっていただろう。
あの堅物のテオですら「妻子を捨てる!」と言い出したくらいだからな!
その母と、全ての女性を虜にする程麗しい叔父 との間に生まれた娘、マリアベル。
隠さずにはいられないのは 当たり前の事だろう。
私はそう思い カツラを用意し 厳重に[視覚誤認]の魔法陣を施した。
それがいけなかったのか?
マリアベルの気配を変えさせた為に、息子達三人が 彼女を誤解してしまったのではないのか?
ノーザンコートからの連絡によると、最近ではその魅力はカツラでは押さえ切れなくなっているらしい。
既に、マリアベルのファンクラブが存在しているとの事だ。
アクセサリーなどで誤認の重ね付けをした方がよいやも知らぬなぁ
いずれは、あの、銀に輝く金の髪をさらして社交の場にでなければならない。
日に日に 花がほころぶように 美しくなっていくマリアベル。
その時、私達はあの子を守りきれるか???
「やはり、塔に閉じ込めて置いたほうがよいのでは••••」
いけない、一体なぜこんな風に考えてしまうのか••••
明日、[ケイ様の遺言]を思い出した事を伝えてなければ、
一筋の光を見出した私はワクワクと子供のように浮かれ、その後はなかなか寝付けなかった。
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